三浦和広

美とは不思議なものです。美しい絵画、美しい音楽、美しい夕日、美しい人柄など様々な美の表れがありますが、美そのものについては、知覚することができません。美しいを見ることはできず、美しいを聞くこともできない。時代によって、国によって、また人によって、その表れ方や受け取り方にも大きな違いがあります。それでもは万国共通の概念として疑いなく存在し、私たちを惹きつけて止みません。美とは何か。なぜそれに惹かれるのか。どのようにして生起するのか。それを人間はいかに感じ取るのか。不可思議かつ魅惑的なについて考える学問が美学です。
美学という言葉が日本ではじめて使用されたのは19世紀、中江兆民がE・ヴェロンの L’esthetique維氏美学と訳したところに端を発する比較的新しい語なのです。その後、森鴎外の訳語である審美学に取って代わられ、現在では一般に美学として知られるようになりました。
本来であれば感性学と呼ばれるべきものが、なぜ美学と規定されるようになったのか。
第一に、Aestheticaの思索が深まるにつれて、単なる感性論の範疇を超え出るようになったこと。
第二に、美や芸術がはらむ意味や価値などの重要性が、19世紀以降、あらためて認識されだしたこと。
第三は、日本における美意識の系譜に哲学的性質があること。
以上を踏まえて美学は産声を上げ、美、藝術、そして感性についての哲学として発展していきます。

One thought on “三浦和広

  1. shinichi Post author

    日本美学研究所 所長挨拶

    by 三浦和広

    http://bigakukenkyujo.jp/blog-entry-3.html

    美とは不思議なものです。
    美しい絵画、美しい音楽、美しい夕日、美しい人柄など様々な美の表れがありますが、美そのものについては、知覚することができません。
    「美しい」を見ることはできず、「美しい」を聞くこともできない。
    時代によって、国によって、また人によって、その表れ方や受け取り方にも大きな違いがあります。
    それでも「美」は万国共通の概念として疑いなく存在し、私たちを惹きつけて止みません。
    美とは何か。
    なぜそれに惹かれるのか。
    どのようにして生起するのか。
    それを人間はいかに感じ取るのか。
    不可思議かつ魅惑的な「美」について考える学問が「美学」です。

    「美学」という言葉が日本ではじめて使用されたのは19世紀、中江兆民(思想家・ジャーナリスト・政治家)がE・ヴェロン(仏 思想家・ジャーナリスト)の『L’esthetique』を『維氏美学』と訳したところに端を発する比較的新しい語なのです。その後、森鴎外(文人・陸軍軍医・官僚)の訳語である『審美学』に取って代わられ、現在では一般に「美学」として知られるようになりました。

    「美学(aesthetics)」という言葉の起源は、「知覚」を意味する古代ギリシャ語で「知覚」を意味するAisthesis(アイステーシス)から派生したものとされています。これを18世紀ドイツの思想家、A.G.バウムガルテンがAesthetica「感性的認識の学」として発展させ、ヨーロッパに広がりました。

    本来であれば「感性学」と呼ばれるべきものが、なぜ「美学」と規定されるようになったのか。
    大きな理由として3つ挙げることができます。
    第一に、Aestheticaの思索が深まるにつれて、単なる感性論の範疇を超え出るようになったこと。
    第二に、美や芸術がはらむ意味や価値などの重要性が、19世紀以降、あらためて認識されだしたこと。
    第三は、日本における美意識の系譜に哲学的性質があること。
    以上を踏まえて「美学」は産声を上げ、美について、藝術について、そして感性についての哲学として発展していきます。
    バウムガルテンを美学の祖と誤解している方もいますが、“美の本質について考えること”は古代ギリシア時代のプラトンまでさかのぼることができます。

    狭義の美学はこうした哲学の文脈に置かれますが、広義の美学では、例えば侍の美学やロックの美学など、美的なこだわりやスタンスを表す際にも用いられることがあります。
    当研究所では美術、文学、音楽、宗教学、民俗学、哲学、服飾、演劇、舞踊など幅広い観点から「美」をとらえ、その本質を問いただし、広く世に伝播することで人類の文化活動に貢献することを目的としています。
    美術評論・アート批評も積極的に行い、新しい言論の場の構築に寄与します。

    私自身、皆さんと交流しながら、美の造詣を深めていきたいと思っています。
    今後とも、何卒よろしくお願い致します。

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