shinichi Post author28/10/2014 at 11:42 am 貴重資料画像–京都大学電子図書館 http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/ ** 国宝「今昔物語集」 (鈴鹿家旧蔵) http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/konjaku/kj_top.html ** 今昔物語集巻二十九第二十三「具妻行丹波国男於大江山被縛」 http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/konjaku2/transp/transp.swf?vol=29&page=35 http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/konjaku2/transp/transp.swf?vol=29&page=36 Reply ↓
shinichi Post author28/10/2014 at 11:47 am 今昔物語集 https://ja.wikipedia.org/wiki/今昔物語集 『今昔物語集』とは平安時代末期に成立したと見られる説話集である。全31巻。ただし8巻・18巻・21巻は欠けている。編纂当時には存在したものが後に失われたのではなく、未編纂に終わり、当初から存在しなかったと考えられている。また、欠話・欠文も多く見られる。 インド・中国・日本の三国の約1000余りの説話が収録されている。 『今昔物語集』という名前は、各説話の全てが「今ハ昔」という書き出しから始まっている事に由来する便宜的な通称である。 京都大学付属図書館に所蔵されている、鈴鹿家旧蔵本(国宝)通称「鈴鹿本」が最古の伝本である。ただし鈴鹿本は一部の巻のみを伝えるにとどまる。紙の年代が成立時期に重なることから、これが『今昔物語集』として最初に書かれた原本そのものである可能性もある。その他の本は鈴鹿本から書写され、流布されていったものだと考えられている。 Reply ↓
shinichi Post author28/10/2014 at 11:50 am 今昔物語集巻二十九第二十三「具妻行丹波国男於大江山被縛」より 妻と伴い丹波の国へ行く男が大江山で縛られる話 高木 健 現代語訳 http://www.lares.dti.ne.jp/~ttakagi/diary/translation/konzyaku29_23.htm 今は昔のこと、京に住んでいたある男の妻が丹波の国に生まれであったので、男は、妻を伴い、丹波の国へ行くため、妻を馬に乗せ、夫は箭を十本ほど刺した竹の箙を背負い、弓を手に持って後ろから歩いていると、大江山のあたりで太刀を帯びた屈強な若い男と道連れになった。 しばらく連れだって歩きながらお互いに話をし、どちらに行かれますか、などと親しく語りあいながら歩いていると、この今道連れになった太刀を帯びた男が、自分が帯びているこの太刀は、陸奥の国より伝わってきた名高い太刀である、見給え、と言いながら、太刀を抜いたのを見ると、実にすばらしい太刀だったので、始めの男は、どうしてもその太刀が欲しくなった。若い男は、その様子を見て、この太刀が必要でしたらお持ちのその弓と交換しましょう、と言った。弓を持った男は、持っている弓はたいしたものではなく、あの太刀は実にすばらしいものであったので、太刀が欲しかった上にひと儲けができるとも思い、ためらわず交換した。しばらく行ったところで、若い男が言うには、弓しか持っていないのは人目にもおかしい、山を歩いている間、その矢を二本ほど貸してください、ご一緒するのですから、私がお持ちしても同じことでしょう、と。男は、これを聞いて、いかにもと思い、また、よい太刀をみすぼらしい弓と交換したのにうかれて、言われるがままに矢を二本抜いて渡した。そして、若い男は、弓と矢二本を手に持ち、後ろからついて行く。はじめの男は、箙を背負い、太刀を帯びて歩いていった。 やがて、昼食を食べようと藪の中に入ったところ、若い男は、人通りに近いところはみっともない、もう少し奥に入りましょう、と言ったので、さらに奥に入り込んだ。そして、女を馬より抱き下ろしてたりしていると、この弓を持った男は、いきなり弓に矢をつがい、男にねらいを定め、強く引き絞り、てめえ、動いたら射殺すぞ、と言ったので、始めの男は、全く思いがけないことだったので、どうしてよいかわからず、立ちすくんだままだった。そのとき、もっと山の奥へ入れ、と脅され、命を惜しみ妻と一緒に七八町ほど山の奥に入った。そして、太刀と短刀を捨てろと命じられて、すべて投げ捨てたので、若い男は、太刀と短刀を取り上げ、男を押さえつけ、馬の手綱で木にきつく縛り付けた。そして、女に近寄って見ると、二十歳過ぎで、身分は賤しいけれど魅力がありたいそう美しかった。