日本は、平均寿命、教育、所得水準などを算定した指数では世界10位、ところが女性の社会進出度では109カ国中57位で、先進諸国では最低です。06年42位、07年の54位、08年58位と、低下・停滞を続けています。こうした日本の現状に、国連の女性差別撤廃委員会からは、きびしい批判と差別の是正を求める内容の勧告がくり返し出されています。
日本は、平均寿命、教育、所得水準などを算定した指数では世界10位、ところが女性の社会進出度では109カ国中57位で、先進諸国では最低です。06年42位、07年の54位、08年58位と、低下・停滞を続けています。こうした日本の現状に、国連の女性差別撤廃委員会からは、きびしい批判と差別の是正を求める内容の勧告がくり返し出されています。
http://www.jcp.or.jp/josei/html/2004/senkyo/tii.html
第3次男女共同参画基本計画の策定にあたっての申し入れ
http://www.jcp.or.jp/josei/html/2010/101101_danjobyodou.html
国連女性差別撤廃条約・憲法にもとづいて女性差別の是正をはかる実効ある計画に
2010年11月1日 日本共産党国会議員団男女平等推進委員会・党女性委員会
男女共同参画社会基本法制定から11年、第1次男女共同参画基本計画策定以来10年、法律上は、男女雇用機会均等法や育児介護休業法の改正、DV防止法の制定・改正などが一定おこなわれ、地方条例の制定、計画策定・改定などのとりくみがすすめられてきました。
しかし、現実は、7月に発表された答申「第3次男女共同参画基本計画の策定に当たっての基本的考え方」も、「男女共同参画が必ずしも十分には進まなかった」と「反省」しているとおりの状況がつづいています。10月に世界経済フォーラムが公表した社会進出や政治参加の性別格差ランキングで、日本は134カ国中94位であり、主要先進国で最下位です。
こうした日本の女性差別是正のとりくみの遅れにたいし、国連女性差別撤廃委員会の4回目の勧告(2009年8月)は、これまでにもまして厳しいものでした。日本政府が国連女性差別撤廃条約を法的拘束力のある国際文書として認め、その完全な実施をもとめています。第3次男女共同参画計画についても条約を法的枠組みにして策定することをもとめています。政府は、この国連女性差別撤廃委員会の勧告を真摯(しんし)にうけとめるべきです。
国連女性差別撤廃条約と日本国憲法を生かし、男女差別の是正のとりくみの前進の一歩となるよう、以下の諸事項についてすみやかな対応をもとめるものです。
(1)働く女性への差別の是正をはかる
非正規で働く女性が雇用女性労働者の2人に1人にまで増え、女性の賃金は非正規をふくめると男性の半分である。妊娠・出産を理由にした解雇や退職勧奨も横行している。この間におこなわれた男女雇用機会均等法の改正も、間接差別の禁止がもりこまれたものの対象を三つに限定するなど不十分である。政府が労働者派遣法の規制の対象外におこうとする「専門業務」に多くは女性がついている。これをニーズがあるなどとして派遣のまま固定化しようとするのは認められない。自営業・農業女性の自家労賃もいまだ認められていない。雇用・労働の場での事実上の平等の実現を優先課題と位置づけとりくみを強化する。
○男女雇用機会均等法を抜本的に改正する。間接差別の禁止規定を実効性あるものに改善する。また、気軽に相談できる窓口、労働者の申し立てにより差別を是正できる強力な救済機関を設置し、罰則も強化し企業に対する指導の強化をはかる。区分が違うということで、法の規制をのがれ、差別の温床になっている指針の「雇用管理区分」を廃止する。
