CQ2. フレイルをどのように診断するか?
・フレイルの診断方法には統一された基準がないが,Phenotype model(表現型モデルに基づく Cardiovascular Health Study 基準(CHS 基準)と,Accumulated deficitmodel(累積障害モデル)に基づく Frailty Index が主要な方法である.
・CHS 基準は,身体的フレイルの代表的な診断法と位置づけられ,原法を修正した日本版 CHS(J-CHS)基準が提唱されている.
・また,簡易評価法としては,簡易 FRAIL 質問票,Edmonton Frail Scale(EFS),Tilburg Frailty Indicator(TFI),基本チェックリスト,簡易フレイル・インデックスなどがあり,それらの妥当性も示されている.
CQ3. フレイルを呈する高齢者の割合は?
・フレイル高齢者の割合は,Cardiovascular Health Study 基準(CHS 基準)またはそれに準じた基準で評価したわが国の調査では,地域在住高齢者の約 10%前後と推計される(エビデンスレベル:E―2).
・フレイル高齢者の割合は加齢とともに増加し,男性に比較して女性に多い(エビデンスレベル:E―2).
・慢性疾患で外来通院中の高齢者や施設入所者におけるフレイルの割合は,地域在住高齢者における割合よりも高いと考えられる.
CQ4. フレイルの危険因子は?
・フレイルの危険因子としては,生活習慣(偏った食事内容や運動不足など),身体的因子(全身の疼痛,難聴,ポリファーマシー,ビタミン D 不足など),心理的因子(意欲低下,抑うつなど),環境因子(配偶者のフレイルなど),各種疾患(生活習慣病,心血管疾患など)が挙げられる.
フレイル診療ガイド 2018 年版
厚生労働省保険局高齢者医療課
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000201985.pdf
CQ1. フレイルとはどのような状態か?(フレイルの定義とは?)
・フレイルとは,「加齢に伴う予備能力低下のため,ストレスに対する回復力が低下した状態」を表す“frailty”の日本語訳として日本老年医学会が提唱した用語である.
・フレイルは,要介護状態に至る前段階として位置づけられるが,身体的脆弱性のみならず精神心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく,自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味する.
CQ2. フレイルをどのように診断するか?
・フレイルの診断方法には統一された基準がないが,Phenotype model(表現型モデルに基づく Cardiovascular Health Study 基準(CHS 基準)と,Accumulated deficitmodel(累積障害モデル)に基づく Frailty Index が主要な方法である.
・CHS 基準は,身体的フレイルの代表的な診断法と位置づけられ,原法を修正した日本版 CHS(J-CHS)基準が提唱されている.
・また,簡易評価法としては,簡易 FRAIL 質問票,Edmonton Frail Scale(EFS),Tilburg Frailty Indicator(TFI),基本チェックリスト,簡易フレイル・インデックスなどがあり,それらの妥当性も示されている.
CQ3. フレイルを呈する高齢者の割合は?
・フレイル高齢者の割合は,Cardiovascular Health Study 基準(CHS 基準)またはそれに準じた基準で評価したわが国の調査では,地域在住高齢者の約 10%前後と推計される(エビデンスレベル:E―2).
・フレイル高齢者の割合は加齢とともに増加し,男性に比較して女性に多い(エビデンスレベル:E―2).
・慢性疾患で外来通院中の高齢者や施設入所者におけるフレイルの割合は,地域在住高齢者における割合よりも高いと考えられる.
CQ4. フレイルの危険因子は?
・フレイルの危険因子としては,生活習慣(偏った食事内容や運動不足など),身体的因子(全身の疼痛,難聴,ポリファーマシー,ビタミン D 不足など),心理的因子(意欲低下,抑うつなど),環境因子(配偶者のフレイルなど),各種疾患(生活習慣病,心血管疾患など)が挙げられる.
CQ5. フレイルのアウトカムは?
・フレイルの主要なアウトカムとしては,転倒・骨折,術後合併症,要介護状態,認知症,施 設入所,死亡などがあり,いずれの事象の発生もフレイルと有意な関連性がある(エビデンスレベル:E―1a).
・生活習慣病(糖尿病),心血管疾患などの発症,およびポリファーマシーなどは,フレイルのアウトカムであると同時にその原因にもなり得る(エビデンスレベル:E―1b).
CQ6. 認知的フレイルの定義・診断法は?
CQ7. 認知的フレイルの頻度は?
・認知的フレイルは,①身体的フレイルと認知機能障害(CDR=0.5 と定義)が共存すること,②アルツハイマー型もしくはそのほかの認知症でないこと,の双方を満たす状態として IANA/IAGG が操作的に定義した.
・診断基準が定まっていないが,認知的フレイルの頻度は数%(1~5 %)程度と推定される.
CQ8. 認知的フレイルのアウトカムは?
・認知的フレイルのアウトカムに関する報告はまだ少なく,ADL 障害の合併が多いこと,認知症(特に血管性認知症)の合併が多いことが指摘されている(エビデンスレベル:E―1b).
CQ9. 社会的フレイルの定義は?
・社会的フレイルの定義は定まっていないが,独居,外出頻度,友人の訪問,家族との接触などについての質問より2つ以上問題がある場合に社会的フレイルと定義されている.
CQ10. 社会的フレイルの頻度は?
・評価法は異なるものの地域在住高齢者における社会的フレイルの頻度は 8.4~11.1%であった.
CQ11. 社会的フレイルのアウトカムは?
・社会的フレイルと有意な関連性を認めるアウトカムは,要介護認定,IADL・基本的 ADL の変化,死亡などである(エビデンスレベル:E―1b).
CQ12. オーラルフレイルの概念ならびに身体的フレイルとの関係は?
・オーラルフレイルとは身体的フレイルを引き起こす要因として口腔機能の維持・向上の重要性を啓発することを目的として提案された概念であり,口腔機能の脆弱状態(フレイル)を意味し,日本オリジナルの言葉である.
・オーラルフレイルは身体的フレイルと関連がある(エビデンスレベル:E―1a).
・オーラルフレイルは身体的フレイルおよびサルコペニアのリスク因子である(エビデンスレベル:E―1b).
CQ13. サルコペニアとフレイルの合併頻度は?
・サルコペニアとフレイルの合併頻度を調べたコホート研究は,大規模なものが 1つと小規模なものが 3 つあるが,頻度は大きく異なっており,現時点では一定の見解を示すことは難しい.
CQ14. フレイルと栄養(素)・食事との関係はあるのか?
・栄養状態はフレイルと関連がある(エビデンスレベル:E─2).
・微量栄養素,特に血清ビタミン D 低値はフレイルのリスクとなる(エビデンスレベル: E─1b).
・地中海食をはじめバランスの取れた良質な食事はフレイルを予防する可能性がある(エビデンスレベル:E─1b,推奨レベル:B).
CQ15. フレイルに対する栄養介入の効果はあるか?
・栄養教育,栄養補助食による単独介入の効果は弱く推奨する(エビデンスレベル:1,推奨レベル:B).
・運動療法と栄養補助製品との併用療法は推奨する(エビデンスレベル:1+,推奨レベル:A).
CQ16. フレイルの発症・進行予防に運動介入は有効か?
・フレイルに対する運動介入は,歩行,筋力,身体運動機能,日常生活活動度を改善し,フレイルの進行を予防し得るため推奨される(エビデンスレベル:1,推奨レベル:A).
CQ17. フレイルの発症・進行を予防するにはどのような運動が推奨されるか?
・フレイルの発症・進行を予防するための運動プログラムとしては,レジスタンス運動,バランストレーニング,機能的トレーニングなどを組み合わせる多因子運動プログラムが推奨される(エビデンスレベル:1+,推奨レベル:A).
・運動プログラムは中等度から高強度の運動強度で,漸増的に運動強度を上げていくことが推奨される(エビデンスレベル:1+,推奨レベル:A)
CQ18. 起立性低血圧/起立性調節障害とフレイルとの関連は?•フレイルでは起立性低血圧,起立性調節障害の割合が増加し,予後も悪い(エビデンスレベル:E─2).
CQ19. 降圧治療とフレイルとの関連は?
・降圧治療による心血管病発症予防効果はフレイルの有無に関わらず認められ,厳格な降圧が推奨される(エビデンスレベル:1,推奨レベル:B).
CQ20. 心房細動とフレイルとの関連は?.•心房細動を有する高齢者におけるフレイルの頻度は高く,予後悪化と関連する(エビデンスレベル:E─2).
CQ21. 急性冠症候群または経皮的冠動脈形成術とフレイルとの関連は?
・ACS 後または PCI 後の高齢者におけるフレイルの頻度は高く,短期または長期予後悪化と関連する(エビデンスレベル:E─1b).
CQ22.心不全とフレイルとの関連は?
・心不全患者におけるフレイルの頻度は 19~40%と一般集団より高率であり,フレイルは心不全患者の再入院や死亡といった予後悪化に関連する(エビデンスレベル:E─1b).
CQ23.フレイルを有する心不全患者への介入はアウトカムを改善するか?
・フレイルを有する高齢心不全患者に対する運動や多職種介入による予後,身体機能や ADL の改善,医療コスト軽減効果は期待されるが,エビデンスは十分ではない(エビデンスレベル:1,推奨レベル:B).
CQ24. フレイルは糖尿病と関連するか?
・糖尿病はフレイル発症リスクを増加させるとともに,フレイルが糖尿病の発症リスクを増加させる(エビデンスレベル:E─1b).
・高血糖のみならず,糖尿病患者での HbA1c 低値はフレイル発症のリスクになる可能性がある(エビデンスレベル:E─1b).
