横井也有 4 Replies しわがよるほくろができる背がかがむあたまがはげる毛が白くなる 手はふるう足はよろつく歯はぬける耳は聞こえず目はうとくなる またしても同じ話に孫自慢達者自慢に古きしゃれいう くどくなる気短かになるぐちになる思いつくことみな古くなる 身にそうは頭巾えり巻きつえめがね湯婆温石にしびんまごの手 聞きたがる死にともながるさびしがるでしゃばりたがる世話やきたがる
shinichi Post author09/02/2019 at 12:32 am 甲子夜話 by 松浦静山 松浦静山は『甲子夜話』続編に次のような狂歌を引用した。自戒と自嘲をこめて「自ら恥じる所なり」と述べながら。 ・皺がよるホクロが出来る背がかがむ 頭は禿げる毛は白くなる ・手はふるう足はひょろつく歯は抜ける 耳は聞こえず目は疎くなる ・身にあうは頭巾襟巻杖めがね たんぽ温石しびん孫の手 ・くどくなる気短になる愚痴になる 思いつくこと皆古くなる ・聞きたがる死にともながる淋しがる 出しゃばりたがる世話焼きたがる ・又しても同じ話に孫ほめる 達者自慢に人をあなどる これらの狂歌の原作は、尾張藩士で俳文集「鶉衣』の著者として知られる横井也有(1702~83)である。 Reply ↓
shinichi Post author09/02/2019 at 12:40 am 俳句の森 by 竹内睦夫 http://www.geocities.jp/haikunomori/index.html 横井也有を読む http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu_top.html 也有とは? http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_who.html 也有の俳句 http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_haru.html 俳文「鶉衣」 http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz_me.html 也有情報室 http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_inf_me.html Reply ↓
shinichi Post author09/02/2019 at 9:20 am 横井也有は天明3年(1783)に 82歳で亡くなった。死後、その写本の一部を読んで感激した狂歌師大田蜀山人が出版したのが『鶉衣』。 奈良団賛 ならうちわのさん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz01.html 長短解 ちょうたんのかい http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz02.html 摺鉢伝 すりばちのでん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz03.html 餅辞 もちのじ http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz04.html 隅田川涼賦 すみだかはすずみのふ http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz05.html 謝無馳走辞 ぶちそうをしゃするじ http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz06.html 鍋蓋額賛 なべぶたがくのさん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz07.html 俳席之掟 はいせきのおきて