チューリヒ大学のシュテファニー・ヴァルター教授(国際政治・政治経済学)は、「スイスが以前から中立的な立場にないのは明白だ」と言う。「例えば冷戦時代、スイスは暗黙的ではあるが明らかに西側についていた。そして人権に関しても特定の立場をとってきた」。ウクライナでの戦争に関しては、スイスはロシアによるウクライナへの攻撃は国際法違反だとして直ちに非難した。
ここで疑問となるのが、そもそも中立とは何かという点だ。1815年のウィーン会議でスイスに永世中立権が付与された際、戦勝国はスイスの領土を戦場にしない代わりに、スイスに紛争参加と傭兵の提供を禁止する取り決めを行った。
この原則は現在もほとんど変わっていない。戦争への参加は今でも直接的か間接的かを問わず、中立法の下で禁止されている。中立国は紛争当事国を平等に扱わなければならない。つまり、一方の勢力に領土上空の飛行を許可したり、(たとえ第三国を介したとしても)武器を供給したりしてはならず、一方の勢力だけに便宜を図ってはならない。
例えば、スイスはここ数カ月、北大西洋条約機構(NATO)加盟国がウクライナに武器を供給しているとして、NATO加盟国に対しスイス領土上空の飛行を禁止している。スイスはまた、ドイツとデンマークに対し、両国がスイスで購入した戦車や弾薬をウクライナに渡すことを拒否した。こうした厳格な姿勢を取るスイスに対し、態度の軟化を求める国際圧力が強まっている。
中立は法的な概念だけでなく、スイスのイメージにも関わっている。中立はスイスのトレードマークであり、軽率に危険にさらすことはできない。スイスは自発的で柔軟な「中立政策」をとることで、スイスが戦争には関わらないことを他国に理解してもらおうと努めている。
永世中立国 スイス
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