The economic world is just as full of surprising detail as the natural world, and markets also often arise by a kind of evolution, by trial and error, without any intelligent design. But markets can also be designed, sometimes from scratch but often after trial and error leads to a market failure. Much of what we’ve learned about market design — and from market design about markets more generally — has come from observing market failures and figuring out how to fix them. Not all markets grow like weeds; some, like hothouse orchids, need to be nurtured. And some carefully nurtured marketplaces on the Internet are now among the world’s biggest and fastest growing businesses.
by Alvin E. Roth
If you’ve ever sought a job or hired someone, applied to college or guided your child into a good kindergarten, asked someone out on a date or been asked out, you’ve participated in a kind of market. Most of the study of economics deals with commodity markets, where the price of a good connects sellers and buyers. But what about other kinds of “goods,” like a spot in the Yale freshman class or a position at Google? This is the territory of matching markets, where “sellers” and “buyers” must choose each other, and price isn’t the only factor determining who gets what.
(sk)
Alvin Roth は、2012年にノーベル賞を受賞した経済学者。ノーベル賞受賞者といっても、経済学賞だと、まったくといっていいほど尊敬する気にならないのは、なぜだろう。もっとも、平和賞の佐藤栄作、オバマ、マララなんていう名前や、文学賞のヨシフ・ブロツキー、ヘルタ・ミュラー、莫言というような名前を眺めても、尊敬などという感慨は湧いてこないから、経済学賞が特別なわけではないのかもしれない。物理学賞、化学賞、医学生理学賞もきっと、知らないからすごいと思うのであって、知ってしまえばただのペテンだと思うのかもしれない。
この「Who Gets What and Why: The New Economics of Matchmaking and Market Design」という本はとても面白い。上に参照した文章には、思わずふんふんと頷いてしまう。
おカネがあればいいというわけではなく、どんなにおカネを積んでも、無理は無理というところが、その本のポイントかと思う。
どこかに就職するとか、だれかと結婚するというようなことは、マッチング・マーケットの領域で、お互いに選ばなければ実現しないことなのだという指摘は、経済学者の言うことにしては極めてまともだ。
でも、100年前のフランスでは下層の人たちはどんなにおカネを積んでも馬車に乗れなかったし、30年前のロシアでは共産党員以外はどんなにおカネを積んでもいいレストランで食事はできなかったし、ほんの少し前の中国のことを考えてみても、マッチング・マーケットの領域はどんどん狭くなってきているのは間違いない。
もっとも、バーチャル化が進めば、雇い主が知らないうちにいろいろな人が会社に入り、当人が気付かないところで誰かがその人と結婚しているということが起こる。そう考えると、今のデュアルの世界がマルティプルになった時には、Alvin Roth の考えはまったくといっていいほど obsolete なものになっているということが、簡単に想像できる。
個人的には、おカネさえ積めばなんでもできるという世界は好き。バーチャルが進んだマルティプルの世界は嫌い。でも、誰も流れには逆らえない。
「おカネだけでは説明できないことがたくさんある」というような文章は、私たちに説明できないことばかりだと白状している感じがして、思わず微笑んでしまうし、好感が持てる。経済学は科学ではないということを思いながらこの本を楽しむのが正解なのかもしれない。