内閣府

一般に、グローバル化とは、資本や労働力の国境を越えた移動が活発化するとともに、貿易を通じた商品・サービスの取引や、海外への投資が増大することによって世界における経済的な結びつきが深まることを意味する。
世界銀行はグローバル化を「個人や企業が他国民と自発的に経済取引を始めることができる自由と能力」と定義している。ここで、「自由」とは国境を越えて資本・労働力等の移動に障害がないこと、「能力」とは国境を越えて商品・サービスを提供し、あるいは他の国で経済活動をする能力があることを意味する。過去を振り返ってみると、運輸・通信・金融・保険等の技術や情報伝達能力が発達し、貿易や資本などの移動に対する障害が政策的に取り除かれることによってグローバル化が進展し、それが所得水準を高めることによってさらに経済関係が深まっていったと考えられる。このようにグローバル化は経済発展をもたらす動きである。
グローバル化の過程は、一国内において分業が進展していく過程と基本的に同じである。分業によって経済活動の専門化が進み、技術革新を伴いながら経済成長がもたらされる。所得水準の上昇によってさらなる分業が可能となり、経済成長との好循環が実現する。このようにして、世界経済が徐々に包摂され自由主義経済の良さを享受することが可能となる。消費者の立場に立てば、より安くて質の高い財やサービスを選択することが可能になり、生活水準が向上する。
近年のグローバル化には、コンピュータを通じた情報処理やインターネットなどの情報伝達の分野における技術革新が新たな影響を与えている。これらは、金融をはじめとする各種サービスの機能を向上させている。こうした技術変化はこれまでの経済活動の在り方を革新し、金融面を中心に経済取引が瞬時に世界的規模で可能となるなどグローバル化の可能性を高めていると考えられる。
グローバル化の便益を享受するためには、遅れることなく企業の技術革新を促すこと、技術革新に対応して経済社会制度を迅速に適応させるとともに、障害は取り除くこと、それらにふさわしい人材を育成することなどが必要になってくる。

2 thoughts on “内閣府

  1. shinichi Post author

    ● 海外経済との関係においても構造改革が重要
     構造改革は国内経済を活性化させるものであるが、グローバル化の便益を引き出す過程においても重要であることを示している。つまり、市場メカニズムを十分機能させ、広く生産性の向上を図るとともに、労働や資本等を生産性の低い分野から高い分野へ移動させることが構造改革の大きな目的であるが、それは海外との経済関係の緊密化からも便益を引き出すことにつながるものである。
     投資や雇用、あるいは生産活動の分野において規制が残り構造改革が不十分な場合や、人材育成が技術革新に適応できない場合等では、グローバル化の便益を引き出すことができないことがある。それどころか、投資の停滞や工場の海外移転、失業の増加、所得格差の拡大が生じ、経済が厳しさを増すことさえあり得る。
     さらに、国内の構造改革のほかにも、世界的な貿易・投資の推進のためには、各国・地域の協力のもとに製品や規制の標準化を図る必要がある。また、国際分業を進展させて経済活動を高めるためには、契約の遵守、知的所有権の保護や競争政策の強化などが重要となる。
     以下では、我が国が変動相場制に移行した1973年以降の状況を概観しながら、とりわけ90年代以降において日本経済のグローバル化の特徴をまず明らかにしよう。その後、次節以降で行う分析の問題意識と主要な結論についてあらかじめ述べることにする。

    2 90年代以降を中心とする特徴

    ● 4つの特徴
     日本経済のグローバル化について、90年代以降に焦点を当てると次の4つの特徴がある。
     第一は、為替レートの変化とその経済への影響である。我が国は、変動相場制移行後、80年代後半には急激な円高に直面し、90年代前半にも緩やかながら長期間にわたる円高を経験した。こうした為替レートの変化は、我が国経済に大きな影響を与えてきた。
     第二は、我が国の産業構造や貿易構造の高度化に伴い、貿易相手国や直接投資先としての重要性が、次第にアメリカから東アジア地域へと移ってきた。こうした動きは、海外経済との関係が密接になる中での企業の積極的な活動の結果である。
     第三に、我が国の金融・資本取引の面については、近年、海外からの株式投資は増えてきたものの、我が国の国際的な金融・資本取引は、バブルの一時期を除いて活発化してきたとはいえない。貿易面に比べて、金融・資本の動きは低調である。
     第四に、欧米諸国と比べると、日本経済の国際的な結びつきの深まり方は緩やかである。これは、我が国の中でグローバル化が進展していると考えられても、欧米諸国と比較した場合には必ずしもそうはならない。

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