大嶋聖一

郵便事業が赤字なのは、日本に限ったことではない。米国の郵便公社(USPS)も巨額の赤字に苦しんでいる。2010年9月期の通期決算では、85億500万ドル(約7060億円)の経常損失を計上。赤字決算は4期連続で、累積で170億500万ドル(約1兆4110億円)に達した。危機的な経営状況を打開するため、職員の大幅削減に加え、不採算郵便局の閉鎖や土曜日の配達中止などの抜本改革を計画をしているが、大なたをふるうには政府・監督当局の認可や法改正が必要で、公社の経営の行方は予断を許さない。
赤字の原因の1つは郵便物の減少だ。取り扱いは06年に2130億通・個で過去最高を記録した後、下降していく。10年には1700億通・個まで落ち込んだ。サブプライム問題による金融・経済危機のほか、電子メールの普及が背景にある。
しかし、巨額の赤字をもたらした「主犯」は、実は別にいる。07年9月期から適用された医療保険会計の変更だ。これに伴い、将来の医療保険給付に備えて引き当てを行うことが義務付けられた。その額は毎年57億ドル(約4730億円)前後に上る。

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