アンサイクロペディア

足利義政は室町幕府第8代将軍。常に倦怠感を帯びており、朝起床して最初の台詞が八割方「鬱だ」だったりと、極端な消極的思考で知られる。また、鬼妻日野富子、魔女と呼ばれた乳母今参局らの恐怖を身近で震撼したせいもあって、極度の女性不信でもあった。その世を偲ぶ屈折した心情は一種の幽玄さに富んでおり、彼の時代に興隆した枯山水などの東山文化は、まさに義政の虚脱精神が具現化したものである。
為政者としてはオスカー・ワイルドを以ってしても擁護のしようがない頗る付きの無能だったが、芸術家、文化人としては洗練され、卓越した感覚の持ち主であった。中国の徽宗帝にせよ、この手の君主が度々輩出されるのが歴史の面白いところだが、人民にとってみればたまったものではない。
この人が政を放置したおかげで、結果的に才幹がありながら下賤の身分ゆえ燻っていた逸物達が上へのし上がり、下剋上を成し遂げる事が可能となった。そういう意味では戦国時代の生みの親の一人であり、北条早雲、斎藤道三などにとっては、自分が栄達する切欠を、栄達できる土壌を形成してくれた恩人と言えるだろう。

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