男は、女に心を奪われ、ほかに何も考えられなくなったので、女の衣を脱がそうとすると、女は拒むことができそうにないと思い、言われるがままに衣を脱いだ。そして、男も着物を脱ぎ、女を押し倒して交わった。女はしかたがなく、若い男に言われるがままに男が縛り付けられている様子を見たが、その時見られた男はどのような気になったのだろうか。 その後、若い男は起きあがり、もとのように服を着て、箙を背負い、太刀を帯び、弓を手に持ち、馬に乗り、女に言った。名残惜しく思うけれども、どうしもようもないから、このまま行くことにする、あなたに免じてその男は殺さずにおいておくが、急ぎ逃げるために馬はいただいていくぞ、と言って、一散に馬を走らせ、いずこともなく去っていった。その後、女は男の縄を解いてやると、男は呆然としていたので、女は、あなたはほんとうに頼りない、これからもこのように頼りないようでは、いいことがありっこないですよ、と言うと、夫は黙ったままだったが、そこから二人は連れだって丹波まで行った。 若い男の心映えは見上げたものである。この男は女の着物を奪わなかった。始めの男は実に頼り甲斐ない。山中で見知らぬ男に弓矢を取らせたことは実に愚かである。若い男が何者だったかはわからずじまいだったと、語り伝えられている。 Reply ↓
shinichi Post author28/10/2014 at 11:52 am (sk) 芥川龍之介の「藪の中」はこの話を下敷きにしたいわている。 ビアス (Ambrose Bierce) の「月明かりの道 (The Moonlit Road)」やブラウニング (Robert Browning) の「指輪と本 (The Book and the Ring)」などとの類似も指摘されている。 でもやはり、芥川龍之介の「藪の中」が一番素晴らしい。 ** The Moonlit Road by Ambrose Bierce http://gaslight.mtroyal.ab.ca/moonltrd.htm 月明かりの道 by アンブローズ・ビアス http://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/moonlit.html ** The Ring and the Book XII The Book and the Ring by Robert Browning http://www.telelib.com/authors/B/BrowningRobert/verse/ringandbook/ringbook12.html 指輪と本 第12巻 本と指輪 by ロバート・ブラウニング Reply ↓
貴重資料画像–京都大学電子図書館
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/
**
国宝「今昔物語集」 (鈴鹿家旧蔵)
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/konjaku/kj_top.html
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今昔物語集巻二十九第二十三「具妻行丹波国男於大江山被縛」
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/konjaku2/transp/transp.swf?vol=29&page=35
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/konjaku2/transp/transp.swf?vol=29&page=36
今昔物語集
https://ja.wikipedia.org/wiki/今昔物語集
『今昔物語集』とは平安時代末期に成立したと見られる説話集である。全31巻。ただし8巻・18巻・21巻は欠けている。編纂当時には存在したものが後に失われたのではなく、未編纂に終わり、当初から存在しなかったと考えられている。また、欠話・欠文も多く見られる。
インド・中国・日本の三国の約1000余りの説話が収録されている。
『今昔物語集』という名前は、各説話の全てが「今ハ昔」という書き出しから始まっている事に由来する便宜的な通称である。
京都大学付属図書館に所蔵されている、鈴鹿家旧蔵本(国宝)通称「鈴鹿本」が最古の伝本である。ただし鈴鹿本は一部の巻のみを伝えるにとどまる。紙の年代が成立時期に重なることから、これが『今昔物語集』として最初に書かれた原本そのものである可能性もある。その他の本は鈴鹿本から書写され、流布されていったものだと考えられている。
今昔物語集巻二十九第二十三「具妻行丹波国男於大江山被縛」より
妻と伴い丹波の国へ行く男が大江山で縛られる話
高木 健 現代語訳
