恋愛と約束

短い時間で燃え上がって出来た関係はドラマチックで
終わるのも早い
長い時間をかけて出来上がった関係は安定していて
長い日常が続く

独占欲や嫉妬のある刺激的な愛
安定した関係が続く穏やかな愛
愛のかたちは選ぶものではなくて
自然にできあがる

恋愛のふわふわしたイメージが
私たちの周りに溢れている
イメージはどれもドラマチックだけれど
実際の恋愛の多くは日常的だ

恋愛にたどり着けない人だって
たくさんいるし
たどり着けたからといって
思い描いたようになるとは限らない

ときめきとか情熱という
そんな言葉に象徴される恋がある
その時その時には人生で一度だけの恋だと思い
恋が終われば人生は終わりだと思いつめる
それなのに
人はまた違う恋をする
なんていい加減なと思う
でも
そのいい加減さは救いでもある
恋による不安や絶望から人を救ってくれるのは
いつもいい加減さと次の恋なのだ

親しみとか優しさという
そんな言葉に象徴される愛もある
愛があるのに気付かない人
ないのにあると思い込んでいる人
愛なのかただの錯覚なのか
その辺のことは誰にもわからない

人が変わり続けるとすれば
愛もまた変わり続ける
変わらぬ愛を願うのは
いつまでも生きたいと願うのと同じ
時と共に成長する愛を
育むことができなければ
変わらぬ愛を願って
傷つくしかない

終わってしまう恋や不安定な愛を
なんとか繋ぎ止めようとして
人は永遠の契りを結ぶ
ある人は結婚という形を選び
ある人は永遠の愛を誓う
けれどどんな約束も
祝福は続かず破れてしまう

責任を背負ったとしても
背負い続けることはできない
時が流れ すべてが変わり続けるなかで
恋だけが変わらないわけはない
愛だけが永遠に続くなど
ありえないのだ
恋は病気のようなものだという
愛は幻想だという人もいる
約束はいつか破られ
契りは忘れられる
それでも人は恋をし
愛を求める
約束をし
誓い
契りを交わす

恋も愛も
知れば知るほどわからなくなる
先人たちの名言を集めても
なんの役にも立たない。
恋や愛や約束の断片を書いたところで
なにもわからない

恋と愛と約束が織りなす模様は
驚くほど複雑だ
恋はときめきと情熱の色
愛は優しさと親しみの色
約束は契りと永遠の色
そういった色が
補う色や反対の色を内包しながら
予期せぬ模様を作り出す
まるで乱数が作ったかのような
意味のない複雑な模様を
ただただ楽しめたらいいのだけれど
なかなかそうはいかない

恋も愛も約束も
そんなに簡単ではない
恋は夢だと悟り
愛は幻だと気づき
約束は破られると知っても
私たちは恋を信じ
愛を信じ
約束を信じる

長いとは言えない人生のなかで
誰かに恋をし
誰かを愛し
誰かと約束を交わせたら
どんなにいいだろう

恋とか愛とかの不思議な感情や非論理的な行動は
私たちの心をとらえて離さない

決して結ばれることがないという悲劇に涙し
心から愛し合うふたりという純愛に感動する
戦争となれば平気で人を殺す人間が
恋をし
愛や平和を語る
こんな変なことが他にあるだろうか

恋も愛も
民主主義や人権のように
西洋から来た言葉のように思える
どちらも私たちのものでない
そう言いながら
源氏物語の世界にはいり込む
光源氏の世界は
外国のように遠い

長い時間のあとで
それでも愛してると言えたらいい

結果はどうであれ
誰かに恋をし
誰かを愛し
誰かと約束を交わせたら
そんなことが一度でもあれば
その人生はいい人生と言っていい
そう思う

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