http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz08.html 鼻箴 はなのしん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz09.html 手水鉢銘 ちょうずばちのめい http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz10.html 名徳利説 とくりになづくるのせつ http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz11.html 楽老記 らくろうのき http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz12.html 借物の弁 かりもののべん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz13.html 猫自画賛 ねこのじがさん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz14.html 断酒辞 だんしゅのじ http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz15.html 恋説 こいのせつ http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz16.html 妖物論 ばけもののろん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz17.html 知雨亭記 ちうていのき http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz18.html あてがき歌仙 あてがきかせん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz19.html 衆魚譜 しゆうぎよのふ http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz20.html 弔不幸文 ふかうをてうするぶん http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz21.html Reply ↓
shinichi Post author09/02/2019 at 9:40 am 横井也有「蘿葉集」抄 ____________________________________________ 春 柱にもまたるゝ花やはつ暦 鬼を山が笑ひかへすや明の春 君よりは身のため寒し若菜売 此村に一えだ咲きぬ梅の華 背戸までの野ごゝろつきぬ梅の花 梅がゝや耳かく猫の影ぼうし 花散て葉のなき梅の又寒し 傘にふり下駄に消けり春の雪 まだ去年の暦も棚に寒さ哉 珍しう蚤のくふ夜や春の雨 うぐひすを夜るにして聞朝寝哉 黄鳥や二声めには余所の藪 武者絵にはあしらひにくき柳哉 上へまだ延ぬでもなき柳かな 屋根ふきにたばねられたる柳哉 猿曳も月やほしがる戻り道 障子には夜明のいろや朧月 三日月のしばらくながら朧かな 鶏にかげろふもゆる垣根哉 出代の伊達やこゝろの浅黄うら 出がはりや行燈に残す針の跡 寺町や猫と涅槃の恋無常 花に啼絵になく鳥や涅槃像 青海苔にさく白魚のさかり哉 万歳の畑うつ頃や桃の花 桃のさく頃や湯婆にわすれ水 永ひ日を幕にたゝむやさくら狩 開帳の庭にほしがるさくらかな 蝶々や花盗人をつけてゆく うらみ寝の猫やおもひの煙出し をよぐ田も飛ぶ田も有て蛙哉 一夜寝た妻に尾やひく雉の声 笠着れば一重へだゝる雲雀哉 蓬莱に見るや浮世の慾ぞろへ 老の腰摘にもたゝく薺かな 公家の手に豆出かしたる子の日哉 こゝ迄の下駄の跡ありんめの花 矢場もまだ片肌寒し梅のはな 梅の散るあたりや炭の明俵 