shinichi Post author18/10/2024 at 12:08 pm 図だけでわかる! 人体 坂井建雄 監修 ニュートンプレス 2024年刊 私たちはふだん,特に意識もせずに,自分たちの体を当たり前のように動かしています。本書を読めば,いかに「人体」がおどろくほど複雑で精巧なメカニズムをもっているかを実感できるはずです。また,日々の体のケアやメンテナンス,病気や怪我などのトラブルにも意識が向くようになります。 スマホの使いすぎで体のトラブルがふえている? 脳のしわが多いと頭がよい? 1.人体の土台となる「骨,筋肉,皮膚」 人体は多くの骨で構成されている 「骨」の約20%が1年間で入れかわっている 筋肉には全部で3 種類ある 筋肉ののびちぢみで腕が曲がる 筋肉には「赤い筋肉」と「白い筋肉」がある 「皮膚」は三つの層からできている 皮膚には体温調節の役目がある 「髪の毛」や「つめ」の成長サイクル Q&A 肩こりの原因にもなる“ スマホ首” とは? など 2.さまざまな情報をもたらす「目,耳,鼻,口」 デジタルカメラのような「眼」のしくみ 視力の低下をまねく,さまざまな目のトラブル 耳は三つの骨で音を増幅している 耳は平衡感覚を感じる器官でもある 「鼻」は“ 高機能” な空気清浄機 400種類のセンサーでかぎ分けている 「舌」のどこで味を感じているのか 「味覚」は栄養かどうかを判断するシステム Q&A 若い人でも老眼になる可能性があるってほんとう? など 3.呼吸や血液循環をになう「肺と心臓」 息を吸って,吐くときのメカニズム 「肺」の中には“ 小さな風船” がつまっている 全身に張りめぐらされた「血管」の“ 流通網” 血液の供給先1 位は,実は肝臓だった 血液を送りだすポンプ「心臓」 1 秒ごとにくりかえす心臓のリズム 血管はどこも同じ形ではない Q&A アスリートの心拍数は,一般人の半分以下しかない? など 4.消化と吸収をささえる「胃や腸」 唾液には消化以外のはたらきもある 逆立ちしながらでも,ヒトは食べることができる 「胃」は食べ物をかきまぜるミキサー 「十二指腸」から本格的な消化吸収が開始 「小腸」の“ 広さ” はテニスコート1 面分! 肝臓は人体の“ 化学工場” 水分を吸収し,便をつくる「 大腸」 血液は「腎臓」でろ過される 男性と女性の生殖器きのちがい Q&A 強力な酸性の胃酸で,胃自体がとけることはないのか? など 5.体をコントロールする「脳,神経,ホルモン」 血管だけじゃない! 全身をめぐる「リンパ管」や「神経」 「脳」は人体の“ コントロール室” 脳の指令を全身に伝える「脊髄」 体の中には膨大な数の神経細胞がある 自律神経は,環境の変化に合わせて体調を最適化する ホルモンの分泌で器官の機能を調節する 花粉症でみる「免疫」のしくみ Q&A 脳のしわが多いほど,頭がよいというのはほんとう など Reply ↓
shinichi Post author18/10/2024 at 12:21 pm 2024年10月25日(金) 人体は ほんとうに よくできている 今週の書物/ 『図だけでわかる! 人体』 坂井建雄 監修 ニュートンプレス、2024年刊 腎臓の皮質部分には、ネフロン(腎小体とそれに続く細尿管、Nephron)が200万個ほど存在していて、各ネフロンで濾過、再吸収、分泌、濃縮が行われ、原尿が作らるという。その話を聞いたとき、それをイメージできない私がいた。 人の脳には1000億以上の神経細胞があり、ひとつひとつの神経細胞には それぞれに 1万個ほどのシナプスがついている。そして その1000兆個のシナプスが絶え間なく情報伝達をおこなっている。そう聞いた時も、まったくイメージできなかった。 人体のなかには、想像もできないほど小さなファンクショナル・ユニットが、想像もできないほど たくさんあって、絶え間なく働き続けている。その小ささも、その数も、その連続性も、想像をはるかに越えている。 石川啄木は手を見て「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」と詠んだというが、いまぢっと手を見ると、皮膚の下の血管やら骨やら筋肉やらに思いが行く。 人体は不思議だ。生まれてから死ぬまで、絶え間なく動き続ける。そんなことを考えて、今週は、「人体」のことを説明した一冊を読む。『図だけでわかる! 人体』(坂井建雄 監修、ニュートンプレス、2024年刊)だ。先週に続き 科学雑誌の Newton(ニュートン)を出している ニュートンプレス が発行元で、監修者の名前は書いてあっても、著者の名前は書いてない。 タイトルの 図だけでわかる! というところが ミソ だ。