帚木蓬生

ギャンブル依存症(病的賭博)は、やめられない病の中でも群を抜いて最悪。
まず、他の依存症と比べて、“やめられない”度合いの強さです。病気が進めば本人の意思など存在しないも同然で、ただただギャンブルのことしか考えられなくなってしまう。中途退学、失職、転職、家庭を持ったところで家庭不和や離婚が早晩やってきます。社会的な信用は失われ、家族親類からは忌み嫌われ、軽蔑されます。さらに悲惨なことは、本人がギャンブル地獄に転落するまでに、家族が借金返済のために甚大な出費をしてしまっていることです。何百万円というのはまだましなほうで、数千万、中には一億を超えるケースもあります。
日本のギャンブルの年商は三〇兆円といわれていますが、その八割五分がパチンコ業界の年商といっていい。残りの一五%が競馬、競輪、競艇、オートレースが分け合っていて、宝くじやサッカーくじは大したことはない。これだけの破綻者が出ているのに、パチンコをただの遊技として認めているのは世界でも日本ぐらいしかない。パチンコ、スロットを主流とするギャンブル依存は、人間の人格まで破綻させてしまう恐ろしい病気なのにもかかわらず、今までそれほど注目されてこなかった。それはこの三〇兆円産業にはあらゆる業界が関わっているからなんです。テレビ会社も新聞社も、パチンコ、スロットの宣伝、チラシがなければ成り立たないし、他にも液晶会社、電飾会社、建築、土木、いろいろな業界が密接に関わっている。この業界をつぶしたら自分たちが食っていけなくなりますからね。

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  1. shinichi Post author

    Gyanburuやめられない

    ギャンブル地獄からの生還

    by 帚木 蓬生


    インタビュー ギャンブル依存と真っ向から闘う

    青春と読書 – 集英社

    http://seidoku.shueisha.co.jp/1009/try01_hahakigi.html

     人は誰しも「やめられない」ものを、一つくらいは持っている。煙草、お酒、コーヒー、ゲーム、インターネット、韓流ドラマ ……。この「やめられない」病が、放火や万引き、盗撮、覚醒剤となれば、もう立派な犯罪となる。

     作家であり、精神科医でもある、帚木蓬生さんの新刊『やめられない ギャンブル地獄からの生還』(集英社)は、そのやめられない病の中でも群を抜いて「最悪」とされる、ギャンブル依存症を取り上げたものである。

     では、どう最悪なのか。

    「まず、他の依存症と比べて、“やめられない”度合いの強さです。病気が進めば本人の意思など存在しないも同然で、ただただギャンブルのことしか考えられなくなってしまう。

     本人の人生上の破滅は言うに及ばず、周囲の人々をとことん苦しめる度合いにおいても、“やめられない”病気の最悪のものがギャンブル依存症(正式病名は「病的賭博」)です。

     学生であれば勉強は手につかなくなり、社会人ならば仕事はそっちのけ。中途退学、失職、転職、家庭を持ったところで家庭不和や離婚が早晩やってきます。社会的な信用は失われ、家族親類からは忌み嫌われ、軽蔑されます。

     さらに悲惨なことは、本人がギャンブル地獄に転落するまでに、家族が借金返済のために甚大な出費をしてしまっていることです。何百万円というのはまだましなほうで、数千万、中には一億を超えるケースもあります」

     親の貯金や年金、田畑屋敷がなくなっても、ギャンブルはやまず、再び借金が増え続けるというギャンブル地獄。まさか自分は ……と、侮るなかれ。本の前半には、ごく普通のサラリーマンが、主婦が、医学生が、聖職者が、ギャンブル地獄にはまっていく過程が生々しい実例として克明に紹介されている。

     パチンコするお金ほしさに同僚や家族のお金を盗んだり、会社のお金を使い込み、そのあげくにサラ金に走る。貯金をすべて使い果たし、サラ金に数百万円の借金を作ったことが夫にばれ、「頼むから、死んでくれ」と夫に詰め寄られる主婦。そんな母親を不憫に思い、借金の肩代わりをする息子。それでも、パチンコ通いは、やめられない ……。

     ギャンブル依存症の八割五分が、このパチンコ、スロットによる依存なのだと、帚木さんは強調する。

    「最近は、相撲取りの野球賭博がマスコミを騒がせていますが、ギャンブル依存症のほとんどがパチンコ、スロットによるものです。日本のギャンブルの年商は三〇兆円といわれていますが、その八割五分がパチンコ業界の年商といっていい。残りの一五%が競馬、競輪、競艇、オートレースが分け合っていて、宝くじやサッカーくじは大したことはない。これだけの破綻者が出ているのに、パチンコをただの遊技として認めているのは世界でも日本ぐらいしかないですよ。
     パチンコ、スロットを主流とするギャンブル依存は、人間の人格まで破綻させてしまう恐ろしい病気なのにもかかわらず、今までそれほど注目されてこなかった。それはこの三〇兆円産業にはあらゆる業界が関わっているからなんです。テレビ会社も新聞社も、パチンコ、スロットの宣伝、チラシがなければ成り立たないし、他にも液晶会社、電飾会社、建築、土木、いろいろな業界が密接に関わっている。この業界をつぶしたら自分たちが食っていけなくなりますからね」

     帚木さんがギャンブル依存症に注目するきっかけになったのは、一九八八年、精神科医として北九州市の八幡厚生病院に赴任したときのこと。その病院にはアルコール依存症病棟があり、患者たちを調べるうちにアルコール依存にはギャンブル依存の合併が多いことが判明したという。

    「調べてみると、アルコール依存症者の一五%くらいに、病的賭博の例があった。つまり、アルコール依存症かつギャンブル依存症という患者ですね。全国でアルコール依存症者は大きく見積もって四〇〇万人、少なくても三〇〇万人ですから、その中に四五万人から五〇万人のギャンブル依存症者がいるという計算になります。その数にプラスして純粋なギャンブラーたちがいるわけで、そちらの母体のほうが当然大きくなりますから、一五〇万人から二〇〇万人のギャンブル依存症者が潜在していると推測した。これは大変な問題だと驚きましてね。

     当時私はPTSDの研究をしていまして、『臨床精神医学講座』という全三六巻ある専門書にも執筆していたんですが、出来上がってみると、病的賭博に関してはちょろっと半ページくらいさいてあるだけで、まるで話にならない。アメリカでは一九八〇年に、DSM‐IIIという、病的賭博の診断マニュアルが出て、精神科の診断部類にかかったというのに、日本の精神科医は知らん振りですよ」

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