物語は楽しければよい。それもそうです。ところが、多くの物語は何ごとかを教えるために語られるもののようです。仏教やキリスト教などの聖典にはたくさんの物語が出てきますが、それらの中には「たとえ話」とよばれるものがあります。つまり、宗教の大事な教えを物語の形で教えているのです。こむずかしい教訓は頭に入りません。しかし物語の形にすると頭に入り、語り直されやすいのです。ストーリーに引き込まれ、共感しながら学ぶからでしょう。物語を聞いて何かを学び、成長するというのは、物語の持つ大きな働きです。
物語は楽しければよい。それもそうです。ところが、多くの物語は何ごとかを教えるために語られるもののようです。仏教やキリスト教などの聖典にはたくさんの物語が出てきますが、それらの中には「たとえ話」とよばれるものがあります。つまり、宗教の大事な教えを物語の形で教えているのです。こむずかしい教訓は頭に入りません。しかし物語の形にすると頭に入り、語り直されやすいのです。ストーリーに引き込まれ、共感しながら学ぶからでしょう。物語を聞いて何かを学び、成長するというのは、物語の持つ大きな働きです。
こころをよむ
NHK
http://www.nhk.or.jp/r2bunka/kokoro/1501.html
2015年1月~3月の放送
物語のなかの宗教
by 島薗 進
日本人の多くが、「今まで特定の宗教に縁がなく生きて来た」と思っている。では宗教は必要のないものだろうか。
人が生きる上で大切な何かを宗教は伝えてこなかっただろうか。今回の講師、宗教学者の島薗進さんは、自身特定の宗教を長く実践し続けたことはないという。しかし宗教が人間にとって大切な何かを伝えて来たと考えている。
その「大切な何か」とは、なんだろうか。
宗教は人々が共同で実践するものであり、また形式を重んじるため同じ儀礼が繰り返し行われる。そのため時代の状況に応じて変化しようとしても限界がある。そこで変わり行く現実に即し、また個人の経験や心情などに即した宗教的なメッセージを伝え残す必要が生じた。神話や伝説などの物語には、そうした「大切な何かを伝えたい思い」も込められている。
宗教が伝えようとしてきたことが分かりづらくなった時、物語に耳を傾けることが助けになる。神話や伝説は宗教と切り離せない。聖典の中に含まれる「宗教のなかの物語」のほかに、宗教的なものを意識しつつ生み出されてきた創作物語もある。そこでは人の心を打つような形で宗教的なものを宿した物語が語られている。
今回は、そうした物語を選んで紹介し、「宗教とは何か」、「人が生きる上で大切なことは何か」を探る。そして宗教というものについて、より深く考えるきっかけになって欲しい。
シリーズ 放送日 再放送日
第1回 1/4 1/11
心を打つ宗教性―物語が伝えようとしていること
第2回 1/11 1/18
悲しみの彼方―アンデルセン『人魚姫』
第3回 1/18 1/25
心の重みを知る―ジョージ・マクドナルド『軽いお姫さま』
第4回 1/25 2/1
いのちの交流―宮沢賢治『なめとこ山の熊』
第5回 2/1 2/8
弱さを認める―『新約聖書』「放蕩息子の帰還」と『法華経』「長者窮子のたとえ」
第6回 2/8 2/15
自由と責任を学ぶ―キングスレイ『水の子―陸の子のためのおとぎばなし』
第7回 2/15 2/22
心の空白に向き合う―トルストイ『イワン・イリッチの死』
第8回 2/22 3/1
罪と悔い改め―『観無量寿経』『大般涅槃経』阿闍世王の物語
第9回 3/1 3/8
疑いに抗う―倉田百三『出家とその弟子』
第10回 3/8 3/15
悪の自覚とともに生きる―武田泰淳『ひかりごけ』
第11回 3/15 3/22
去りゆく者の慈しみ―深沢七郎『楢山節考』
第12回 3/22 3/29
苦の果ての魂の輝き―石牟礼道子『苦海浄土―わが水俣病』
第13回 3/29 4/5
それぞれの祈りを包むもの―遠藤周作『深い河(ディープ・リバー)』