培養肉とは、「本物に近い “食肉の代用品”」のことで、英語では「Cultured meat」と呼ばれます。ウシやブタなどの動物から取り出した少量の細胞を動物の体外で人工的に培養して増やし、それらを集めて組織を作ることで生み出されます。従来の食肉生産とは違い、動物そのものが食肉の供給源にはなりません。「飼育・繁殖・解体や飼料の生産・加工などの工程」が不要となり、生産期間がおよそ2年から3週間程度へと短縮されています。
また、動物に与えるストレスや環境負荷も抑えることができます。下記は「1kg当たりの生産における従来の畜産と培養肉」を比較したものですが、①温室効果ガスの排出 ②農地面積 ③水の消費量 ④生産期間 の4カテゴリすべてにおいて「低減」が見られます。このように培養肉は動物や環境にやさしく、「クリーンミート」とも呼ばれることもあります。
「培養肉」でサステナブルな食を実現する 基礎知識から今後まで解説
サステナビリティハブ
日揮ホールディングス(JGC)
https://www.sustainability-hub.jp/column/learn/cultured-meat
培養肉(クリーンミート)とは
培養肉とは、「本物に近い “食肉の代用品”」のことで、英語では「Cultured meat」と呼ばれます。ウシやブタなどの動物から取り出した少量の細胞を動物の体外で人工的に培養して増やし、それらを集めて組織を作ることで生み出されます。従来の食肉生産とは違い、動物そのものが食肉の供給源にはなりません。「飼育・繁殖・解体や飼料の生産・加工などの工程」が不要となり、生産期間がおよそ2年から3週間程度へと短縮されています。
また、動物に与えるストレスや環境負荷も抑えることができます。下記は「1kg当たりの生産における従来の畜産と培養肉」を比較したものですが、①温室効果ガスの排出 ②農地面積 ③水の消費量 ④生産期間 の4カテゴリすべてにおいて「低減」が見られます。このように培養肉は動物や環境にやさしく、「クリーンミート」とも呼ばれることもあります。
2013年には培養肉によるハンバーガーの実食も
2013年8月には、イギリスのロンドンで世界初の培養肉を用いたハンバーガーの発表・実食がおこなわれました。このハンバーガー1つを完成させるための研究費には、33万ドル(当時のレートで約3300万円)がかかりましたが、生産設備などの充実によって、6年後の2019年にはハンバーガー1つあたりのコストは、9ユーロ(日本円で約1269円※)程度にまで下がったことが明らかになっています。
培養肉の生産方法
では実際に、培養肉はどのように作られていくのでしょうか。詳しい作り方は研究機関によって様々ですが、次のような流れが一般的とされています。
現在は培養肉の社会実装のため、各工程で必要な基礎的技術の確立に向けた取り組みが進められています。
培養肉と再生医療の関係
培養肉を作り出す過程には、細胞から肉や臓器などを作り出す「再生医療*」の技術が応用されていることをご存知でしょうか。
培養肉の多くは、培養・分化されて薄いシート状になった細胞を重ね合わせることにより肉らしい見た目や食感を実現していますが、この「細胞シートを積み重ねて組織を作る」という方法は、再生医療の分野において提唱されたものです。(再生医療…病気などで失った機能を回復させたり、細胞や遺伝子などを用いて病気を治療する医療)
同時に、「少量の細胞から大量の肉を作る(バイオものづくり)」という培養肉の生産技術開発が、細胞培養のコストを下げ、再生医療の研究を後押しすることも期待されています。
培養肉が注目されている理由
食肉の需要拡大に対応できる可能性がある
世界人口の増加や新興国の経済発展に伴い、食習慣は欧米化・肉食化の一途を辿っています。食肉の需要は増加し、特に後発の開発途上国における食肉需要は、2050年までに4.5億トンを超えるという推測も示されています。 (出典:Our World in Data「Global meat consumption 2000 to 2050」)
今まではこのような需要増加に対し、農業の生産性を高めることで対応してきましたが、今後はそれだけでは足りず、早ければ2030年頃に需給バランスが崩れるのでは?との見方も出ています(=「タンパク質危機」)。
このような背景を受け、理論上少量の細胞から効率よく大量の肉を作り出すことができる「培養肉」への注目が高まっています。
環境負荷の軽減ができる
