久里浜医療センター

近年のインターネットの普及、およびそのサービスの発展はいちじるしく、わが国でもインターネット嗜癖(本治療研究部門では一般的な「ネット依存」という用語を使います)におちいる人々の増加がけねんされています。我々の2008年の調査によると、20歳以上でネット依存が疑われる者は全国で270万人にのぼることが推計されました。となりの韓国や中国では長時間連続してオンラインゲームを利用して死亡する事故も起きており、大きな社会問題になっています。アメリカでもインターネットに長時間をついやすことから離婚や解雇など深刻な問題が起きており、その治療に注目が集まっています。しかし、わが国ではネット依存の治療に専門的に取り組んでいる施設はまだありません。このため、当院では、長年の依存症治療でつちかった専門性をもとに、2011年7月よりネット依存治療研究部門(TIAR)を開設し治療を開始しました。当センターでは、ネット依存治療を行うとともに、ネット依存に関する研究と最新の治療情報収集にも取り組み、よりよい治療を提供してまいります。

2 thoughts on “久里浜医療センター

  1. shinichi Post author

    独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター

    http://www.kurihama-med.jp/

    当センターは、昭和38年に日本で初めてアルコール依存症専門病棟を設立し、現在では4ヶ病棟でアルコール依存症の治療を行っています。患者様の自主性を尊重した治療は、”久里浜方式”として全国各地に広がっています。

    また、平成元年にはWHO(世界保健機関)から日本で唯一のアルコール関連問題の施設として指定されました。

    アルコール依存症の他に、うつ病や統合失調症などの精神疾患を対象とした入院設備もあり、物忘れ外来などの神経内科や消化器内科にも力を入れています。

    療養する病棟は東京ドームの3倍という広大な敷地の中にあり、目の前には野比海岸、遠目には東京湾を隔てた房総半島の山々、院内には緑豊かな丘やホタルの生息する小川もあり、自然に恵まれた最適な環境にあります。

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  2. shinichi Post author

    インターネット依存に関するわが国の現状

    by 三原聡子、前園真毅、橋本琢磨、中山秀紀、山本哲也、樋口進

    http://www.kurihama-med.jp/tiar/pdf/20120403_no1_workshop_report1.pdf

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    オンラインゲームのしくみ

    ⇨ 数人でチームを組んで、狩りや戦いに出るなど、複数のプレイヤーが集まって特定の行動を取るといった複雑な行動が可能

    ⇨ ゲームのプログラム自体を収めた媒体を購入するための“パッケージ料金”、実際に接続する場合にアカウントごとに必要な“月額料”、ゲーム中に登場するアイテムが現実世界でのお金で購入できるシステムである“アイテム課金”がかかる

    ⇨ ゲームに“終わり”がない

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    なぜオンラインゲームにはまるのか?

    ⇨ 開始時は無料のゲームが多い

    ⇨ チームを組んでゲームをしているため、自分だけ途中で抜けてしまったり、寝てしまったりすると、メンバーに迷惑がかかる(責任感)

    ⇨ アバターで、別の人物(人格)になることができ、チームの中で、次の戦いの作戦を立てたり、チームメイトを助け勝利に導いたりすると、英雄になれたり、地位が得られる(アイデンティティ)

    ⇨ 長時間、やればやるほどレベルが上がるものが多い(達成感)

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    ネット依存者に発生してくる問題

    身体面
    眼精疲労・視力の低下・運動不足・頭痛・腱鞘炎・腰痛など

    精神面
    ひきこもり・睡眠障害・昼夜逆転など

    学業や仕事の面
    成績低下・留年・退学・勤務中の過剰なネット使用・欠勤・解雇など

    経済面
    無職・浪費・多額の借金など

    家族・対人関係
    浮気・離婚・育児怠慢・子供への影響・友人関係の悪化・友人や恋人を失うなど

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    “嗜癖”と“依存”

    ⇨ 嗜癖とは、ある行為が行き過ぎてしまい、その行動をコントロールするのが難しいまでになった状況をさす。たとえば、ギャンブル嗜癖、買い物嗜癖、セックス嗜癖などがこれに該当する。

    ⇨ 依存は嗜癖の一部で、嗜癖のなかで特に習慣の対象が何らかの物質の場合を指す。たとえば、アルコール依存、ニコチン依存、覚せい剤依存などがこれに該当する。

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    ネット依存の定義

    ⇨ 1997年にアメリカの精神科医のイヴァン・ゴールドバーグによって理論づけられた障害

    ⇨ 多くの研究者がそれぞれの立場から定義しており、混沌とした状態にある

    ⇨ ネット依存が精神疾患であるかもまだ結論は得られていない

    ⇨ 日本からも、疾患概念の確立に向けて貢献する必要がある

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    ネット嗜癖の成人人口推計値

    男性153万人、女性118万人、合計271万人

    未成年者の推計数は、これを上回る可能性が大きい

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    ネット依存の治療方針

    ⇨ 治療目標は、ネットの使用時間を減らすことにおく

    ⇨ 症状、発達背景、性格傾向、合併精神疾患、家族背景などの評価を行う

    ⇨以上の評価結果をもとに個々のケースの臨床的特徴を明らかにし、チームでケースカンファを通じて、治療方針を決定していく

    ⇨ 動機づけ面接と認知行動療法をベースとし、必要があればカウンセリングを行う

    ⇨ 家族会など通じて家族に必要な支援を行う

    ⇨ 現在、進化中

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