美細津仁志

PK2013050502100047_size0それはもう悲しそうな表情でした」。上毛電鉄で運転士を務めて十八年になる南雲洋和さんには忘れられない光景がある。
二〇一〇年春。南雲さんがワンマン列車を運転していると、東武鉄道の東京方面に接続する乗換駅「赤城駅」で、若い男女の中国人旅行客が乗り込んできた。間もなく「富士山下駅」に到着。下車する二人の切符を回収すると、片言の日本語で尋ねられた。「富士山はどこですか」。驚いた南雲さんは静岡、山梨両県にまたがる富士山の位置を説明。二人は落ち込んだ様子で折り返しの電車に乗り換え、赤城駅で降りていったという。
上毛電鉄によると、この数年、運転士が把握する限りで、欧米人やアジア人に同様の間違いが一年に少なくとも一件は起きている。富士山下駅前のレストラン「ていしゃば」にも三年ほど前、富士山が見えると思い込んだ中国人の女性観光客が東京方面から訪ねてきたという。
誤乗車の原因は、駅名の紛らわしさにあるようだ。「富士山」を駅名に使った鉄道駅は、富士山に一番近い駅として富士吉田駅から改称した富士急行「富士山駅」(山梨県)と、「富士山下駅」の二つしかなく、ともに富士山の最寄り駅をイメージさせる。

One thought on “美細津仁志

  1. shinichi Post author

    群馬にフジヤマ? 外国人、富士山麓とカン違い

    東京新聞

    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013050502000114.html

     国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産への正式登録が確実となった富士山。今後、さらなる外国人旅行客の増加が予想されるが、富士山を一目見ようと、誤って群馬県桐生市を訪れてしまう外国人が散見される。同市相生町にある上毛電鉄「富士山下(ふじやました)駅」を、富士山(ふじさん)の麓の駅と勘違いするようだ。 (美細津仁志)

     「それはもう悲しそうな表情でした」。上毛電鉄で運転士を務めて十八年になる南雲洋和さん(38)には忘れられない光景がある。

     二〇一〇年春。南雲さんがワンマン列車を運転していると、東武鉄道の東京方面に接続する乗換駅「赤城駅」(みどり市)で、若い男女の中国人旅行客が乗り込んできた。間もなく富士山下駅に到着。下車する二人の切符を回収すると、片言の日本語で尋ねられた。「富士山はどこですか」。驚いた南雲さんは静岡、山梨両県にまたがる富士山の位置を説明。二人は落ち込んだ様子で折り返しの電車に乗り換え、赤城駅で降りていったという。

     上毛電鉄によると、この数年、運転士が把握する限りで、欧米人やアジア人に同様の間違いが一年に少なくとも一件は起きている。富士山下駅前のレストラン「ていしゃば」にも三年ほど前、富士山が見えると思い込んだ中国人の女性観光客が東京方面から訪ねてきたという。

     誤乗車の原因は、駅名の紛らわしさにあるようだ。「富士山」を駅名に使った鉄道駅は、富士山に一番近い駅として富士吉田駅から改称した富士急行「富士山駅」(山梨県)と、富士山下駅の二つしかなく、ともに富士山の最寄り駅をイメージさせる。南雲さんは「富士山(ふじさん)をフジヤマと呼ぶ外国人が多いのも誤乗車の原因では」と指摘する。

     読み方は異なるとはいえ、富士山との縁は深い。駅のすぐ北側に駅名の由来となった「富士山(ふじやま)」がある。高さ約四十メートルのこんもりした緑の山で、山頂には富士山信仰を伝える浅間(せんげん)神社がある。江戸時代には富士講の住民らが富士山に見立てて登山した。今でも同神社は毎年七月の第一日曜に山開き神事が開かれるなど、地元住民に大切にされている。

     上毛電鉄は今後、外国人の誤乗車防止の検討を始めるといい、一方で世界遺産と富士山下駅を絡めたPRも始めたい考えだ。

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