松本保美

古代の日本人は、時間を、毎年めぐって来る時間と二度と戻らない時間の2つに分けていた (石田 1988)
前者は神に属し、春耕から秋耕までと秋耕から春耕までの2つの期間からなる。この時間の意識は、農耕によって規定された特定の場所と空間の中で生じた特別で具体的な経験に依存している。
後者は過去から未来に直接流れる人間の時間である。それは、言い換えると、歴史的時間であり、同時に、1つの部族社会内での経験がいくつもの世代に受け継がれていく具体的な時間である。

4 thoughts on “松本保美

  1. shinichi Post author

    アローの不可能性定理: 枠組みの検討と応用可能性

    by 松本保美

    第10章 個人選好の基準:西欧対日本

    10.2 日本の思想と日本人の思考

    10.2.1 日本人の時間に対する態度

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  2. shinichi Post author

    (sk)

    万葉集の頃の日本人たちは直観的で空間的だった。仏教の影響はほとんどない。古今集の頃の日本人たちが論理的で時間的なのとは大きく違う。

    空間から時間へ。日本人たちの思考と想像は3次元から4次元に広がっていった。広がる前の万葉集の世界には、恋の歌が溢れている。仏教の影響が強くなる前の日本には、時間にとらわれない生活が間違いなくあった。

    松本保美は、

    日本人の考え方は長期的かつ論理的な側面を欠くが、日本人は常に目の前の意思決定問題に集中するという意味で、実に現実的である。

    と書いたが、そこには、長年に亘って中国から仏教文化を受け入れ、近年になって欧米からキリスト教文化を受け入れるようになっても変わらなかった「万葉集の頃のままの日本人」がいる。

    宵越しの金は持たないというきっぷの良さも、目の前のことだけに集中するというビジネス・センスも、林立するラブホテルも、35万人を超えるフーゾク嬢も、気軽にフーゾクを楽しむ男たちも、山本七平が説明した空気というものも、宗教に対するいい加減な態度も、オレオレ詐欺や健康食品に簡単に騙されてしまう性格も、すべてが同じ伝統というものなのだろう。

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