虚構の森(田中淳夫)2

農薬を大量散布してもよいとは思わない。しかし使用禁止すべきとも思わない。人体に影響がないレベルで病害虫を抑えて収穫を確保できるのなら有り難い。除草剤も同じだ。ようは使用量や散布の仕方、時期……などが重要なのだ。
農薬を不安がる消費者も、多くは日常生活で胃薬や風邪薬、頭痛薬、そして合成されたビタミン剤などを気軽に摂取している。風邪薬を適正に飲めば風邪を早期に治してくれる。だが大量に摂取したら死ぬ。農薬も同じなのである。
もう1つ付け加えると、農薬・除草剤の真の怖さは、作物への残留ではなく散布者への曝露だ。適切な散布方法を取らないと、高濃度の薬剤を散布者が直接吸い込む恐れがある。その怖さに比べると、農作物への残留分など比較にもならない。

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  1. shinichi Post author

    虚構の森

    by 田中淳夫

    [目次]
    はじめに ――森を巡る情報の「罠」
    第1章 虚構のカーボンニュートラル
    1.地球上の森林面積は減少している?
    2.アマゾンは酸素を出す「地球の肺」?
    3.間伐した森は「吸収源」になる?
    4.森林を増やせば気候変動は防げる?
    5.老木は生長しないから伐るべき?
    6.温暖化によって島国は水没する?
    7.砂漠に木を植えて森をつくろう?

    第2章 間違いだらけの森と水と土
    1.「緑のダム」があると渇水しない?
    2.「緑のダム」があると洪水は起きない?
    3.木の根のおかげで山は崩れにくい?
    4.森は降雨から土壌を守ってくれる?
    5.黄砂は昔から親しまれる気象現象?
    6.植物もパンデミックに襲われる?

    第3章 日本の森を巡る幻想
    1.マツタケが採れないのは、森が荒れたから?
    2.古墳と神社の森は昔から手つかず?
    3.日本の「本物の植生」は照葉樹林?
    4.日本の森は開発が進み劣化した?
    5.植林を始めたのは江戸時代から?
    6.生物多様性は安定した環境で高まる?
    7.草原は森より生物多様性は低い?

    第4章 フェイクに化ける里山の自然
    1.ソメイヨシノにサクランボは実るか?
    2.外来草花が日本の自然を浸食する?
    3.堤防に咲く花は、遺伝子組み換え植物?
    4.街路樹は都会のオアシスになる?
    5.ミツバチの価値はハチミツにあり?
    6.外来生物は在来種を駆逐する?

    第5章 花粉症の不都合な真実
    1.造林したからスギ花粉は増えた?
    2.枯れる前のスギは花粉を多く飛ばす?
    3.スギを減らせば花粉も減る?
    4.舗装を剥がせば花粉症は治まる?
    5.花粉症はスギがもたらす日本だけの病?
    6.マイクロプラスチックは花粉症より危険?

    第6章 SDGsの裏に潜む危うさ
    1.桜樹は日本人の心だから保護すべし?
    2.和紙も漆も自然に優しい伝統工芸?
    3.木材を使わない石の紙は環境に優しい?
    4.再生可能エネルギーこそ地球を救う?
    5.パーム油が熱帯雨林を破壊する?
    6.農薬や除草剤は人にも環境にも危険?
    7.人口爆発のため食料危機になる?

    終わりに――行列の後ろを見るために

    主な参考文献(順不同)

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