戦災孤児にいったいなんの罪があるのでしょう。組み立てた骨の上に、ただ皮というものをたった一枚不細工に張り付けたような顔をして、息をしながら眠っている、駅の片隅のあの子どもたちの、しかもたくさんの姿は、あれはいったいなんの報いなのでございましょう。
いちばん美しいはずの子どもたちが、盗むことを覚え、騙すことを覚え、心を折られ、それでも大人たちからは「敗戦したのだから仕方がない」とごく当然のように放り出され、あまつさえ迫害さえ加えられて、だんだんと魂をなくしてゆきつつあるのは、なんとしたことでございましょう。
親たちは自分が生んだ子どもだけが子どもだと思い、先生たちは学校に来る子どもだけが子どもだと思い、そのようなことがあまりに多いのではないでしょうか。
タデ子の記
by 石牟礼道子
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日本人は何をめざしてきたのか 知の巨人たち
第6回 石牟礼道子
NHK
YouTube (13:38 ~)
https://youtu.be/UA35VnzZ-3Y
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石牟礼道子
by 渡辺京二
そして敗戦。その直後、彼女は水俣へ帰る列車の中で、戦災孤児の少女と出会い、自宅へ連れて帰ってひと月余り世話をした。翌年、『タデ子の記』と題してその少女のことを書く。長く筐底に秘められたこの作品こそ作家道子の第一作である。
http://kyouiku.higo.ed.jp/page2022/002/005/page2332.html
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石牟礼道子が19歳の時に書いた『タデ子の記』
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石牟礼道子全集 不知火 第1巻
タデ子の記 (p. 12)