うぐひすや耳に千鳥の凍どけぬ 鶯や土へは下りぬ身だしなみ 鶯や名は雲雀より上に啼 枝はいと糸は枝なるやなぎ哉 池水に蛙の波やおぼろ月 翌日の空どちらへならむ朧月 菜の花や揚ゆく駕の片簾 売捨に出るやきのふの田螺取 出代や人浮雲の二日月 涅槃会やされども雁は生別れ 山寺の春や仏に水仙花 蛤の茶屋も吐べき潮干哉 名を呼べば口紅はげて桃の花 ひなの日や蔵から都遷しあり 一本にかたまる人やおそ桜 袷縫ふまどに盛やおそ桜 くさめして見失ふたる雲雀哉 骨折て落る時見る雲雀哉 二つ啼くひとつは見出すひばり哉 山吹やとへばこたへの比丘尼寺 実のために枝曲られて梨子の花 折る人に秋の欲なし梨子の花 香久山に赤ひもの干すつゝじ哉 躑躅さく谷やさくらのちり所 ゆく春や一寸先は木下やみ 行春や送る門には松もなし ____________________________________________ 夏 すがたみにうつる月日や更衣 夏たつや衣桁にかわる風の色 ほとゝぎす三日聞ねば初音哉 まつ恋に捨る夜明を郭公 ほとゝぎす仏師も耳を刻むとき 卯の花や手で追ふ程の蚊のゆふべ 竹の子や寝た鶯に名もたゞず 杣の手に明てゆく夜や木下やみ 延るほど鷺はみじかき青田哉 こき交るものなき夏の柳哉 隠居家にかくし子鳴るや紙幟 所化寮の窓に夜明の蚊やり哉 骨折をくべて木挽のかやりかな 貴ぶねへも火はいたゞかで飛螢 我やみへもどる夜明のほたる哉 飛ぶ螢いつの涼の蒲むしろ 夜があけて骨折見えず螢がり 青梅に匂ひもあらば五月やみ 人が門たゝけば逃るくゐな哉 村中にひよつと寺あり椶櫚の花 鮓売も人におさるゝ祭かな 草刈の手に残りけり祭笛 初蝉の耳まで来たる暑哉 井戸ほりの浮世へ出たる暑かな 子福者といわれて蚊やの暑かな 唐秬の中ゆく笠のあつさ哉 くらがりに座頭わすれてすゞみかな 糞とりが来て風よごす涼かな むかしむかし祖父も川へと涼哉 白雨や揚る大工にさす日影 昼がほやどちらの露も間に合ず ひる顔やかり橋残る砂河原 ゆふ顔や大工にわたす行水場 タがほや月の鏡もまたでさく 葛に汲水の行ゑや御禊川 芳野をも見ずにことしも袷かな 馬士に馬のみゝありほとゝぎす 聞かぬとし有も命ぞ蜀魂 いつも初音ましてはつ音の時鳥 みじか夜や蚤ほとゝぎす明のかね 短夜や棚に鼠の明のこり 蝶々も来て乳を吸ふや花御堂 我門へ尻の近よる田植かな 刈るときに産む腹もあり早苗取 小便はよその田へして早苗とり 筍や盗人に縄かけらるゝ 雪隠の小城を責る蚊遣り哉 もやすでも消すでもなふて蚊遣り哉 捨た身も喰せまいとてかやり哉 蚊はこちへはいる隣のかやり哉 憎ひ蚊と同じ盛のほたる哉 橋の下ちぎれて通る螢かな ふたつとも飛ぱず雨夜の螢かな 取らるゝも口ゆへならで螢かな 昼見てはきたなひ水に螢かな 手すさびの扇も芥子に嵐哉 最ひとつのつれ見付けり初茄子 夕暮の蟻握りこむ牡丹哉 胸をやむ人を似せてや百合の花 草刈にお手はと問はば金銀花 影法師を寺にも建る幟かな 幟とも竹のよしみや笹粽 言ひまけて一羽は立か行々子 さりながら人事いはず行々子 さみだれや入日いり日を見せながら 五月雨や背戸に盥の捨小ぶね 男より女いそがしさ月晴 傘にたゝみこみけり鍋牛 寝くらして鷺は染らぬ青田かな 箒木やまた蜘の巣に負て居る ゆふ顔や挑灯つるす薬師堂 昼寝した手に持て居る団かな 雪隠に去年ながらのうちはかな 此松も柳にしたき清水かな 土用干や袖から出たる巻鯣 物申の声にもの着るあつさ哉 傾城の汗の身をうる暑哉 牛も笛もなき草刈のあつさ哉 涼しさを祈り過てや羽ぬけ鳥 しからるる子の手に光る蛍かな ____________________________________________ 秋 寝過して大工来にけり今朝の秋 千葉どのゝ庭にもけさは一葉かな 馬はあれど牛や木幡の星迎 蓑むしも父よぶころや魂祭り 蚊のしらぬ客あはれ也魂まつり おくり火の跡は此世の蚊やり哉 長ひ夜を輪にして明すおどり哉 日ぐらしや木に啼むしはまだ暑し はたをりや娵の宵寝を謗る時 虫のねの掃れて遠し寺の庭 