在宅介護サービスの事業者のほとんどが、規則があるかのように決まって『利用者』という呼び方をしています。病院などの医療機関でも、『患者様』という表現を日常的に使っていて、それにも違和感を感じます。『利用者』というだけでなく、『ご利用者様』となると、呼ばれる方も気分が悪くならないだろうかと思います。勿論、直接的に要介護高齢者に向かって「ご利用者様!」と呼びかけることはあまりないでしょうが、やはり、違和感があります。
『利用者』という表現は、介護保険法等における国、都道府県、保険者(市区町村)が使用している表現に過ぎません。施設でも以前は、『入所者』と言っていましたが、今では『入居者』というようになり、「住んでいただくためのお住まいを提供している」という施設側の姿勢や視点を変え始めました。しかし、サービス業で使われる『お客様』という言葉とは、やや違います。
要介護者は「お世話してもらって申し訳ない」とか、 「何から何までやってもらえるなんて、もったいない」などと恐縮している方もいますが、 それに対して事業者側の介護職員は、次第に「介護してあげる」という態度、姿勢が無意識に醸成され、 要介護者にそれを感じさせてしまうようになるのは、『利用者』という呼び方にあり、 「利用者本位」と言いながら、実は「事業者本位」のサービス提供になっているからではないでしょうか。
介護サービスは、個別性に富んだサービスであるはずです。一人ひとりの要介護者に最適な自立支援の介護サービスであることは言うまでもありません。そのことを自社の介護職員に理解させて、自分の給与の源泉が顧客の支持によるサービスの利用であると認識させている事業者は極めて少ないでしょう。「顧客本位」とは言えない介護サービスとはどういうものなのでしょうか。それに気づかない限り、真の意味で「顧客本位」の介護サービスは実現しないでしょう。
2007年
6月のコラム
利用者という名のお客様
by 福岡浩
http://www.kaigo-consulting.net/column/0706.html
『利用者』という名の『お客様』
先月の「介護事業経営者のための勉強会」(毎月1回開催)でもお話したことですが、 在宅介護サービスの事業者のほとんどが、規則があるかのように決まって『利用者』という呼び方をしています。
しばらく前に新聞でも取り上げられましたが、病院などの医療機関でも、「患者様」という表現を日常的に使っていて、それにも違和感を感じます。
『利用者』というだけでなく、『ご利用者様』となると、呼ばれる方も気分が悪くならないだろうかと思います。
勿論、直接的に要介護高齢者に向かって「ご利用者様!」と呼びかけることはあまりないでしょうが、やはり、違和感があります。
『利用者』『お客様』『顧客』の違い
『利用者』という表現は、介護保険法等における国、都道府県、保険者(市区町村)が使用している表現に過ぎません。
施設でも以前は、『入所者』と言っていましたが、今では『入居者』というようになり、「住んでいただくためのお住まいを提供している」という施設側の姿勢や視点を変え始めました。
しかし、サービス業で使われる『お客様』という言葉とは、やや違います。
さて、皆様の事業所におかれましては、介護職員方々が自社のサービスを利用される要介護者を『利用者』と呼んでいると思いますが、なぜ『お客様』と言わないのでしょうか。
事業所内の会議でも『顧客』という表現で会話されている事業所は聞いたことがありませんが、その必要性もないのでしょうか。
介護保険サービスを利用する要介護者は、介護保険証を持って役所へ行って要介護認定を申請した段階では、保険者から見ると紛れもなく『利用者』なのです。
しかし、介護保険サービスの利用を希望する要介護者と、サービスを提供する事業者との契約関係が成立した直後から、 事業者にとって要介護者はあくまでも『お客様』若しくは『顧客』となるということを、介護現場の職員は理解していないのでしょうか。
『お客様』とは、現在、自社のサービスを利用しているユーザーと今後利用する可能性がある潜在的ユーザーとの両方を意味する場合が一般的です。
『お客様』という言葉が、不特定多数の客を意味することもあります。
また、広い意味(広義)で「お客様本位」の原点は、潜在的ユーザーが好意的な印象をもっていることだと言えます。
ほとんどの介護サービス事業者は、まだ介護サービスを利用していない要介護者に対する案内パンフレットなどに、『お客様』という言葉を使っていません。
なぜか、「ご利用者様」と「ご利用者」という表現を無意識に使っていますが、それで良いのでしょうか。
次に『顧客』とは、どういう意味か。それは、自社のサービスを利用しているユーザーに限定した意味で使われます。
いわゆる「リピーター」(継続的利用)を『顧客』と定義することができますが、コンビニのように毎日必ず利用する客もいれば、通りすがりの客もいるので、『顧客』とは言わず、『お客様』と言っている場合もあります。
介護事業経営者として、自社の介護サービスを利用している要介護者を『顧客』と位置づけるに足りるサービス提供状況をイメージできるでしょうか?
