日本ハムの栗山英樹監督は中学のとき、野球選手に「なりたい」と思ったそうだ。野球選手に「なる」と言い切る自信や決意はまだなかった。あくまで願望を込めた「なりたい」だった。
「君はどうだったか」。栗山監督は二人の選手に聞いたことがある。一人の選手はこう言った。「中学時代からプロになると信じていた」。中田翔選手。中学でプロ入りを確信していた。栗山さんとはだいぶちがう。
もう一人の選手の言葉にはそれ以上の確信があった。「高校のときには世界一の選手になると思っていた」-。大リーグ挑戦を正式に表明した大谷翔平選手である。
筆洗
東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017111202000138.html
日本ハムの栗山英樹監督は中学のとき、野球選手に「なりたい」と思ったそうだ。野球選手に「なる」と言い切る自信や決意はまだなかった。あくまで願望を込めた「なりたい」だった▼「君はどうだったか」。栗山監督は二人の選手に聞いたことがある。一人の選手はこう言った。「中学時代からプロになると信じていた」。中田翔選手。中学でプロ入りを確信していた。栗山さんとはだいぶちがう▼もう一人の選手の言葉にはそれ以上の確信があった。「高校のときには世界一の選手になると思っていた」-。大リーグ挑戦を正式に表明した大谷翔平選手である。記者会見でも、「世界一の選手になりたい」と語っていた。高校時代からの確信を実現させる旅にいよいよ出発するのか▼寂しいがそれを上回る期待と夢がある。そしてこちらにも確信があるのだ。投打いずれの才にも恵まれた現代野球の「革命児」は大リーグでも旋風を巻き起こすだろう。世界一の選手になれると。行ってこい▼幼き日、誰もが何かに「なりたい」「なる」の夢を描く。大人になるとは現実と折り合いをつけ、その「なりたい」を忘れる過程、とはややふてくされた言いぐさか▼「なりたい」を追い続ける二十三歳の二刀流がぎらりとまぶしい。すまないのだが、子どもの「なりたい」と大人の「なりたかった」を君の右腕にのっけさせてもらう。