タぐれや蚊を聞かへて荻の風 鹿なけと戻るか奈良の晒売 蜘の囲のはしらによはき薄かな 晴てけさ空はよごれぬ野分哉 雁よりは哀も低しわたり鳥 鵙啼や夕日の残る杉の末 すり減らす秋や木賊に風の音 狩人にこそ角はあれ鹿の声 芋の葉や蓮かと問へばかぶり振る 井戸からもひとつ汲けりけふの月 美濃近江起てやかたるけふの月 鐘撞や我手におしむけふの月 芋むしに啼音もあらばけふの月 芋よりも名はさゝげにぞ十六夜 鮓うりを垣からまねく穂蓼哉 昼からの鍋にしかける夜寒哉 富士はたゞ袴に着たる錦かな 丸ふ咲て月に見せけりけふの菊 辻番も一もと菊のあるじかな もる軒に時雨もちかし後の月 菊畑にのこる星あり後の月 不破のあれ芭蕉に見るや後の月 上を見ぬ目にも欲あり菌狩 蓑虫の父よと呼ばかゝし哉 売家の直は下りけり蔦かづら ゆく秋や尻も結ばぬ糸すゝき 行秋の時雨そふなと急ぎけり 秋来ぬと聞や豆腐の磨の音 折る指もけふから秋ぞ百日紅 秋なれや木の間木の間の空の色 牛牽て恋草かりや天の川 うしや今宵天の河原の茶挽草 七夕や葛ふく風は夜明から 星の床まだ仕廻ずや明の雲 魂棚や不順も順に置直し 送り火やわかれた人に別れあり ゆふがほや隣から来て秋にさく 曲て寝る枕も痩て老の秋 覚書して捨られぬあふぎ哉 蕣の世にさえ紺の浅黄のと あさかほや団扇は椽に宵のまゝ 朝かほの垣や浴衣のほし忘れ 乱るゝは風の当字や蘭の花 鬼灯を妻にもちてや唐がらし 拍子ぬく雁や堅田を直通り 文にあまる言伝もあり雁のこゑ 鶏頭に牛の刀の野分かな 雲さはぎ米買ひさはぐ野分哉 鬼灯や覗て見れば門徒寺 掃溜のにしきや蓼の花ざかり むしの後人の機織る夜寒哉 桐の葉も掃くほど落て月夜哉 芋売は銭にしてから月見かな 姨捨や芋は親うるけふの月 十六夜や足して詠る星ひとつ いざよひの芋や十日の菊の顔 栗栖野に垣も謗らずきくの花 わたとりの笠や蜻蛉の一つづゝ そら鞘の闇残りけり後の月 蚊の声の誰尋ねてか秋の暮 盗人のとゞかぬ所熟柿かな 秋風のしまひは白き尾花哉 ゆく秋や取落したる月の欠 あきの別れ石ともならで女郎花 柿一つ落ちてつぶれて秋の暮 ____________________________________________ 冬 蜘の巣に禰宜がかゝるや神無月 寝覚れば月寝覚れは時雨哉 笛のねのいつからやみて冬の月 うどんやへ銭のふり込む時雨哉 木がらしや海へとらるゝ鐘の声 うえ下のさびしさになる落葉哉 老僧の仕事出来たる落葉かな 手折れて跡は冬木や帰り花 張物に蝿の小紋や小六月 去年より似合ふてつらき紙子哉 ひろふたを嗅げば坊主の頭巾かな 降ものはしれねど曇る寒かな 居風呂のあつうて入れぬ寒かな 引越た鍛冶やの跡の寒かな すみ売にそばえて猫のよごれけり あし跡を浪にとらるゝ千鳥かな 散ものも木の葉の後は千どり哉 娵(よめ)もはや世帯じみたり根深汁 女房に一夜ふられむ恨深汁 四五寸の錦は残る枯野かな 塩うりの霜こぽし行かれ野哉 隣から起て戻るや雪の竹 鐘つきのおこしてゆくや雪の竹 水仙やたけの子ほどは盗まれず 雪の橋雪から雪へかけにけり うづむとは火にさえ寒し夜の雪 鯨つく日や七浦にかえり花 瓢箪に頭巾は着せず鉢たゝき 明やすき水鶏も有を鉢敲 きかぬ匙杓子にかへて薬ぐひ 牛の背にあられ走るや年の市 実に泣傾城もありとしの暮 兎より人こそはしれ年の浪 川越しの銭にも成らぬ時雨哉 傘持て出たれば逢はぬしぐれ哉 相傘に片袖づゝをしぐれかな 一本は染る鞠場の時雨かな 二三枚絵馬見て晴るしぐれかな 鶯の其手はくわぬ小春かな 拍手もかれ行森や神無月 木がらしや風に有名の呼びじまい 林間に風呂たく迄の落葉哉 こちの木を隣でもはく落ば哉 太夫にもならぬ木どもは落葉かな 朝々の釣瓶に上がる落葉かな 木に置て見たより多き落葉哉 五六羽の鴉下り居る枯の哉 根深煮る色こそ見へね冬籠 茗荷畑ありしあたりか忘れ花 其寒さ煮て取かへせ大根引 霜を踏む世わたり辛し大根引 茶の花や是から寺の畑ざかひ 木守の柚に来て啼やみそさゞゐ さむしかれぬは鴛の中ばかり 釣針の智恵にかゝらぬ海鼠哉 一日の炭撫減らす火桶かな 似合ぬとむかしいはれし紙衣哉 寂しさを砧にきかで紙衣哉 夢よりは先へさめたる湯婆哉 鷹匠の五十越したる寒かな 朝めしに三度鼻かむさむさ哉 萩かれて雪隠見ゆる寒かな 邪魔が来て門敲きけり薬喰 飛鳥川けふもきのふの氷哉 雪の夜や鐘つく人もあれぱある 業平も何ぞと問はで千どり哉 化物の正体見たり枯尾花 ____________________________________________ Reply ↓
