おれは二年前、咸臨丸に乗ってアメリカに行って来た。何がおどろいたって、あそこじゃ、国の政治は、選挙で選ばれた人物がやるという話だった。将軍家も、殿様もないんだ。だから、上に立つ者はみんな、ひとかどの人物だよ。バカでも身分や家柄がよいというだけで、リーダーになれるような国とは、いきおいがちがうというわけさ。
おれたちはいま、そんな国を相手にしているんだ。今のように、国内で戦いあっているようじゃ、日本はあぶないよ。どっちが勝ったって、日本全体としてみりゃ、弱っていくばかりなのさ。そんなことをしていたら、西洋の植民地にされちまうかも知れないぜ。
それでもいいのかい、坂本さん。
国が一つにまとまって、いざとなれば戦うという気力を見せれば、西洋にだって、そうかんたんには、やられやしないよ。
幕府だ、長州だ、薩摩だと、日本人どうしで、けんかをしている場合ではないということさ。
小6・中学社会 学校でまなびたい歴史
by 齋藤武夫
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運命の出会い
江戸に出た、反幕府派の龍馬は幕府のリーダー・勝海舟に会いに行った。斬りに行ったといわれる。
勝海舟は坂本龍馬にこう語った。(この語りは創作。司馬遼太郎などを参照。)
坂本さん、刀はもうちょっと、引きつけておきな。そうじゃないと、おれは斬れないよ。まあ、おれを斬るのは、いつでもできるだろうから、今日は、アメリカの話でも聞いてお帰りよ。
おれは二年前、咸臨丸に乗ってアメリカに行って来た。何がおどろいたって、あそこじゃ、国の政治は、選挙で選ばれた人物がやるという話だった。将軍家も、殿様(とのさま)もないんだ。だから、上に立つ者はみんな、ひとかどの人物だよ。バカでも身分や家柄がよいというだけで、リーダーになれるような国とは、いきおいがちがうというわけさ。
おれたちはいま、そんな国を相手にしているんだ。今のように、国内で戦いあっているようじゃ、日本はあぶないよ。どっちが勝ったって、日本全体としてみりゃ、弱っていくばかりなのさ。そんなことをしていたら、西洋の植民地にされちまうかも知れないぜ。
それでもいいのかい、坂本さん。
西洋にやられないためには、軍艦だって大砲だっているんだよ。そいつを手に入れるには、西洋とつきあうしかないんだ。大砲も軍艦もない、サムライは藩に分かれていて、国としてまとまった海軍も陸軍もない。こんなことで、どうやって国を守れるっていうんだい。
国が一つにまとまって、いざとなれば戦うという気力を見せれば、西洋にだって、そうかんたんには、やられやしないよ。
幕府だ、長州だ、薩摩だと、日本人どうしで、けんかをしている場合ではないということさ。
どうだい、人殺しなんかやめにして、おれといっしょに海軍をつくる仕事をやらないか。よかったら明日からでも、おれの海軍繰練所においで。
龍馬は、勝の話を聞いて、体を電流が流れたように感動してしまったそうです。