たとえばプラトン、アリストテレス、あるいはもっと古くピタゴラスは、そこにあるものそのものに、自然物あるいは自然界のもう少し細かいものでもいいんでありましてとにかく、ものそのもの、あるいは現象というようなもの自身に、何かある完全なもの、単純なもの、美しいものを求めたわけでありまして、しかし近代の科学は、そういうことではなかなか発見できない。そこには非常に多様性がある。しかし、最高度の規則性がそこに表われているかどうかわからない。完全なものとはいえないかも知れない。円いものだけでなしにゆがんだものもある。直線運動だけではなしに曲った運動もあるだろう、楕円運動もあるだろう、もっと複雑な運動もあるだろう。しかし単純な一様性、単純性というものは、ものの間のいろいろな関係、そういうところに法則の単純性がある。あるいはその法則がどういう立場からみても同じ法則である、法則の形が変らぬ、そういうところに科学者の美意識を満足させる対象を見つけ出す、そういう方向へ進んでいったのだ、そういうふうに一口でいうことができると思います。
科学者の美意識(講演要旨)by 湯川秀樹(PDFファイル)
科学者の美意識
講演要旨
湯川秀樹氏
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arted1951/1960/57/1960_57_2/_pdf