平野啓一郎

『かたちだけの愛』では、「陰翳礼讃」がテーマの一つになっていますので、場面毎の明暗のコントラストの付け方に気を遣いました。全体を俯瞰すると、明部と暗部とがよくわかると思います。
それから、人間と人間との関わり、一人の人間の中の複数の分人の相互作用が、「陰翳のあや」として可視化されるような描き方を工夫しました。
全体としては、やはり、愛することの「喜び」と「哀しさ」の「陰翳のあや」でしょうか。

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