田端信太郎

Tabata紙の本を出してみて、メディアとしての本のすごさに気づかされました。「MEDIA MAKERS」はもともと、宣伝会議が運営するサイト「Advertimes」での連載を加筆修正したものです。実を言えば、内容の8割はWeb上にすでに載っています。
ですが、本が出てから「おもしろい」と数十冊まとめ買いして社員に読ませる経営者や企業幹部の方々が現れました。本書を語る講演を依頼してくる方々も結構な数でてきました。
紙の本のよさとは何でしょう。一つには直しが効かないという一種の不便さが、逆に強みになってはいないでしょうか。直せないからデジタルの何倍も推敲を重ねるといった面もあるでしょう。実際、私も何十回も読み返して練り直しました。
Web上ではバラバラだった素材が、整理された形で通して読んでいただけた。それも、本のよさだったのかと思います。

One thought on “田端信太郎

  1. shinichi Post author

    『MEDIA MAKERS』田端信太郎氏

    マネー著者行間を語る

    http://www.nikkei.com/money/features/31.aspx?g=DGXNMSFK06026_06032013000000

     紙の本を出してみて、メディア(媒体)としての本のすごさに気づかされました。「MEDIA MAKERS(メディアメーカーズ)」はもともと、宣伝会議が運営するサイト「Advertimes(アドバタイムズ、通称アドタイ)」での連載を加筆修正したものです。実を言えば、内容の8割はWeb上にすでに載っています。

     ですが、本が出てから「おもしろい」と数十冊まとめ買いして社員に読ませる経営者や企業幹部の方々が現れました。本書を語る講演を依頼してくる方々も結構な数でてきました。

     紙の本のよさとは何でしょう。一つには直しが効かないという一種の不便さが、逆に強みになってはいないでしょうか。直せないからデジタルの何倍も推敲を重ねるといった面もあるでしょう。実際、私も何十回も読み返して練り直しました。

     Web上ではバラバラだった素材が、整理された形で通して読んでいただけた。それも、本のよさだったのかと思います。

     本のなかでは、いろんな切り口を示したつもりですが、たとえば、メディアを3つの座標軸で分析した箇所があります。フローとストック、参加性と権威性、リニアとノンリニアです。

     リニアとは映画のように頭から最後まで見てもらえることを想定しているもので、その反対がノンリニアです。3つの軸はどれも、抽象的でしょう。主観的でもあると思います。もっと言えば、独断です。

     でも、意図的にやっています。「紙」対「ネット」とか、双方向性の「ソーシャル」対「プロ」とか対立の構図でメディアは語られがちですが、少し抽象的な次元で「特徴」として捉えなおし、3次元でマッピングした方がいい。その方が、それぞれのメディアの姿がよりよく見えてくるのではないかと思っています。

     提示したキーワードが共通言語になってくれたらいいなとも思っています。それで議論や思索が深まるならしめたものです。いつか、あの本が、ブレークスルー(局面打開)のヒントになったと、ベンチャー企業の方など、誰かから言われたら最高ですよね。

     新聞社の方からは、編集権の独立を強調している箇所に共感したと言われました。ライブドア事件の際に、ライブドアのニュースサイトの責任者として「ホリエモン逮捕へ」とか事件をトップニュースで伝え続けたという「実践の実績」が、百の理屈をこねた以上に評価されたのかもしれません。

     当時は、ご承知のようにライブドアは虚業の集団という風にたたかれていました。しかし、現場ではそんなに恥ずかしいことをしているというつもりはなかったのです。

     意外と身内に甘い既存メディアへ、さらに社会全体に対して、気概を示すいいチャンスだと思いました。

     個人株主からは「なんで株価を下げる報道をするのか」との意見も来ました。それで、「社会から関心を持たれているテーマは報じてまいります」というようなプレスリリースも出しました。それを有名ブロガーから「立派な姿勢だ」と言ってもらえたのはうれしかったですね。

     紙の本を出版したことで、本の読み手としての私自身のリテラシーも高まった気がします。一回でもゴルフをやったことがあると、ゴルフ中継の見え方が違うと言うでしょう。そんな感じです。

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