甲子夜話
by 松浦静山
松浦静山は『甲子夜話』続編に次のような狂歌を引用した。自戒と自嘲をこめて「自ら恥じる所なり」と述べながら。
・皺がよるホクロが出来る背がかがむ 頭は禿げる毛は白くなる
・手はふるう足はひょろつく歯は抜ける 耳は聞こえず目は疎くなる
・身にあうは頭巾襟巻杖めがね たんぽ温石しびん孫の手
・くどくなる気短になる愚痴になる 思いつくこと皆古くなる
・聞きたがる死にともながる淋しがる 出しゃばりたがる世話焼きたがる
・又しても同じ話に孫ほめる 達者自慢に人をあなどる
これらの狂歌の原作は、尾張藩士で俳文集「鶉衣』の著者として知られる横井也有(1702~83)である。
俳句の森
by 竹内睦夫
http://www.geocities.jp/haikunomori/index.html
横井也有を読む
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu_top.html
也有とは?
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_who.html
也有の俳句
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_haru.html
俳文「鶉衣」
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz_me.html
也有情報室
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_inf_me.html
横井也有は天明3年(1783)に 82歳で亡くなった。死後、その写本の一部を読んで感激した狂歌師大田蜀山人が出版したのが『鶉衣』。
奈良団賛 ならうちわのさん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz01.html
長短解 ちょうたんのかい
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz02.html
摺鉢伝 すりばちのでん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz03.html
餅辞 もちのじ
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz04.html
隅田川涼賦 すみだかはすずみのふ
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz05.html
謝無馳走辞 ぶちそうをしゃするじ
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz06.html
鍋蓋額賛 なべぶたがくのさん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz07.html
俳席之掟 はいせきのおきて
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz08.html
鼻箴 はなのしん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz09.html
手水鉢銘 ちょうずばちのめい
