中島繁樹

(暴力団の抗争など、物騒な事件のニュースがときどき伝えられる福岡県。
ネット上では、「修羅の国・福岡」と呼ばれたりすることもある。)

長年にわたって、福岡県内の暴力団の動きを見てきた弁護士としては、ついにこのようなネーミングが広まるようになったかと同感する気持ちと、そこまでメチャクチャでもあるまいにと反発する気持ちとがあります。
言うまでもないのですが、このような書き込みの削除を求めることはできないのです。削除してくれとネットに書き込むことはもちろん自由にできますが、そのサイトの運営者に対して削除を求めても何の対応もしてもらえないという結果になることも明らかです。裁判所に対して削除を求める訴えを起こすという手段がないわけではないですが、勝算はありません。もちろん、慰謝料の支払いを求めることもできません。

One thought on “中島繁樹

  1. shinichi Post author

    ネットで流行る「修羅の国・福岡」の書き込み 「福岡県民」は削除を要求できるか?

    弁護士ドットコム

    http://www.bengo4.com/topics/317/

    暴力団の抗争など、物騒な事件のニュースがときどき伝えられる福岡県。ネット上では、そんな福岡県について、虚実ないまぜの情報で盛り上がることがある。たとえば、漫画『北斗の拳』で描かれる荒廃した世界にたとえ、「修羅の国・福岡」と呼ばれたりすることもある。

    こうした書き込みに対して、地元の人の中には「報道された一部の事件で騒がれて、福岡県全域が悪いところのように思われている」と不快に感じている人もいるようだ。冗談半分とは言え、たしかに生まれ故郷を茶化されているわけだから、楽しい気分になれない人がいても当然かもしれない。

    それでは、「修羅の国」との書き込みを不快に思った地元住民たちは、掲示板やまとめサイトに対して書き込みの削除を請求することはできるのだろうか。あるいは、そう書き込んだ人に対して慰謝料を求めることはできるのだろうか。福岡県で活動する中島繁樹弁護士に聞いた。

    ●「修羅の国・福岡」との書き込みの削除を求めることはできない

    「長年にわたって、福岡県内の暴力団の動きを見てきた弁護士としては、ついにこのようなネーミングが広まるようになったかと同感する気持ちと、そこまでメチャクチャでもあるまいにと反発する気持ちとがあります」

    中島弁護士はこのように率直な心情を明かす。そのうえで、ネット上の『修羅の国・福岡』という書き込みの削除を求めることができるかについて、次のように説明する。

    「言うまでもないのですが、このような書き込みの削除を求めることはできないのです。削除してくれとネットに書き込むことはもちろん自由にできますが、そのサイトの運営者に対して削除を求めても何の対応もしてもらえないという結果になることも明らかです。

    裁判所に対して削除を求める訴えを起こすという手段がないわけではないですが、勝算はありません。もちろん、慰謝料の支払いを求めることもできません」

    中島弁護士によると、過去の裁判例には次のようなものがあるという。

    「およそ名誉毀損罪(刑法230条)または侮辱罪(刑法231条)は、ある特定した人または人格を有する団体に対して、その名誉を毀損しまたは侮辱することによって成立する。すなわち、その被害者は特定していることを要し、単に東京市民または九州人というような漠然とした表示によって本罪が成立するものではない」

    ●「福岡県民の一人として、そんなネーミングはお断りしたい」

    このように、「修羅の国・福岡」という書き込みだけでは、削除請求は難しく、被害者を特定できないので刑事事件としても成立しにくいということになりそうだ。だが一方で、中島弁護士は福岡県出身者として、「やはり不快だ」と話す。

    「私は福岡県で生まれて、福岡県で育ち、福岡県で弁護士を開業して36年になります。よりによって、わが故郷福岡が、『修羅の国』などという大げさな呼び方をされなければならない正当な理由は、あるはずがありません。

    ひとつの県に5つもの大暴力団があって、それが現に殺し合いを数年にわたって続けているからといって、普通の福岡県民の日常の生活に特別の不安があるわけではありません。福岡県全域が地獄みたいなイメージは、県民の一人として、不愉快です。そんなネーミングはお断りしたいと思います」

    ネット上ではほかにも、群馬県を「未開の地・グンマー」と呼ぶ流行があり、これを聞いた大澤正明群馬県知事が「未開の地ならこれから発展できる県だ」と切り返したというが、故郷をネタにされて本心から気分の良い人は少ないだろうから、冗談もほどほどに、ということかもしれない。

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