荒井修

A-9私は親方から仕立てをぜんぶ習って帰って来たんだけど、絵はこれといって習ってなかった。で、独学でやっちゃったんです。箔押しから何やら。だから、あたしに絵を教えたという人はあんまりいないの。ほとんどいない。ただ、しいていえば、感覚的なものはたぶん、私の絵の師匠は、玉三郎さんかもしれない。
坂東玉三郎という人に、「もうちょっと、ここを、こう逃げて」とか、「色は、そうじゃない方がいいんじゃない」とかって、話してもらいながら、最初はずいぶんいろいろ教わったんです。

2 thoughts on “荒井修

  1. shinichi Post author

    毎年、干支の扇子も人気です。歌舞伎役者も愛用する扇専門店・文扇堂@浅草

    by Rie Tomita

    東東京マガジン

    http://higashi-tokyo.com/2014/01/15/毎年、干支の扇子も人気です。歌舞伎役者も愛用

    浅草の雷門柳小路と仲見世にある「文扇堂」は都内で唯一、職人を抱える扇専門店。各流派の舞踊家、歌舞伎の役者、落語家など多種多彩な方々が訪れる、創業約120年の老舗です。四代目の荒井修さんは、扇子づくりの職人でありながら、江戸時代を中心とした風俗や文化にも詳しく、歌舞伎役者からの信頼も厚い、いわば浅草の有名人。忙しい荒井さんをなんとか捕まえて、お話を聞いてきました。

    扇子は日本人の発明なんです

    「扇子は日本人の発明なんですよ。まだ紙が貴重品だった頃は、儀式などの大切な記録を木簡といって木に書いていました。一枚の木に書いて足りなくなると、二枚、三枚と書いていく。その根元を留めてかがったものが“檜扇(ひおうぎ)”です。いわゆるメモの役目だったため、男檜扇は白木の無地ですが、儀式の場に出ることが少なかった女性は、華やかな柄が入った女檜扇を持っていました」

    そのうちに日本に紙の文化が入ってきて、扇子も紙で作るようになります。紙と紙の間に骨をさしたようすが、コウモリが羽を広げたように見えることから“蝙蝠扇(かわほりせん)”とも呼びました。日本で発明された扇子は、中国に渡り、シルクロードを通ってヨーロッパの絹扇にまでなっていきます。

    相手と自分との境界線

    扇子は作法としても重要な位置を占めるようになります。「例えば結婚式では羽織袴に扇子を持ちますよね。あるいは座って挨拶するときに、畳んだ扇子を膝前に置くでしょう。あれは境界線で、横に置いた扇子の向こうは上座、こちらは下座という意味があります。 最初は儀式の進行に必要な記録を書き付けるために扇子が生まれ、そのうちに『ここが相手と自分の境界線ですよ』という心を表現する作法になるわけです」

    扇子ならではの技法がある

    荒井さんは、坂東玉三郎丈や故中村勘三郎丈など役者の特注でデザインを考案することも度々あります。「扇子の構図には、かなり制約があります。扇子に絵柄をつけるのは折る前ですから、折ったときに見える絵柄を考えながら描くのです。たとえば日の丸の扇子は、平面にすると横長の楕円なんですよ。色の濃淡も大事。折り山の影になる部分は濃く見えてしまうので、実際の絵柄はデザイン画よりほんの少し色を薄くします」

    他にも、扇子の絵柄ならではの技法があります。「“ノゾキ”といって、あえて全体を描かずに、扇面から外は想像させる手法。たとえば月を描くとしたら、全部を扇子の中い入れるより、一部分だけ描くほうが月の大きさをイメージできるでしょう」

    日本画でも余白を大事にするように、「扇子ではツマといいうんだけど、余白をうまく利用して、広さを感じさせるんです」と荒井さん。「膠(にかわ)が強すぎると、折ったときに顔料が割れてしまう。いかに顔料を薄くして、絵柄に奥行きを出すためには“たらしこみ”といって、ぼかしの技法を使います」

    “見立て”とは…?

    「昨年の干支は巳。蛇は弁天様のお使いだから、これは弁天様の持っている琵琶を描いたわけ。こっちは道成寺。ご存知のとおり、蛇に変わる清姫の衣装がこの鱗柄ですね。」このように関連する図案や意匠を描くのは“見立て”といいます。

    扇子そのものが“見立て”の小道具で使われることも。「落語で、扇子が箸やキセル、刀になったりする。芝居の中でも、御所五郎蔵(ごしょのごろぞう)が白扇をさかさまに持って富士の山に例えたり。他にも<勧進帳><道成寺>など、歌舞伎や日本舞踊で、いろんな見立てに扇子が使われます」

    毎年新柄が登場!干支の扇子

    文扇堂では毎年、干支の扇子を制作しています。荒井さんが何種類かのデザインを考案し、お客様の注文を受けてから描きます。年末、工房にうかがって、息子の亮太さんが作成中のようすを見せていただきました。扇面は一枚の紙のように見えますが、実は三枚の紙を張り合わせてあり、真ん中の層を開いて、糊をつけた骨を差し込みます。糊が乾かないうちでなければならないため、とても素早い作業です。

    写真はこれまでの干支扇のほんの一例。今年の干支、午(馬)の絵柄も販売中。店頭のカタログから好きな柄を選べます。干支の扇子をバッグからさりげなく出すなんて、ちょっとおしゃれじゃありませんか!?

    詳細情報

    文扇堂
    住所:台東区浅草1-30-1(仲見世店) 台東区浅草1-20-2(雷門店)
    電話:03-3841-0088
    営業時間:10:30~18:00
    定休日:毎月20日すぎの月曜日

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