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz10.html
名徳利説 とくりになづくるのせつ
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz11.html
楽老記 らくろうのき
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz12.html
借物の弁 かりもののべん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz13.html
猫自画賛 ねこのじがさん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz14.html
断酒辞 だんしゅのじ
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz15.html
恋説 こいのせつ
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz16.html
妖物論 ばけもののろん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz17.html
知雨亭記 ちうていのき
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz18.html
あてがき歌仙 あてがきかせん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz19.html
衆魚譜 しゆうぎよのふ
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz20.html
弔不幸文 ふかうをてうするぶん
http://www.geocities.jp/haikunomori/yayu/y_uz21.html
横井也有「蘿葉集」抄
____________________________________________
春
柱にもまたるゝ花やはつ暦
鬼を山が笑ひかへすや明の春
君よりは身のため寒し若菜売
此村に一えだ咲きぬ梅の華
背戸までの野ごゝろつきぬ梅の花
梅がゝや耳かく猫の影ぼうし
花散て葉のなき梅の又寒し
傘にふり下駄に消けり春の雪
まだ去年の暦も棚に寒さ哉
珍しう蚤のくふ夜や春の雨
うぐひすを夜るにして聞朝寝哉
黄鳥や二声めには余所の藪
武者絵にはあしらひにくき柳哉
上へまだ延ぬでもなき柳かな
屋根ふきにたばねられたる柳哉
猿曳も月やほしがる戻り道
障子には夜明のいろや朧月
三日月のしばらくながら朧かな
鶏にかげろふもゆる垣根哉
出代の伊達やこゝろの浅黄うら
出がはりや行燈に残す針の跡
寺町や猫と涅槃の恋無常
花に啼絵になく鳥や涅槃像
青海苔にさく白魚のさかり哉
万歳の畑うつ頃や桃の花
桃のさく頃や湯婆にわすれ水
永ひ日を幕にたゝむやさくら狩
開帳の庭にほしがるさくらかな
蝶々や花盗人をつけてゆく
うらみ寝の猫やおもひの煙出し
をよぐ田も飛ぶ田も有て蛙哉
一夜寝た妻に尾やひく雉の声
笠着れば一重へだゝる雲雀哉
蓬莱に見るや浮世の慾ぞろへ
老の腰摘にもたゝく薺かな
公家の手に豆出かしたる子の日哉
こゝ迄の下駄の跡ありんめの花
矢場もまだ片肌寒し梅のはな
梅の散るあたりや炭の明俵
うぐひすや耳に千鳥の凍どけぬ
鶯や土へは下りぬ身だしなみ
鶯や名は雲雀より上に啼
枝はいと糸は枝なるやなぎ哉
池水に蛙の波やおぼろ月
翌日の空どちらへならむ朧月
菜の花や揚ゆく駕の片簾
売捨に出るやきのふの田螺取
出代や人浮雲の二日月
涅槃会やされども雁は生別れ
山寺の春や仏に水仙花
蛤の茶屋も吐べき潮干哉
名を呼べば口紅はげて桃の花
ひなの日や蔵から都遷しあり
一本にかたまる人やおそ桜
袷縫ふまどに盛やおそ桜
くさめして見失ふたる雲雀哉
骨折て落る時見る雲雀哉