イメージできないものを イメージするには 図に限る。しかも 1,320円(税込)と安い。 似たような本に『人体の構造と機能』(エレイン N. マリーブ著、林正健二 他 訳、医学書院、2015年刊、5,720円(税込))、2021年『カラー図解 人体の正常構造と機能』(坂井建雄・河原克雅 編集、日本医事新報社、2021年刊、19,800円(税込))などがあるが、どれも医学書で、病気を念頭に置き、病気を治すことを目的にしている。 ニュートンプレスの『人体』は、病気には触れていない。ニュートンらしく、あくまで科学の観点から本が作られている。ただ、ニュートンプレスは似たような本をたくさん出していて、『人体』は『ニュートン別冊 人体完全ガイド』 の焼き直し(というか、抜粋)と言えなくもない。 そんなことはともかく、本を開く。図が目に飛び込んでくる。図には「Step 1」「Step 2」「Step 3」と短く的確な説明がついている。小さなものも図のなかに描きこまないといけないから、図は正確ではない。文章も、簡潔にするなかで、大事なことが省かれしまっている。 でもこの本には、このような図とこのような文章が似合っている。読み手として医者を想定していないせいか、病気を治すとか、メスで手術をするとか、内視鏡で見るといった発想から完全に自由になっていて、骨とは何か、筋肉とは何か、皮膚とは何か、目とは、耳とは、鼻とは、舌とはということが、素人向けに書かれている。 呼吸や血液循環をになう「肺と心臓」の章では、全身に張りめぐらされた血管のことが細かく解説され、消化と吸収をささえる「胃や腸」の章では、肝臓や腎臓、生殖器のことも解説される。そして最後の 体をコントロールする「脳,神経,ホルモン」の章では、体調や免疫のことにまで話が及ぶ。 知らなかったことも多く、もっと知りたいと思わせる。読書が、ググるきっかけになる。そんな本だ。そういう意味では、きれいな図と簡潔な説明が、とても効果的だ。一冊の本で完結させるのではなく、インターネットへの入口という機能を持つことで、結果的にとても役に立つ本になっている。新しいアプローチの本だ。 地球上の海水に始まり 何十億年も続いた生物進化の果てにできた人体が 複雑なことは知っていたつもりでいたが、この本を読んだだけで、私の認識が間違っていたことに気づいた。 宗教とか思想とか政治とか科学とかが、人体のことをいろいろと説明してきたけれど、神が人間を作りだしたという宗教とか、進化論を盲目的に信じようという科学とか、人体はそんなものには説明できない素晴らしさを持っている。この本は、そう思わせてくれた。 Reply ↓
図だけでわかる! 人体
坂井建雄 監修
ニュートンプレス
2024年刊
私たちはふだん,特に意識もせずに,自分たちの体を当たり前のように動かしています。本書を読めば,いかに「人体」がおどろくほど複雑で精巧なメカニズムをもっているかを実感できるはずです。また,日々の体のケアやメンテナンス,病気や怪我などのトラブルにも意識が向くようになります。
スマホの使いすぎで体のトラブルがふえている?
脳のしわが多いと頭がよい?
1.人体の土台となる「骨,筋肉,皮膚」
人体は多くの骨で構成されている
「骨」の約20%が1年間で入れかわっている
筋肉には全部で3 種類ある
筋肉ののびちぢみで腕が曲がる
筋肉には「赤い筋肉」と「白い筋肉」がある
「皮膚」は三つの層からできている
皮膚には体温調節の役目がある
「髪の毛」や「つめ」の成長サイクル
Q&A 肩こりの原因にもなる“ スマホ首” とは? など
2.さまざまな情報をもたらす「目,耳,鼻,口」
デジタルカメラのような「眼」のしくみ
視力の低下をまねく,さまざまな目のトラブル
耳は三つの骨で音を増幅している
耳は平衡感覚を感じる器官でもある
「鼻」は“ 高機能” な空気清浄機
400種類のセンサーでかぎ分けている
「舌」のどこで味を感じているのか
「味覚」は栄養かどうかを判断するシステム
Q&A 若い人でも老眼になる可能性があるってほんとう? など
3.呼吸や血液循環をになう「肺と心臓」
息を吸って,吐くときのメカニズム
「肺」の中には“ 小さな風船” がつまっている
全身に張りめぐらされた「血管」の“ 流通網”
血液の供給先1 位は,実は肝臓だった
血液を送りだすポンプ「心臓」
1 秒ごとにくりかえす心臓のリズム
血管はどこも同じ形ではない
Q&A アスリートの心拍数は,一般人の半分以下しかない? など
4.消化と吸収をささえる「胃や腸」
唾液には消化以外のはたらきもある
逆立ちしながらでも,ヒトは食べることができる
「胃」は食べ物をかきまぜるミキサー
「十二指腸」から本格的な消化吸収が開始
「小腸」の“ 広さ” はテニスコート1 面分!