○「同一価値労働同一賃金」の原則にもとづく均等待遇の法制化をすすめる。同一価値の労働についての男女労働者の同一報酬に関するILO(国際労働機関)100号条約は、報酬率を性別による差別なしに定めるための措置をとることをもとめている。差別の実態に即して改善をはかるためのさまざまな手法や体制の研究を適切な形ですすめる。
○労働者派遣法を実効あるものに抜本改正する。一時的臨時的なものに限定する。製造業への派遣はどんな形でもきっぱり禁止する。登録型派遣禁止の例外とされる専門業務の内容を見直し、限定する。日雇い派遣は全面的に禁止する。違法行為があった場合に直接雇用したものとみなす規定を導入し、「期間の定めのない雇用」とする。
○パート労働法の差別禁止の3要件(正社員と同一職務、転勤や配転の有無が正社員と同じ、期間の定めのない労働契約)規定は、ごく一部のパート労働者にしか適用されないものであり、削除し、均等待遇の原則を明記する。国や地方自治体の臨時・非常勤労働者にパート労働法を適用する。
○妊娠・出産による解雇、育児介護休業取得による不利益扱いの禁止の徹底をはかる。
○自営業・農業の女性の自家労賃を認めない所得税法56条を廃止する。
(2)男女がともに仕事と家庭の両立をできるように条件整備をはかる
出産をしても働き続けたい女性が増えているにもかかわらず、保育所不足、長時間労働による仕事と子育ての困難などから、実際には妊娠・出産で仕事をやめる女性がいまも7割にものぼっている。世界であたり前になっている男女がともに仕事と家庭の責任がはたせるよう条件整備をはかる。
○待機児童問題の解決、定員をこえた「つめこみ」の解消のために年間10万人分の認可保育所の建設を国が責任をもってすすめる。現在、政府が検討をすすめている「子ども・子育て新システム」は、保育への国と自治体の責任を投げ捨て、地域格差や保育条件の引き下げをまねくものである。公的保育制度の拡充、設置・配置基準の充実、予算の拡充をはかる。
○全国の小学校区の3割以上で未整備の学童保育の新増設、充実をはかる。国による設置・運営基準を定め、地域格差の改善、条件整備、指導員の労働条件の改善をすすめる。
○残業の上限を法律で制限するなど長時間労働の是正をはかる。
○育児介護休業制度をだれもがとれる制度に改善する。パートや派遣社員などの有期雇用労働者への厳しい取得条件を6カ月以上働けばとれるように改善する。低い賃金保障では、男性やひとり親家庭の取得は困難であり、賃金の6割保障などを早期にすすめる。
(3)雇用、 政治的・公的分野での女性の参画の促進をはかる
各分野で女性の活躍が広がっている。しかし、雇用の分野でも、政治・公的な分野でも、教育・研究の分野でも、政策・意思決定機関への参加は著しく遅れている。子育てをしながら仕事を継続できるようにするための社会的な整備が不十分であり、雇用、政治的・公的活動などあらゆる分野での女性の参画に重点をおいた特別の措置をとることも不十分なためである。国連女性差別撤廃委員会勧告で2年以内に特別に報告をもとめられている課題の一つであり、数値目標・スケジュールの設定など暫定的特別措置の導入をすすめる。
○2020年までにあらゆる分野で指導的地位にしめる女性の割合を少なくとも30%にするという政府目標の実現にむけ、女性国家公務員の管理職への登用をすすめる。そのために、省庁ごとの目標・スケジュールの設定をふくめた計画策定・実施をすすめる。
○民間企業が積極的に格差是正にとりくむよう、その実施と報告を義務づける。当面、規模が100人以上の企業に、改善目標と計画の作成及びその実施と報告を義務づける。
○女性の国会進出を阻む小選挙区制を廃止し、比例代表など民意を反映する選挙にかえる。衆議院の比例定数削減はおこなわない。
(4)ひとり親、 高齢者などだれもが安心してくらせるよう社会保障の充実をはかる
