村上春樹

背筋をまっすぐのばして目を閉じると、風のにおいがした。まるで果実のようなふくらみを持った風だった。そこにはざらりとした果皮があり、果肉のぬめりがあり、種子のつぶだちがあった。果肉が空中で砕けると、種子はやわらかな散弾となって、僕の裸の腕にのめりこんだ。そしてそのあとに微かな痛みが残った。

One thought on “村上春樹

  1. shinichi Post author

    めくらやなぎと眠る女

    by 村上春樹

    「めくらやなぎと眠る女」は1983年に書いたものを短くしたものだが、。。。これは個人的に、短編小説を短くしたり、長くしたりすることに凝っていたせいである。

    Reply

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *