ゼンマイ式時計を作り始めて6年目を迎えます。 最近では原点に立ち返るため、 日本で時計づくりが始まった江戸時代の時計を解体し研究していますが「よくぞ、 ここまで丁寧に…」 と呆れるほど無駄が多い (笑) 。 しかし、 それは良い意味での無駄です。
時を刻むという機能をしっかりと満たした上で、 繊細な装飾が施され、 目に触れない内部の部品まで美しい。 そして、 修理をすることもきちんと考えられて設計されているのです。 先人達のモノづくりへの愛情と奥ゆかしさが伝わってきます。
生活が豊かになった現代では、 消費を喚起するため、 修理しないことを前提に、 「早く ・ 安く」をモットーに作られている製品がありますが、 それではさみしいと思います。
目覚まし時計に叩き起こされる私達の生活も、 時間に縛られ、結果ばかりが重視されるようになってきていると感じます。
スピードを重視することはビジネスにおいて重要ですが、 私はあえて逆行して、 もっと時間をかけて、 ワクワクするような無駄を追及することで、 製品の付加価値を高めていきたい。 それがモノづくりの素晴らしさでもあると思うのです。
ワクワクする無駄を追い求めて
by 成瀬拓郎
http://www.nagoya-cci.or.jp/koho/pdf/nagoya_0804_naruse.pdf