CQ25. 血糖はフレイルのリスクを上昇させるか?
・低血糖は身体機能の低下を来すため,フレイルのリスクを上昇させる可能性がある(エビデンスレベル:E─2).
CQ26. 糖尿病にフレイルが合併すると予後に影響するか?
・フレイル糖尿病高齢者の予後は不良である(エビデンスレベル:E─1b).
CQ27. フレイルと COPD の関連は?
・COPD 患者におけるフレイルの頻度は,地域住民の 7%から呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)外来の 26%までであったが,Tilberg frailty indicators でみたフレイルの頻度の報告では 58%と高値であった.
・COPD 患者のフレイルは身体機能障害と関連し,新たな予後予測因子である(エビデンスレベル:E─1b).
CQ28. COPD の包括的呼吸リハビリテーションはフレイル COPD 患者のアウトカムを改善するか?
・包括的呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)プログラムを完遂できた COPD 患者には,フレイル改善効果がみられた(エビデンスレベル:E─1b,推奨レベル:B).
CQ29. 保存期慢性腎臓病(CKD)とフレイルとの関連は?
・保存期 CKD 患者におけるフレイルの頻度は 5.9~56%と一般集団より高率であり,フレイルは CKD の予後悪化に関連する(エビデンスレベル:E─1b). 14
CQ30. 透析患者においてフレイルは予後悪化と関連するか?
・透析患者におけるフレイルの頻度は 13.8~67.7%と一般集団,保存期 CKD 透析患者より高率であり,フレイルは透析患者の予後悪化に関連する(エビデンスレベル:E─1b).
CQ31. フレイルを有する骨粗鬆症患者の頻度は?
・フレイルと骨粗鬆症には密接な関連があり,フレイル高齢者では骨粗鬆症の有病率が高い(エビデンスレベル:E─1a).
CQ32. 骨粗鬆症治療は,フレイルな骨粗鬆症患者のアウトカムを改善するか?
・フレイル高齢者の骨粗鬆症には,薬物治療や運動療法が提案される(エビデンスレベル:1,推奨レベル:B).
CQ33. フレイルと認知機能低下との関連は?
・フレイルは認知機能障害を合併しやすく,横断調査ではフレイルの約 20~55%に認知機能障害を合併している(エビデンスレベル:E―2).
・縦断調査によれば,フレイル高齢者は認知機能が低下しやすく,認知症(特に血管性認知症)になりやすい.逆に,認知機能低下者はフレイルになりやすい(エビデンスレベル:E―1a).
・フレイルと認知機能障害を合併すると,手段的 ADL,基本的 ADL,身体機能が低下しやすく,死亡率が高くなる(エビデンスレベル:E―1b).
CQ34. フレイル認知機能障害に対する介入は認知機能の改善につながるか?
・フレイル高齢者の認知機能障害に対して,運動,栄養,認知訓練の効果が期待されるが,明確な結論は得られていない(エビデンスレベル:1+,推奨レベル:B).
・運動介入は,栄養,薬物,認知,社会的な介入と組み合わせることによって,フレイル高齢者の認知機能改善を図ることが期待できる(エビデンスレベル:1,推奨レベル:B).
・運動介入や栄養介入は一部の認知機能の改善や認知症を改善する可能性があるが,認知症発症予防効果については不明である(エビデンスレベル:1+,推奨レベル:B).
CQ35. 加齢性白内障はフレイル評価指標とその該当数と関連があるか?
・白内障の有無や程度がフレイルの程度と関連がある.
CQ36. 視機能障害を伴う眼疾患はフレイルに関連するアウトカムと関連があるか?
・視機能障害を伴う眼疾患は,ADL の低下,IADL の低下,転倒・骨折,認知機能障害,貧困,施設入所,入院などと関連し得る.
CQ37. ポリファーマシーはフレイルと関連するか?
・ポリファーマシーはフレイルの危険因子である(エビデンスレベル:E─1b).
・薬剤数 6 種類以上または 7 種類以上がフレイルのハイリスクである(エビデンスレベル: E─2).
CQ38. フレイルとの関連が指摘されている薬剤はあるか?
・抗うつ薬の使用はその種類・うつ症状の有無にかかわらず,フレイルのリスクとなる(エビデンスレベル:E─1b).
・抗コリン作用を有する薬剤やベンゾジアゼピン系薬,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬などは認知機能障害あるいは転倒・骨折との関連が報告されている.
・抗コリン作用を有する薬剤やベンゾジアゼピン系薬を含めた鎮静薬はプレフレイルと関連している可能性があり,これらの薬剤とフレイルそのものとの関連を示した直接的なエビデンスはないが,これらの薬剤は避けることが望ましい(エビデンスレベル E─1b,推奨レベル:B).
(sk)
こんな文章を読んでいたら、本当にフレイルになってしまう。