http://www.lares.dti.ne.jp/~ttakagi/diary/translation/konzyaku29_23.htm
今は昔のこと、京に住んでいたある男の妻が丹波の国に生まれであったので、男は、妻を伴い、丹波の国へ行くため、妻を馬に乗せ、夫は箭を十本ほど刺した竹の箙を背負い、弓を手に持って後ろから歩いていると、大江山のあたりで太刀を帯びた屈強な若い男と道連れになった。
しばらく連れだって歩きながらお互いに話をし、どちらに行かれますか、などと親しく語りあいながら歩いていると、この今道連れになった太刀を帯びた男が、自分が帯びているこの太刀は、陸奥の国より伝わってきた名高い太刀である、見給え、と言いながら、太刀を抜いたのを見ると、実にすばらしい太刀だったので、始めの男は、どうしてもその太刀が欲しくなった。若い男は、その様子を見て、この太刀が必要でしたらお持ちのその弓と交換しましょう、と言った。弓を持った男は、持っている弓はたいしたものではなく、あの太刀は実にすばらしいものであったので、太刀が欲しかった上にひと儲けができるとも思い、ためらわず交換した。しばらく行ったところで、若い男が言うには、弓しか持っていないのは人目にもおかしい、山を歩いている間、その矢を二本ほど貸してください、ご一緒するのですから、私がお持ちしても同じことでしょう、と。男は、これを聞いて、いかにもと思い、また、よい太刀をみすぼらしい弓と交換したのにうかれて、言われるがままに矢を二本抜いて渡した。そして、若い男は、弓と矢二本を手に持ち、後ろからついて行く。はじめの男は、箙を背負い、太刀を帯びて歩いていった。
やがて、昼食を食べようと藪の中に入ったところ、若い男は、人通りに近いところはみっともない、もう少し奥に入りましょう、と言ったので、さらに奥に入り込んだ。そして、女を馬より抱き下ろしてたりしていると、この弓を持った男は、いきなり弓に矢をつがい、男にねらいを定め、強く引き絞り、てめえ、動いたら射殺すぞ、と言ったので、始めの男は、全く思いがけないことだったので、どうしてよいかわからず、立ちすくんだままだった。そのとき、もっと山の奥へ入れ、と脅され、命を惜しみ妻と一緒に七八町ほど山の奥に入った。そして、太刀と短刀を捨てろと命じられて、すべて投げ捨てたので、若い男は、太刀と短刀を取り上げ、男を押さえつけ、馬の手綱で木にきつく縛り付けた。そして、女に近寄って見ると、二十歳過ぎで、身分は賤しいけれど魅力がありたいそう美しかった。男は、女に心を奪われ、ほかに何も考えられなくなったので、女の衣を脱がそうとすると、女は拒むことができそうにないと思い、言われるがままに衣を脱いだ。そして、男も着物を脱ぎ、女を押し倒して交わった。女はしかたがなく、若い男に言われるがままに男が縛り付けられている様子を見たが、その時見られた男はどのような気になったのだろうか。
その後、若い男は起きあがり、もとのように服を着て、箙を背負い、太刀を帯び、弓を手に持ち、馬に乗り、女に言った。名残惜しく思うけれども、どうしもようもないから、このまま行くことにする、あなたに免じてその男は殺さずにおいておくが、急ぎ逃げるために馬はいただいていくぞ、と言って、一散に馬を走らせ、いずこともなく去っていった。その後、女は男の縄を解いてやると、男は呆然としていたので、女は、あなたはほんとうに頼りない、これからもこのように頼りないようでは、いいことがありっこないですよ、と言うと、夫は黙ったままだったが、そこから二人は連れだって丹波まで行った。
若い男の心映えは見上げたものである。この男は女の着物を奪わなかった。始めの男は実に頼り甲斐ない。山中で見知らぬ男に弓矢を取らせたことは実に愚かである。若い男が何者だったかはわからずじまいだったと、語り伝えられている。
(sk)
芥川龍之介の「藪の中」はこの話を下敷きにしたいわている。
ビアス (Ambrose Bierce) の「月明かりの道 (The Moonlit Road)」やブラウニング (Robert Browning) の「指輪と本 (The Book and the Ring)」などとの類似も指摘されている。
でもやはり、芥川龍之介の「藪の中」が一番素晴らしい。
**
The Moonlit Road
by Ambrose Bierce
http://gaslight.mtroyal.ab.ca/moonltrd.htm
月明かりの道
by アンブローズ・ビアス
http://f59.aaacafe.ne.jp/~walkinon/moonlit.html
**
The Ring and the Book
XII
The Book and the Ring
by Robert Browning
http://www.telelib.com/authors/B/BrowningRobert/verse/ringandbook/ringbook12.html
指輪と本 第12巻 本と指輪
by ロバート・ブラウニング