ひとり親家庭の貧困状態は先進国のなかでも最悪の水準となっている。女性の地位の低さが影響し、多くの高齢女性が低額年金、無年金の状態におかれている。だれもが安心してくらせるよう社会保障の充実をはかる。
○児童扶養手当の額の引き上げ、対象を拡大する。資格取得や技能訓練費などの国の援助額のひきあげ、安価で良質な公共住宅の供給の促進などをすすめ、ひとり親家庭の安定した雇用とくらしを保障する。
○全額国庫負担の最低保障年金制度の確立で女性の年金の底上げをはかる。加入条件を25年から10年に短縮して、無年金を減らす。
○後期高齢者医療制度を廃止し、老人保健制度に戻す。高齢者と子どもの医療費を無料化する。
○介護保険の利用抑制をやめ、施設の拡充と労働者の処遇改善、負担軽減で安全安心の制度にする。介護休業の延長と所得保障の改善をはかる。
○障害者自立支援法を廃止し、憲法、国連障害者権利条約にもとづく障害者総合福祉法を制定する。
(5)女性の健康を保障する施策の充実をはかる
長時間労働などによる健康破壊、「お産難民」といわれるほどの産科医不足など、深刻な事態がひろがっている。女性の健康が権利として守られるよう施策の充実をはかる。
○妊婦健診、出産費用の軽減・無料化、不妊治療の助成額の増額・所得制限の緩和・健康保険の適用など、国の責任で妊娠・出産にかかわる経費負担の軽減をすすめる。産科医不足の解消など、安心して出産できる体制を充実させる。
○女性の体を考慮した医療、女性特有の疾病対策を強化し、予防、健診の充実をはかる。乳がん・子宮がん検診の自己負担の軽減・無料化、子宮頸(けい)がんワクチンへの公費助成、最新技術による検診の促進などをはかる。
○働く女性の長時間労働、深夜労働の実態・健康影響調査をすすめる。
○業者、農業女性、非正規雇用で働く女性が、出産や病気・ケガのときにも所得の心配なく休めるように、国民健康保険の出産手当金・傷病手当金を強制給付にする。
(6)民法改正、DV、セクハラ、「慰安婦」問題など人権尊重のとりくみを強化する
1996年の法制審議会答申から14年、いまだ民法改正が実現しないのは自公政権などが放置してきた結果である。民主党政権も、公約に民法改正をかかげながら、期待を裏切っている。民法改正、女性にたいする暴力の根絶など人権尊重のとりくみを強化する。
○選択的夫婦別姓制度など民法改正は国連女性差別撤廃委員会勧告がその実現を特別に重視している課題の一つである。早期におこなう。
○DVから被害者を守り、自立のための施策の充実をはかる。配偶者暴力相談支援センターの増設と施設条件の改善などをすすめる。被害者の住宅優先入居、自立に要する費用援助などをすすめる。加害者更生についての調査研究・対策強化をはかる。
○企業へのセクハラ防止対策の強化・指導を強める。改善命令をだせる機関の設置、被害者の保護、相談窓口の拡充などをすすめる。被害の相談、申し出をおこなった労働者への解雇や不利益取り扱いをやめさせる。
○頻発する米兵による性犯罪の大もとにある日米地位協定を抜本改定し、米軍優遇の特権をなくす。米軍基地を縮小・撤去する。
○旧日本軍「慰安婦」問題の解決を急ぎ、政府による謝罪と賠償をおこなう。
(7)男女の固定的役割分担意識解消のための社会全体のとりくみを強化する
いまだ根強い男女の固定的役割分担意識の解消のために、政府は、意識啓発と男女平等教育を強める。憲法の男女平等の立場はもとより、国連女性差別撤廃条約など国際的な基準を国民に広く知らせるとりくみを強める。
(8)未批准の国際条約・選択議定書を早期に批准する
国連女性差別撤廃条約選択議定書、ILOの一連の労働時間・休暇関係の条約をはじめ111号(雇用における差別禁止)、158号(解雇規制)、175号(パートタイム)、183号(母性保護)など未批准の条約を早期に批准する。