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、世界の人為的な温室効果ガス排出量のうち約14%が、畜産(土地利用の変化を含む)によって生み出されています(※)。これは飛行機や車といった、すべての交通機関から排出される温室効果ガスの総量に匹敵します。
さらに、広大な農地や放牧地を確保するための土地占有・森林伐採のほか、水の大量使用や、家畜の排泄物による水質・大気汚染も問題視されています。
このような課題を解決して持続可能な食料生産を叶えるため、広大な土地や大規模な家畜の飼育・繁殖を必要としない「培養肉」は有効な選択肢の1つと考えられています。
【3選】培養肉の実用化におけるメリット
「動物性の栄養素」を補うことができる
食肉生産にまつわる課題を解決する新たな選択肢は「培養肉」だけではありません。
「プラントベースミート」や「大豆ミート」と呼ばれる、大豆などの植物由来原料から生産されたものも登場しています(「ベジミート」・「ソイミート」とも呼ばれます)。欧米諸国を中心に浸透しつつあり、培養肉に先行する形として日本でも認知が高まってきました。しかし、植物由来であるために本来の食肉とは成分が異なり、「一部のビタミンなど動物性食品に含まれる栄養素を十分に摂取できない場合がある」ことが課題の1つとされています*。
一方で培養肉の栄養成分は、本来の食肉とほぼ同等です。動物性のタンパク質や鉄・亜鉛・ビタミンB群なども摂取できるといわれています。さらに理論上、筋肉成分や脂肪成分の調整も可能であるといわれており、個人の需要に合わせて食肉をデザインできることも期待されています。
気候変動の影響を受けにくく、生産場所の制限が少ない
培養肉は、今までの食肉と異なり「屋内」で生産されます。つまり、生産可否や生産量などが環境要因に左右されることはなく、国や地域に制限はありません。設備を整えることができえば、様々な場所で生産が可能なため、食肉の需給バランスを安定させる上で大切なポイントとなります。
自給率の向上に繋がる可能性がある
日本の2021年における畜産物カロリーベース食料自給率は、わずか16%となっています(※)。つまり、食肉の供給の多くを海外からの輸入、および輸入飼料を用いた生産に頼っているということです。 しかし培養肉が普及すれば、大量の飼料を使うことなく、(理論上では)数個の細胞から数万トンに及ぶ肉を生産できるようになるかもしれません。培養肉が日本の食料自給率の向上に大きく貢献し、食料不足の深刻化による食料・資源の奪い合い、また生産国による輸出規制などへの備えを後押しできる可能性があります。
培養肉の課題
培養肉には多様なメリットがある一方、商用化や普及に向けた課題も残されています。
環境面
・従来の畜産と比較すると環境面での課題は少ないものの、細胞を培養する過程において、適切な温度を維持するためのエネルギーが必要になる
・これまで畜産によって維持されていた生態系や生物種が、消滅してしまう可能性がある
技術面
・生産規模を拡大するため、今後さらなる技術開発やコスト削減が必要である
社会的
・既存の畜産農家や飼料農家などに打撃を与えてしまう可能性がある
・培養肉に対する安全性や、見た目・食感などに関する消費者の理解を得る必要がある
培養肉市場の今後
世界的な経営コンサルティングファーム のA.T.Kearney社は、経済データと同社の独自調査を踏まえた上で「食肉市場は今後十数年で 3% / 年 ほどのペースで拡大する。世界の食肉供給量の約3分の1は、10年以内に新技術(培養肉)が供給されることになるだろう。」と予測しています。
培養肉の普及へ前向きな見方が生まれるなか、世界各国では培養肉の研究開発に取り組むスタートアップ企業が急増しています。企業と研究機関の共同開発なども進められ、培養肉の研究へ大規模な投資がおこなわれる例も生まれています。
(sk)
貧しい人たちは培養肉を食べさせられ、豊かな人たちは本物の肉を食べる。私たちはそんな世の中を目指しているのだろうか?
培養肉関連の投資をしている人たちや、培養肉の研究をしている人たちは、それに環境問題で騒いでいる人たちは、培養肉が出回るようになっても本物の肉を食べ、そんなこととは関係のない人たちが、培養肉を食べるようになる。考えただけでもぞっとする。
肉だけではない。魚も、野菜も、穀物も、香辛料や飲み物にいたるまで、貧しい人たちは工業製品を与えられ、豊かな人たちは農業産品を口にする。
いやな世の中になりそうだ。いや、もうなっているのかもしれない。