大倉幸宏

Ookura駅の改札口では、順番を守らずに人を押しのけ我先に通過しようとする。プラットホームでは、整列乗車どころか人が降りないうちに割り込み、前にいる人を突き飛ばし電車に乗り込む。一部の人ではない、殆どの乗客がそうして電車に乗り込んでいた。空いている窓から乗り込む人、荷物を放り投げて先に座った乗客と殴り合いの喧嘩が始まる。
人々は駅や公園など公共空間でのゴミ捨てをためらわず、床に痰を吐く姿は外国人の眉をひそめさせている。運送中の積み荷抜き取りは頻繁で、粗悪品の流通など商道徳の劣悪ぶりは深刻だった。

3 thoughts on “大倉幸宏

  1. shinichi Post author

    「昔はよかった」と言うけれど: 戦前のマナー・モラルから考える

    by 大倉幸宏

    序章 道徳が崩壊した戦後の日本
    第1章 駅や車内は傍若無人の見本市
    第2章 公共の秩序を乱す人々
    第3章 誇りなき職業人たちの犯罪
    第4章 繰り返されてきた児童虐待
    第5章 すでに失われていた敬老の美風
    第6章 甘かったしつけと道徳教育
    終章 道徳の崩壊はいつはじまったのか?

    「戦前の日本では、家庭で厳しいしつけがなされ、学校で修身が教えられ、みんなが高い道徳心を身に付けていた。しかし、戦後そうした美徳が失われ、今や日本人のマナー・モラルは完全に崩壊してしまった」

    今日の日本で、道徳に反するような事件や出来事が起きるたびに、こうした言葉があちこちで聞かれます。ジャーナリスト、作家、政治家など、さまざまな立場の人が、あたかも常識であるかのごとく昔を美化し、今を否定する論理を展開します。これに疑問を呈する声はあまり聞かれません。

    しかし、多くの人が信じているこの言説は、実はまったくの誤解だったと言えます。本書は、こうした「常識」の誤りを明らかにし、戦前の日本人の道徳はいかなる状態だったのか、あまり知られていない歴史の側面を当時の新聞や書籍、統計データなどの資料をひもときながら紹介していきます。

    たとえば、列車の中で高齢者らに席を譲らない若者、車内で化粧をする女性、道路や公園にゴミを捨てていく人、偽造したラベルを貼り付けた食品を売る商人、子どもを虐待する親、老いた親を虐待する子ども……。今日、日本人の道徳低下の事例として取り上げられるこうした振る舞いは、実は戦前の日本にも当たり前のように存在していたのです。

    本書では、上記のような事例を中心に具体的な考察を展開しています。ただし、一概に「昔の日本人は道徳心が欠如していた」ということを主張するものではありません。道徳の問題には、その当時の時代背景や社会システムなどさまざまな要素が絡んでいますので、今日の基準で単純に良し悪しを判断できるものではありません。この点を踏まえたうえで、本書はより客観的な視点から道徳問題の本質に迫っていきます。さらに、今日起きているさまざまな社会問題をどう捉えるべきかについても、一つの視座を提示します。

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  2. shinichi Post author

    (天声人語)昔はよかったは本当か

    http://www.asahi.com/articles/TKY201311110553.html

    わが身の不明を恥じている。以前、電車の中で化粧をする女性がいつごろ出現したのかについて触れた。20年ほど前の本紙に、近ごろ多いとの投書が載っていると報告した。それどころではなかった▼驚いたことに、1935年6月の本紙にあった。電車や人混みで顔をはたき口紅を塗る女性をよく見かけるが、感心しない、人の見ない場所でしなさい、と。実は戦前すでに珍しいことではなく、年長者は眉をひそめていたらしい▼お年寄りや重い荷物を持った人に電車の席を譲ろうとしない青年をとがめる文章もある。眠るふりをしたり、読んだ新聞に再び目を落としたりという描写は今日でも通用しそうである。37年4月の本紙だ▼こうした事例を集めて一冊の本ができた。コピーライターの大倉幸宏(ゆきひろ)さん(41)による『「昔はよかった」と言うけれど』。 現代日本のモラルの低下を憂える声に疑問をもった。戦前はこんなではなかったって本当か、と。5年かけて材料を集めた▼古きよき時代を懐かしみ、今時の若い者を嘆く。人の世の歴史はその繰り返しだろう。昔はよかったとは往々、印象論か個人的な感慨にとどまる。過去への幻想や錯覚をもとに「取り戻せ」と唱える危うさを、大倉さんの本は指し示す▼小中学校の道徳教育を教科に格上げするという。文科省の懇談会が案をまとめた。政権の悲願だ。何をどう教えるか。かつての修身はよかった、戦後教育の罪は大きいという、ありがちな発想に陥ることのないよう願う。

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  3. shinichi Post author

    明治維新が成されてから、江戸時代から綿々と受け継がれていた道徳、規範意識はこの国の進歩と共に地に落ちた。

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