調査(「世界価値観調査」の日本の調査)によると、2010年に実施した前回調査から9年間で大きく変化したのが「仕事」や「働く」ことの意識。「働くことがあまり大切でなくなる」ことを「良いこと」「気にしない」とする答えが倍増(合計値で2010年21.1%→2019年42.6%)し、仕事や働くことに対する日本人の意識が顕著に変化した。これと連動するように「人生を自由に動かせる」と感じる人も前回調査に比べて増加(2010年50.0%→2019年58.4%)し、特に若年層ほど高い自由度を感じている傾向が顕著となった。
ジェンダー意識についても「男性の方が経営幹部や政治の指導者として適している」という項目について大半が「反対」と回答(経営幹部2010年42.7%→2019年63.6%、政治の指導者2010年37.3%→2019年54.4%)。これも調査開始以降初めての結果だった。
仕事、人生、多様性、政治 日本人の価値観は9年前とどう変化したか
同志社大学
https://univ-journal.jp/31393/
2020年3月26日、同志社大学のメディア・社会心理学研究分野の池田研究室と株式会社電通グループの社内組織である電通総研は、「世界価値観調査」※の日本調査の結果を発表した。
「世界価値観調査」※は、世界のおよそ100カ国・地域の研究機関が参加し実施している国際プロジェクトで、1981年から行われている。今回、2019年9月に実施した日本での調査が完了したため、先行して発表された。なお、本調査実施時点では新型コロナウイルスの発生は認識されていなかったため、その影響は反映されていない。
調査によると、2010年に実施した前回調査から9年間で大きく変化したのが「仕事」や「働く」ことの意識。「働くことがあまり大切でなくなる」ことを「良いこと」「気にしない」とする答えが倍増(合計値で2010年21.1%→2019年42.6%)し、仕事や働くことに対する日本人の意識が顕著に変化した。これと連動するように「人生を自由に動かせる」と感じる人も前回調査に比べて増加(2010年50.0%→2019年58.4%)し、特に若年層ほど高い自由度を感じている傾向が顕著となった。
また、他者に対しても多様性を尊重する方向に大きく変化しており、例えば同性愛について「正しい(認められる)」という回答が増加(2010年33.2%→2019年54.4%)し、調査開始から初めて半数を超えた。ジェンダー意識についても「男性の方が経営幹部や政治の指導者として適している」という項目について大半が「反対」と回答(経営幹部2010年42.7%→2019年63.6%、政治の指導者2010年37.3%→2019年54.4%)。これも調査開始以降初めての結果だった。
21世紀の日本及び日本人はどうあるべきかを尋ねたところ、「日本文化や伝統的価値観を大切にすべき」との回答が91.1%、「アジアの国々との交流を深め、頼りがいのある国へ」「日本のやり方の良さを世界に広める」「外国人に理解されるように変化」への「そう思う」の回答が過半数を占めた。
生活における「政治」の重要度(「重要」2010年66.1%→2019年64.3%)や政治的関心度(「関心あり」2010年65.5%→2019年59.8%)は、9年前と比較すると停滞もしくは減少しており、特に若年層になるほど政治の関心度が低い傾向だった。
※同一の調査票に基づき、各国・地域ごとに全国の18歳以上男女1,000サンプル程度の回収を基本とした個人対象の意識調査で、対象分野は政治観、経済観、労働観、教育観、宗教観、家族観など約90問190項目という広範囲に及ぶ。
電通総研と同志社大学、「世界価値観調査2019」日本結果を発表
https://institute.dentsu.com/articles/1037/
株式会社 電通グループ(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:山本 敏博)の社内組織である電通総研(所長:谷 尚樹)と学校法人同志社 同志社大学(所在地:京都府京都市、学長:松岡 敬)のメディア・社会心理学研究分野の池田研究室※(教授:池田 謙一)は、「世界価値観調査」の日本調査(2019年9月実査)に参画し、人々の意識の変化について時系列比較などの分析を行った結果を発表しました。「世界価値観調査」は1981年に開始され、現在およそ100カ国・地域の研究機関が参加している国際的な調査です。今回の諸外国・地域における調査は未完了ですが、日本における調査は昨年完了したため、その結果を先行して発表するものです。結果の概要は以下のとおりです。
注:本調査実施時点では新型コロナウイルスの発生は認識されていなかったため、その影響は反映されておりません。
調査結果の概要
調査結果についてのまとめ
今回の調査結果からは、人々の意識は大きく変化しているにも関わらず、それが必ずしも社会変革や政治への関心に結びついていないことが浮き彫りとなりました。
「人」の意識や行動の変容は、人々が形成する「社会」の質(クオリティ・オブ・ソサエティ)に大きな影響を与えると思われます。日本のみならず世界が直面する社会課題は山積しており、電通総研と同志社大学 池田研究室は今後も、人の意識や行動の変容を把握しながら、望ましい将来像やその実現のシナリオを探索する「クオリティ・オブ・ソサエティ」の活動を推進してまいります。
クオリティ・オブ・ソサエティについて
https://institute.dentsu.com/about/
調査結果の主な考察
前回調査の2010年からの9年間で大きく変化したのが「仕事」や「働く」ことの意識であり、「働くことがあまり大切でなくなる」ことを「良いこと」「気にしない」とする答えが倍増しました。それと連動するように「人生を自由に動かせる」と感じる人も増え、若年層ほどその比率が高くなりました。また、ダイバーシティを尊重する意識については、同性愛やジェンダー意識などの回答から、多様性が尊重される方向に大きく変化したことがわかりました。
他の意識が変化する中でも、初回調査から高水準を維持する幸福度と生活満足度は、今回も同水準で、前回調査から微増となりました。一方、生活レベルの意識については「中」の比率は変わっていないものの、「上」と「下」の双方が少しずつ増加してきています。
「日本文化や伝統的価値観」への意識は引き続き高く、自国の価値観を大切にしながら世界との協調・歩み寄りを望む意識が明らかになりました。「政治への関心」の高まりは見られませんでした。