二つ啼くひとつは見出すひばり哉
山吹やとへばこたへの比丘尼寺
実のために枝曲られて梨子の花
折る人に秋の欲なし梨子の花
香久山に赤ひもの干すつゝじ哉
躑躅さく谷やさくらのちり所
ゆく春や一寸先は木下やみ
行春や送る門には松もなし
____________________________________________
夏
すがたみにうつる月日や更衣
夏たつや衣桁にかわる風の色
ほとゝぎす三日聞ねば初音哉
まつ恋に捨る夜明を郭公
ほとゝぎす仏師も耳を刻むとき
卯の花や手で追ふ程の蚊のゆふべ
竹の子や寝た鶯に名もたゞず
杣の手に明てゆく夜や木下やみ
延るほど鷺はみじかき青田哉
こき交るものなき夏の柳哉
隠居家にかくし子鳴るや紙幟
所化寮の窓に夜明の蚊やり哉
骨折をくべて木挽のかやりかな
貴ぶねへも火はいたゞかで飛螢
我やみへもどる夜明のほたる哉
飛ぶ螢いつの涼の蒲むしろ
夜があけて骨折見えず螢がり
青梅に匂ひもあらば五月やみ
人が門たゝけば逃るくゐな哉
村中にひよつと寺あり椶櫚の花
鮓売も人におさるゝ祭かな
草刈の手に残りけり祭笛
初蝉の耳まで来たる暑哉
井戸ほりの浮世へ出たる暑かな
子福者といわれて蚊やの暑かな
唐秬の中ゆく笠のあつさ哉
くらがりに座頭わすれてすゞみかな
糞とりが来て風よごす涼かな
むかしむかし祖父も川へと涼哉
白雨や揚る大工にさす日影
昼がほやどちらの露も間に合ず
ひる顔やかり橋残る砂河原
ゆふ顔や大工にわたす行水場
タがほや月の鏡もまたでさく
葛に汲水の行ゑや御禊川
芳野をも見ずにことしも袷かな
馬士に馬のみゝありほとゝぎす
聞かぬとし有も命ぞ蜀魂
いつも初音ましてはつ音の時鳥
みじか夜や蚤ほとゝぎす明のかね
短夜や棚に鼠の明のこり
蝶々も来て乳を吸ふや花御堂
我門へ尻の近よる田植かな
刈るときに産む腹もあり早苗取
小便はよその田へして早苗とり
筍や盗人に縄かけらるゝ
雪隠の小城を責る蚊遣り哉
もやすでも消すでもなふて蚊遣り哉
捨た身も喰せまいとてかやり哉
蚊はこちへはいる隣のかやり哉
憎ひ蚊と同じ盛のほたる哉
橋の下ちぎれて通る螢かな
ふたつとも飛ぱず雨夜の螢かな
取らるゝも口ゆへならで螢かな
昼見てはきたなひ水に螢かな
手すさびの扇も芥子に嵐哉
最ひとつのつれ見付けり初茄子
夕暮の蟻握りこむ牡丹哉
胸をやむ人を似せてや百合の花
草刈にお手はと問はば金銀花
影法師を寺にも建る幟かな
幟とも竹のよしみや笹粽
言ひまけて一羽は立か行々子
さりながら人事いはず行々子
さみだれや入日いり日を見せながら
五月雨や背戸に盥の捨小ぶね
男より女いそがしさ月晴
傘にたゝみこみけり鍋牛
寝くらして鷺は染らぬ青田かな
箒木やまた蜘の巣に負て居る
ゆふ顔や挑灯つるす薬師堂
昼寝した手に持て居る団かな
雪隠に去年ながらのうちはかな
此松も柳にしたき清水かな
土用干や袖から出たる巻鯣
物申の声にもの着るあつさ哉
傾城の汗の身をうる暑哉
牛も笛もなき草刈のあつさ哉
涼しさを祈り過てや羽ぬけ鳥
しからるる子の手に光る蛍かな
____________________________________________
秋
寝過して大工来にけり今朝の秋
千葉どのゝ庭にもけさは一葉かな
馬はあれど牛や木幡の星迎
蓑むしも父よぶころや魂祭り
蚊のしらぬ客あはれ也魂まつり
おくり火の跡は此世の蚊やり哉
長ひ夜を輪にして明すおどり哉
日ぐらしや木に啼むしはまだ暑し
はたをりや娵の宵寝を謗る時
虫のねの掃れて遠し寺の庭
タぐれや蚊を聞かへて荻の風
鹿なけと戻るか奈良の晒売
蜘の囲のはしらによはき薄かな
晴てけさ空はよごれぬ野分哉
雁よりは哀も低しわたり鳥
鵙啼や夕日の残る杉の末
すり減らす秋や木賊に風の音
狩人にこそ角はあれ鹿の声
芋の葉や蓮かと問へばかぶり振る
井戸からもひとつ汲けりけふの月
美濃近江起てやかたるけふの月
鐘撞や我手におしむけふの月
芋むしに啼音もあらばけふの月
芋よりも名はさゝげにぞ十六夜
鮓うりを垣からまねく穂蓼哉
昼からの鍋にしかける夜寒哉
富士はたゞ袴に着たる錦かな
