津田大介

インターネットの中で、安倍さんはブログでもツイッターでもなくフェイスブックを選びました。内容を見ると、はっきり言って大したことは書いてなくて、基本的に2種類しかないんです。「明けましておめでとうございます。今年も頑張ります!」で写真があって終わり、みたいな普通の挨拶か、もしくはメディア批判。「『週刊朝日』にこんなタイトルがある。民主党が政権を取った時はほめたたえたのに自分の時はこうだ、これは偏向報道だ。頑張っている自分の姿がメディアによって曲げて伝えられている。でも、自分はそれにも負けないでインターネットの力を信じて戦っていくんだ」と。それに対して3万とか4万の「いいね!」が付いて、コメント欄には実名の「この国のマスコミはひどい」みたいな書き込みが2000も3000も並ぶんです。
こうやって見ると、フェイスブックって後援会なんですよね。何千人何万人と集まって、拍手が鳴っているような状況。ツイッターは言論空間としてもう少し様子が違っていて、駅前で辻説法していると支持者じゃない人が通りかかって罵声を浴びせていく、という感じ。それに比べて後援会的なフェイスブックを選んだというところに、安倍さんのキャラクターがあるんでしょうね。

One thought on “津田大介

  1. shinichi Post author

    安倍政権のネット戦略を論者が多角的に検証(「創」2013年9・10月合併号)

    http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130812-00010000-tsukuru-pol

     参院選投開票日の前日、安倍総理は最後の街頭演説を秋葉原で行った。駅前の「AKBカフェ」の前に宣伝カーが停まり、演説を聞いている群衆の間には日の丸の旗がたなびくという何とも異様な光景だ。ここで安倍総理は「誇らしい国をつくっていくためにも憲法を変えていこうではありませんか!」と叫び、「安倍ソーリ、安倍ソーリ」というコールにまじって「ぶっつぶせ朝日!」などとマスコミ批判の声があがる。

     これは今年7月の参院選での光景だが、実は昨年の衆院選でもほぼ同じ光景が繰り広げられた。ネットの世界では、嫌韓などナショナリズムの台頭が著しく、ネット右翼が一定の影響力を持っている。安倍政権がネットに力を入れているのは、そういう言論状況を意識していることも理由のひとつだろう。

     さて、そういう安倍政権のネット戦略について多面的に分析や検証を行ったのが、弊社から先頃刊行された『安倍政権のネット戦略』だ。政権交代で苦杯をなめた経験から、自民党はネットを中心とした広報戦略を研究し、政権奪取とともにそれを意識的に駆使するようになった。SNSの活用においても、ツイッターとフェイスブックをきちんと使い分けている印象がある。本書に出てくる津田大介さんの分析はこうだ。

    《インターネットの中で、安倍さんはブログでもツイッターでもなくフェイスブックを選びました。内容を見ると、はっきり言って大したことは書いてなくて、基本的に2種類しかないんです。「明けましておめでとうございます。今年も頑張ります!」で写真があって終わり、みたいな普通の挨拶か、もしくはメディア批判。「『週刊朝日』にこんなタイトルがある。民主党が政権を取った時はほめたたえたのに自分の時はこうだ、これは偏向報道だ。頑張っている自分の姿がメディアによって曲げて伝えられている。でも、自分はそれにも負けないでインターネットの力を信じて戦っていくんだ」と。それに対して3万とか4万の「いいね!」が付いて、コメント欄には実名の「この国のマスコミはひどい」みたいな書き込みが2000も3000も並ぶんです。
     こうやって見ると、フェイスブックって後援会なんですよね。何千人何万人と集まって、拍手が鳴っているような状況。ツイッターは言論空間としてもう少し様子が違っていて、駅前で辻説法していると支持者じゃない人が通りかかって罵声を浴びせていく、という感じ。それに比べて後援会的なフェイスブックを選んだというところに、安倍さんのキャラクターがあるんでしょうね。》

     安倍政権とネット右翼の親和性については、同書の「安倍政権はネットをどう利用しているか」での中川淳一郎さんのこんな指摘もある。

    《自民党は「自民党ネットサポーターズクラブ(J─NSC)」というボランティア団体を公認しており、会員数は1万5000人以上。彼らが自民党の政策等に関する情報をネットに多数書いているのだ。

     その一方で彼らはネット上で韓国を中心に憎悪のことばをまき散らしている。ツイッターでJ─NSC会員であることを公言する人の一部はアイコンに日の丸をつけ、あまりにも勇ましいプロフィールを使用し、ツイートする内容は中韓を叩くものだらけである。》

     フェイスブックでマスコミ批判を次々と展開するのも安倍総理の特徴だが、本書で「安倍首相からの『批難』に応える」という章を書いている香山リカさんの経験は印象的だ。昨年暮れ、香山さんはNHKの「どうするニッポン 新政権に問う」という番組に出演したのだが、番組オンエア直前にフェイスブックに安倍氏の秘書が書き込みを行う。ゲストが偏向しているのではないかとして、香山さんについてはこう書いていた。

    「常に安倍晋三を批判し続け、もはや精神科医よりも安倍批難が本職になりつつある香山リカさん」

     番組が始まるとフェイスブックには「ひどい」「偏向報道だ」というコメントが相次いだ。さらに驚いたのは、番組終了間際に、何と安倍氏自身の書き込みがなされたことだった。

     ゲストの偏向ぶりを批判した後、最後にこう書かれていた。「香山リカしは論外」。香山さんは皮肉たっぷりに、この「香山リカし」の「し」とは何だろうと書いている。秘書のコメントの「批難」という表現にも香山さんは誤字なのかと皮肉を投げている。

     しかし、現職の総理がそんなふうに個人を名指しで「批難」し、支持者が一斉に「偏向だ」と呼応するという状況、いささか異常ではないだろうか。
    『安倍政権のネット戦略』には、このほか民主党政権で広報担当の一翼を担った下村健一さんの、民主・自民両党の広報戦略の比較など、興味深い分析が満載だ。

     参院選で自民党が圧勝した背景には、新聞・テレビがアベノミクスを礼賛したという事情もある。これはまさに安倍政権のメディア戦略が奏功したといえるだろう。メディアに関わる人はもちろん、安倍政権のネット戦略に関心を持っている人はぜひ、『安倍政権のネット戦略』を購読していただきたい。

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