認められたいとか、好かれたいとか、愛されたいとか思うのは、変なことじゃない。嫌われたくないというのも、不安になるのも、自然のことじゃないかしら。
うん。僕にはそういうところがあるかもしれない。
いい男だと思われたい、いい女だと思われたい、いい子だと思われたい、いい親だと思われたい、いい部下だと思われたい、いい上司だと思われたい、いい友達だと思われたい、いい同僚だと思われたい…
それは、いけないことだろうか?
いけなくはないけど、でも、そんなことばかり考えていたら、なんにもできなくなってしまう。
なんにもできない?
子どものために自分のしたいこともしないで生きる。子どもが大きくなって、またその子どものために生きる。そんなことが繰り返されて、いったい誰が自分のために生きるのかって。よく、そう思うの。
人のために生きるのって、大切なことだと思うけど。
余計なことは考えないでいいんじゃない?
余計なこと?
まずは、自分のために生きる。自分を大事にする。自分の気持ちに素直になる。そうすれば、不安はなくなるわ。
そういうものかな?
ええ。人は必ず死ぬでしょ。生きているあいだは、認められたいとか、愛されたいとか、いろいろなことを思うけれど、そしていろいろなことをするけれど、最後にはみんな死ぬ。だから、なにをしてもいいの。どうせ死ぬのだから。
どうせ死ぬ?
違う?
なにをしてもいい?
そう。好きな人には好きだって言えばいい。好きな人に思いが通じなかったら、泣けばいいじゃない。好き合った人の気持ちが変わったら、悲しめばいい。それでいいじゃないの?
それでいい?
ええ。いいこともあれば、悪いこともある。それでいいじゃない?
(sk)
第124作
Can’t do anything
Huacachina
https://kushima38.kagoyacloud.com/?p=40602
と
Luc Manago
https://kushima38.kagoyacloud.com/?p=27337
から何らかの刺激を受けて
好きな人と一緒にいるのって、いいよね。
ええ、確かに。好きな人と一緒にいると、心地いいわね。うん、そう。いい夢を見ているのと同じ。喜びでいっぱいになったり、嬉しかったり。
えっ? 一緒にいて、どきどきとかないの?
うーん、どちらかというと、もっと静かな感じかな。心が安らぐみたいな。
それって、その人のことが好きだから?
そうよ。そうに、決まってるじゃない。
本当にその人を好きだから? その人を好きな自分がいいって、そういうことなんじゃないの?
なに? なにが言いたいの?
だから、愛している自分っていうのが嬉しいだけじゃないの?
愛しているのがうれしいだけですって? ずいぶん意地悪な言い方をするのね。
意地悪なんかじゃない。自分で納得してやっていけるのは、結局は自分のなかの愛だけなんじゃないかって。自分のなかの愛ならば、信じられるんじゃないかって。そんなふうに思ったものだから……
愛がどうとかって、そんな抽象的なことはどうでもいいの。私はあなたが好き。
えっ?
だから、あなたといると心地いいって、それだけ。
えっ?
なによ?
僕が好き? 僕といると心地いい?
そう。
そうなんだ。
そうなんだって、なに、その言い方。
僕はてっきり片思いかなって。いや、片思いだって、思っていたから。
いやなの?
いやだなんて、いやなわけ、ないじゃない。ただ……
ただ?
ただ、なんか変だなって。結局は自分のなかの愛だって考えていたのに、好きだって言われたら嬉しくて。
嬉しくて? それで?
嬉しくて、自分のなかの愛なんて、どうでもよくなっちゃった。
言っていることが、なんか変ね。
変?
ええ、なんか変。
そうかなあ?
だって、自分のなかの愛なら信じられるって、言い換えれば他人の愛は信じられないってことでしょ?
うん、まあ。
それ、私の愛も信じられないって、そういうこと?
あの、こんなこと、言ってもわかってもらえないかもしれないけれど、僕は自分がこわいんだ。
自分がこわい?
自分の感情がこわい。愛もこわい。
愛がこわいって、どういうこと?
うまく言えないけど、たぶん、愛がなくなるのがこわいんだと思う。
愛がなくなるのがこわいの?
好きになると、その人に好かれたいと思う。そこまではいいんだ。でも、好きだ好きだって思っているうちに、その人も僕を好きになったりして、ふたりが近づいたりなんていうことになると、もうだめなんだ。
なにがだめなの?
不安になって、不安に耐えられなくなって、自分が自分でなくなって…
なんでそんなことを言うの?
だって…
だって?
自分のすべてを出してしまったら、きっときみは僕を嫌うから。
どうして? もっと好きになるかもしれないじゃない。
いや、だって僕だよ。この僕のことを、みんな知ってしまったら…
あら、もっと知りたいと思うけど。
僕の嫌なところも?
考えすぎなんじゃない?
もうすでに、面倒くさいやつだって思ってるでしょ? わずらわしいって…
いいえ、そんなこと思わないわ。認められたいとか、好かれたいとか、愛されたいとか思うのは、変なことじゃない。嫌われたくないというのも、不安になるのも、自然のことじゃないかしら。
うん。僕にはそういうところがあるかもしれない。
いい男だと思われたい、いい女だと思われたい、いい子だと思われたい、いい親だと思われたい、いい部下だと思われたい、いい上司だと思われたい、いい友達だと思われたい、いい同僚だと思われたい…
それは、いけないことだろうか?
いけなくはないけど、でも、そんなことばかり考えていたら、なにもできなくなってしまう。
なにもできない?
子どものために自分のしたいこともしないで生きる。子どもが大きくなって、またその子どものために生きる。そんなことが繰り返されて、いったい誰が自分のために生きるのかって。よく、そう思うの。
人のために生きるのって、大切なことだと思うけど。
余計なことは考えないでいいんじゃない?
余計なこと?
まずは、自分のために生きる。自分を大事にする。自分の気持ちに素直になる。そうすれば、不安はなくなるわ。
そういうものかな?
ええ。人は必ず死ぬでしょ。生きているあいだは、認められたいとか、愛されたいとか、いろいろなことを思うけれど、そしていろいろなことをするけれど、最後にはみんな死ぬ。だから、なにをしてもいいの。どうせ死ぬのだから。
どうせ死ぬ?
違う?
なにをしてもいい?
そう。好きな人には好きだって言えばいい。好きな人に思いが通じなかったら、泣けばいいじゃない。好き合った人の気持ちが変わったら、悲しめばいい。それでいいじゃないの?
それでいい?
ええ。いいこともあれば、悪いこともある。それでいいじゃない?
うーん。