丸ふ咲て月に見せけりけふの菊
辻番も一もと菊のあるじかな
もる軒に時雨もちかし後の月
菊畑にのこる星あり後の月
不破のあれ芭蕉に見るや後の月
上を見ぬ目にも欲あり菌狩
蓑虫の父よと呼ばかゝし哉
売家の直は下りけり蔦かづら
ゆく秋や尻も結ばぬ糸すゝき
行秋の時雨そふなと急ぎけり
秋来ぬと聞や豆腐の磨の音
折る指もけふから秋ぞ百日紅
秋なれや木の間木の間の空の色
牛牽て恋草かりや天の川
うしや今宵天の河原の茶挽草
七夕や葛ふく風は夜明から
星の床まだ仕廻ずや明の雲
魂棚や不順も順に置直し
送り火やわかれた人に別れあり
ゆふがほや隣から来て秋にさく
曲て寝る枕も痩て老の秋
覚書して捨られぬあふぎ哉
蕣の世にさえ紺の浅黄のと
あさかほや団扇は椽に宵のまゝ
朝かほの垣や浴衣のほし忘れ
乱るゝは風の当字や蘭の花
鬼灯を妻にもちてや唐がらし
拍子ぬく雁や堅田を直通り
文にあまる言伝もあり雁のこゑ
鶏頭に牛の刀の野分かな
雲さはぎ米買ひさはぐ野分哉
鬼灯や覗て見れば門徒寺
掃溜のにしきや蓼の花ざかり
むしの後人の機織る夜寒哉
桐の葉も掃くほど落て月夜哉
芋売は銭にしてから月見かな
姨捨や芋は親うるけふの月
十六夜や足して詠る星ひとつ
いざよひの芋や十日の菊の顔
栗栖野に垣も謗らずきくの花
わたとりの笠や蜻蛉の一つづゝ
そら鞘の闇残りけり後の月
蚊の声の誰尋ねてか秋の暮
盗人のとゞかぬ所熟柿かな
秋風のしまひは白き尾花哉
ゆく秋や取落したる月の欠
あきの別れ石ともならで女郎花
柿一つ落ちてつぶれて秋の暮
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冬
蜘の巣に禰宜がかゝるや神無月
寝覚れば月寝覚れは時雨哉
笛のねのいつからやみて冬の月
うどんやへ銭のふり込む時雨哉
木がらしや海へとらるゝ鐘の声
うえ下のさびしさになる落葉哉
老僧の仕事出来たる落葉かな
手折れて跡は冬木や帰り花
張物に蝿の小紋や小六月
去年より似合ふてつらき紙子哉
ひろふたを嗅げば坊主の頭巾かな
降ものはしれねど曇る寒かな
居風呂のあつうて入れぬ寒かな
引越た鍛冶やの跡の寒かな
すみ売にそばえて猫のよごれけり
あし跡を浪にとらるゝ千鳥かな
散ものも木の葉の後は千どり哉
娵(よめ)もはや世帯じみたり根深汁
女房に一夜ふられむ恨深汁
四五寸の錦は残る枯野かな
塩うりの霜こぽし行かれ野哉
隣から起て戻るや雪の竹
鐘つきのおこしてゆくや雪の竹
水仙やたけの子ほどは盗まれず
雪の橋雪から雪へかけにけり
うづむとは火にさえ寒し夜の雪
鯨つく日や七浦にかえり花
瓢箪に頭巾は着せず鉢たゝき
明やすき水鶏も有を鉢敲
きかぬ匙杓子にかへて薬ぐひ
牛の背にあられ走るや年の市
実に泣傾城もありとしの暮
兎より人こそはしれ年の浪
川越しの銭にも成らぬ時雨哉
傘持て出たれば逢はぬしぐれ哉
相傘に片袖づゝをしぐれかな
一本は染る鞠場の時雨かな
二三枚絵馬見て晴るしぐれかな
鶯の其手はくわぬ小春かな
拍手もかれ行森や神無月
木がらしや風に有名の呼びじまい
林間に風呂たく迄の落葉哉
こちの木を隣でもはく落ば哉
太夫にもならぬ木どもは落葉かな
朝々の釣瓶に上がる落葉かな
木に置て見たより多き落葉哉
五六羽の鴉下り居る枯の哉
根深煮る色こそ見へね冬籠
茗荷畑ありしあたりか忘れ花
其寒さ煮て取かへせ大根引
霜を踏む世わたり辛し大根引
茶の花や是から寺の畑ざかひ
木守の柚に来て啼やみそさゞゐ
さむしかれぬは鴛の中ばかり
釣針の智恵にかゝらぬ海鼠哉
一日の炭撫減らす火桶かな
似合ぬとむかしいはれし紙衣哉
寂しさを砧にきかで紙衣哉
夢よりは先へさめたる湯婆哉
鷹匠の五十越したる寒かな
朝めしに三度鼻かむさむさ哉
萩かれて雪隠見ゆる寒かな
邪魔が来て門敲きけり薬喰
飛鳥川けふもきのふの氷哉
雪の夜や鐘つく人もあれぱある
業平も何ぞと問はで千どり哉
化物の正体見たり枯尾花
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