『顧客』のプロフィールや意向、要望などについて、介護サービスを提供する事業者が把握していなければ、その対象者を『顧客』とは呼べないはずです。
また、事業者がその『顧客』の期待に応えている状態において、「顧客満足」が確認できることも必要です。
だから、「利用者本位」ではなく、「お客様本位」「顧客本位」
介護業界以外では、「利用者本位」という言葉はあまり使われていません。
医療機関でも「患者様」という表現に違和感があるという議論があります。
先進的な医療機関では、『お客様』と呼び始めています。
「利用者本位」と、「お客様本位」「顧客本位」とは、目的や意味することは一見同じように思われていますが、介護事業者と要介護者である当事者の意識には大きな差があります。(介護現場の当事者は気がつかない)
それは、要介護者は「お世話してもらって申し訳ない」とか、 「何から何までやってもらえるなんて、もったいない」などと恐縮している方もいますが、 それに対して事業者側の介護職員は、次第に「介護してあげる」という態度、姿勢が無意識に醸成され、 要介護者にそれを感じさせてしまうようになるのは、『利用者』という呼び方にあり、 「利用者本位」と言いながら、実は「事業者本位」のサービス提供になっているからではないだろうか。(介護現場の当事者は気がつかない)
中には、「お客様本位」の介護サービスを提供しようと努めている事業者もありますが、決して多くはありません。
例えば、デイサービスに来られる要介護者を「いらっしゃいませ、おはようございます。お待ちしておりました。」と言って迎え入れる事業者もあります。
介護サービスもサービス業だから「お客様本位」
介護保険制度は公的な制度でありながら、被保険者である要介護者は自由に事業者を選択し、 契約して介護サービスの提供を受けるという仕組みを分解して理解しましょう。
保険者の役割は介護保険証の交付や要介護認定であり、実際のサービス提供は各事業者が要介護者との契約により開始されます。
この時点で要介護者と事業者との間に契約関係が成立し、事業者は「お客様」と呼び、「顧客本位」の介護サービスが提供されるという理解がなければなりません。
同じく保険者も上記のような説明が十分にできていないと同時に、保険者の担当者もこのことが十分に理解できていないことが多いようです。
本来ならば、対外的には「お客様本位」と表明し、社内では「顧客本位」と言うべきでしょう。
さらには、「お客様本位」に欠かせないホスピタリティが創り出されていて、それがお客様の琴線に触れる瞬間があるのでしょうか。
勿論、介護保険法では、ホスピタリティマインドまでは要求していないので、最低限のコンプライアンスがあり、指定基準が守られていれば、介護事業者として認められることになっています。
大多数がリピーターだから「顧客本位」であるべき
介護サービスを継続して利用する要介護者は、リピーターであり、「お得意様」であり、 紛れもなく『顧客』であり、「顧客本位」の介護サービスが提供されなければなりません。
しかも、介護サービスは、個別性に富んだサービスであるはずです。
一人ひとりの要介護者に最適な自立支援の介護サービスであることは言うまでもありません。
そのことを自社の介護職員に理解させて、自分の給与の源泉が顧客の支持によるサービスの利用であると認識させている事業者は極めて少ないでしょう。
「顧客本位」とは言えない介護サービスとはどういうものなのでしょうか。
それに気づかない限り、真の意味で「顧客本位」の介護サービスは実現しないでしょう。
高齢者は、
・ 医療サービス提供者にとっては患者
・ 福祉・介護サービス提供者にとっては利用者
・ その他のサービスの提供者にとっては顧客
ということなのだろうけれど、呼び方は人によって違い、
・ 患者様
・ 患者さん
・ 利用者様
・ ご利用者様
・ お客様
・ そちら様
・ おじいちゃん
・ おばあちゃん
・ xxさん
・ あっ
・ こんにちわ
など様々だ。
日本語はほんとうに面倒。でも、こころがこもっていれば、呼び方などさほど気にならない。。。と思う。
まあ、サービスなんていってはみても、実際は、医療ビジネスであり、福祉ビジネスであり、介護ビジネスであり、保険ビジネスであり、配食ビジネスであり、健康ビジネスであるわけで、儲どれもけを度外視して成り立つものではないということを忘れてはならない。