大沼保昭

人権の歴史は一面では人権概念の絶え間ない拡大の歴史だった。日本でも環境権、日照権、嫌煙権、静謐権など、かつては社会的生活のルールや礼儀の問題と考えられていたものが人権として論じられ、そのいくつかは徐々に認められる傾向にある。

他方において、そのように物事を権利の観点から捉える傾向が最も強い米国では、権利の発想に連なる法中心主義と個人中心主義的発想の行き過ぎが家族愛や地域の連帯感さらに社会道徳の崩壊を招き、犯罪や麻薬、青少年非行の蔓延の一因になっていると批判されている。
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あまりに露骨な二重基準の適用や政治的利用は人権の政治的利用は人権の政治的性格を際立たせ、その政治的利用価値さえ減少させる。人権にせよ、地球環境保護にせよ、民主主義にせよ、およそ普遍的な規範観念にかかわる問題でその政治的利用を根絶することは不可能だが、、、
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今日のわれわれの生活は、その隅々まで欧米起源の制度に依存し、欧米起源の思想、観念、感覚により発想し、感じ、行動することから成り立っている。
しかし、そのことは、欧米起源の思想や制度が本来普遍的性格をもっていたことを意味するものではない。欧米の思想や制度は、欧米列強の植民地支配と大英帝国の経済的覇権、フランスの全力を挙げた仏語・仏文化の世界普及政策、第二次大戦後の米国の経済的・軍事的覇権と情報的・文化的影響力といった一連の結果として、全世界に普及したのである。

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