肝臓は人体の“ 化学工場”
水分を吸収し,便をつくる「 大腸」
血液は「腎臓」でろ過される
男性と女性の生殖器きのちがい
Q&A 強力な酸性の胃酸で,胃自体がとけることはないのか? など
5.体をコントロールする「脳,神経,ホルモン」
血管だけじゃない! 全身をめぐる「リンパ管」や「神経」
「脳」は人体の“ コントロール室”
脳の指令を全身に伝える「脊髄」
体の中には膨大な数の神経細胞がある
自律神経は,環境の変化に合わせて体調を最適化する
ホルモンの分泌で器官の機能を調節する
花粉症でみる「免疫」のしくみ
Q&A 脳のしわが多いほど,頭がよいというのはほんとう など
2024年10月25日(金)
人体は ほんとうに よくできている
今週の書物/
『図だけでわかる! 人体』
坂井建雄 監修
ニュートンプレス、2024年刊
腎臓の皮質部分には、ネフロン(腎小体とそれに続く細尿管、Nephron)が200万個ほど存在していて、各ネフロンで濾過、再吸収、分泌、濃縮が行われ、原尿が作らるという。その話を聞いたとき、それをイメージできない私がいた。
人の脳には1000億以上の神経細胞があり、ひとつひとつの神経細胞には それぞれに 1万個ほどのシナプスがついている。そして その1000兆個のシナプスが絶え間なく情報伝達をおこなっている。そう聞いた時も、まったくイメージできなかった。
人体のなかには、想像もできないほど小さなファンクショナル・ユニットが、想像もできないほど たくさんあって、絶え間なく働き続けている。その小ささも、その数も、その連続性も、想像をはるかに越えている。
石川啄木は手を見て「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢっと手を見る」と詠んだというが、いまぢっと手を見ると、皮膚の下の血管やら骨やら筋肉やらに思いが行く。
人体は不思議だ。生まれてから死ぬまで、絶え間なく動き続ける。そんなことを考えて、今週は、「人体」のことを説明した一冊を読む。『図だけでわかる! 人体』(坂井建雄 監修、ニュートンプレス、2024年刊)だ。先週に続き 科学雑誌の Newton(ニュートン)を出している ニュートンプレス が発行元で、監修者の名前は書いてあっても、著者の名前は書いてない。
タイトルの 図だけでわかる! というところが ミソ だ。イメージできないものを イメージするには 図に限る。しかも 1,320円(税込)と安い。
似たような本に『人体の構造と機能』(エレイン N. マリーブ著、林正健二 他 訳、医学書院、2015年刊、5,720円(税込))、2021年『カラー図解 人体の正常構造と機能』(坂井建雄・河原克雅 編集、日本医事新報社、2021年刊、19,800円(税込))などがあるが、どれも医学書で、病気を念頭に置き、病気を治すことを目的にしている。
ニュートンプレスの『人体』は、病気には触れていない。ニュートンらしく、あくまで科学の観点から本が作られている。ただ、ニュートンプレスは似たような本をたくさん出していて、『人体』は『ニュートン別冊 人体完全ガイド』 の焼き直し(というか、抜粋)と言えなくもない。
そんなことはともかく、本を開く。図が目に飛び込んでくる。図には「Step 1」「Step 2」「Step 3」と短く的確な説明がついている。小さなものも図のなかに描きこまないといけないから、図は正確ではない。文章も、簡潔にするなかで、大事なことが省かれしまっている。
でもこの本には、このような図とこのような文章が似合っている。読み手として医者を想定していないせいか、病気を治すとか、メスで手術をするとか、内視鏡で見るといった発想から完全に自由になっていて、骨とは何か、筋肉とは何か、皮膚とは何か、目とは、耳とは、鼻とは、舌とはということが、素人向けに書かれている。
呼吸や血液循環をになう「肺と心臓」の章では、全身に張りめぐらされた血管のことが細かく解説され、消化と吸収をささえる「胃や腸」の章では、肝臓や腎臓、生殖器のことも解説される。そして最後の 体をコントロールする「脳,神経,ホルモン」の章では、体調や免疫のことにまで話が及ぶ。
知らなかったことも多く、もっと知りたいと思わせる。読書が、ググるきっかけになる。そんな本だ。そういう意味では、きれいな図と簡潔な説明が、とても効果的だ。一冊の本で完結させるのではなく、インターネットへの入口という機能を持つことで、結果的にとても役に立つ本になっている。新しいアプローチの本だ。
地球上の海水に始まり 何十億年も続いた生物進化の果てにできた人体が 複雑なことは知っていたつもりでいたが、この本を読んだだけで、私の認識が間違っていたことに気づいた。
宗教とか思想とか政治とか科学とかが、人体のことをいろいろと説明してきたけれど、神が人間を作りだしたという宗教とか、進化論を盲目的に信じようという科学とか、人体はそんなものには説明できない素晴らしさを持っている。この本は、そう思わせてくれた。