週刊新潮

認知症90歳を超えると7割の人が認知症になるという。そうして家族の顔すらわからずに、寝たきりのまま命をながらえる。それが100歳社会の実態だと知っても、むやみに長生きを望むだろうか。
救命救急センターは高齢者であふれ返り、生を継続するための救命救急センターが、巨費を投じて看取る場になってしまっている。
医学の勝利は、われわれが望んだはずだが、増えつづける高齢者が、医学の勝利の果実を求める。薬価は吊り上がり、保険制度は破綻する。

3 thoughts on “週刊新潮

  1. shinichi Post author
    • 「夢の薬」をみんなで使えば国が持たない――対談 里見清一VS.曽野綾子〈医学の勝利が国家を亡ぼす 第1回〉
       長寿は万人の夢だった。だから医学の日進月歩も歓迎されたが、がんを消す「夢の薬」が高価なあまり国が亡びてしまっては、元も子もない。命をつなぐべき医学が、命を追い詰める現状をレポートする短期集中連載の第1回。今、あるべき死生観を問う対談である。

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      これまでとは違う仕組みでがんを消す“夢の薬”の登場に、今、世の中が沸いている。… ところが昨年11月下旬、厚生労働省がオプジーボの肺がんへの使用を了承するのに先立って開催された、日本肺癌学会学術集会のシンポジウムは、この“夢の薬”に対し、「今日は気分がよくなる話は一切ありません。会場にお集まりいただいた皆さんは、絶望して帰っていただきたい」という苛烈な言葉で始まった。その発言の主こそが、里見清一氏である。…

    • メディアが煽る「夢の薬」の落とし穴――里見清一(臨床医)〈医学の勝利が国家を亡ぼす 第2回〉
       前回でも取り上げた末期がんの完治もありうるという「夢の薬」を、各メディアが称賛し、「乗り遅れるな」と煽っている。だが、年間3500万円かかる薬を誰もが使えば、医療全体が破綻する。里見清一氏は「文藝春秋」批判を通して、われわれに意識改革を迫る。

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      「国が亡ぶ」。いささか大げさな、いわゆる「盛った」表現に聞こえるかもしれないが、里見清一氏は繰り返しそう説き、真顔で憂慮する。原因は薬である。今、そこかしこで讃えられている、がんを消す“夢の薬”が、むしろ、われわれの生存を脅かすことになりかねないというのである。…

    • 医療の危機で問われる「患者の矜持」〈医学の勝利が国家を亡ぼす 第3回〉
       患者が気の毒な立場にあることに疑問の余地はないが、さりとて、つらい死から逃れるためになんでも「使い倒す」という意識でいれば、本人も社会も不幸になるだけだ。医療の、そして国家の危機を前にして問われるのは、患者が「矜持」を持てるかどうかである。

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      「われわれに共通しているのは、いつか死んでしまうということです。そこからどう考えるかが大事だと思います。(中略)医療をどうやって持続可能なものにしていくかを、医師だけで考えていても解決はしません。医療関係者や患者のみなさんなどで、どうしていけばいいかを考えていかないと難しいと思います」
      5月7日、銀座の時事通信ホールで行われた「肺がん市民フォーラム」で、日本医科大学教授でがん診療センター部長の久保田馨氏は、こう語った。…

    • 人類が初めて遭遇する「寝たきり100歳社会」の悪夢 前編〈医学の勝利が国家を亡ぼす 第4回〉
       99歳は白寿、100歳を超えると仙寿だそうだ。稀であればこその祝い名だが、それが当たり前になるとどうか。むろん、健康に100歳を迎えられればめでたい。だが、現実には不健康寿命が延び、命を維持するコストで国が破綻する事態になりかねないという。

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      「人生100年生きていくことが当たり前になる未来に、もはや戦後のやり方は通用しない」

      小泉進次郎代議士らは4月13日、「2020年以降の経済財政構想小委員会」でこう提言し、高齢者にかたよる社会保障を見直す必要性を訴えた。…

    • 人類が初めて遭遇する「寝たきり100歳社会」の悪夢 後編〈医学の勝利が国家を亡ぼす 第5回〉
      寝たきりか、あるいは安楽死か

       90歳を超えると7割の人が認知症になるという。そうして家族の顔すらわからずに、寝たきりのまま命をながらえる。それが100歳社会の実態だと知っても、無暗(むやみ)に長生きを望むだろうか。しかも、延命コストのシワ寄せはすべて、子や孫の世代におよぶのである。

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      「私は2人の娘に、“植物状態になったら延命治療をやめてくれ”と伝えてあります。また、“認知症になったら施設に入れてくれ”とも伝えている。特に認知症にはなりたくありません。ひどい認知症になってしまったら、もう生きていたくないと思います」
      ジャーナリストの田原総一朗氏(82)がこのように語るのは、来るべき「100歳社会」について、考え抜いた末であるという。…

    • 薬価を吊り上げる製薬会社のからくり〈医学の勝利が国家を亡ぼす 第6回〉
       1年間使うと3500万円かかる日本発の新薬ニボルマブは、実はアメリカから輸入されている。非常識な薬価には巨大製薬企業の意向が反映し、われわれの保険料や税金が海外に吸い上げられているのだ。まさに国家を危うくする製薬会社の「からくり」を暴く。

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      「医学の勝利」は、われわれが望んだはずだが、なぜそれが「国家を亡ぼす」という結果を導くのか。

      それは、だれも予想しえなかった勢いで押し寄せる高齢化の波の、さらなる呼び水になり、そうして増えつづける高齢者が「医学の勝利」の果実を、さらに求めるからだ。「果実」のひとつが、次々と登場する目玉が飛び出るほど高価な新薬の数々であり、それを投与するために公費を際限なく使えば、たしかに「国家を亡ぼ」しかねない。…

    • 迫り来る財政破綻は回避できるか〈医学の勝利が国家を亡ぼす 第7回〉
       空前の少子高齢化により、社会保障費は勢いよく膨らみ続けている。そのうえ無尽蔵であるかのごとく医療費を使っていれば、やがて破綻する。それを回避するために財務省は、厚労省は、手を打てているのか。子や孫のために、われわれにできることはないのか。

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      破綻する前に手を打てるのか

      病気やケガの際に保険証1枚で、だれもがいつでも医療機関で手当てを受けられる――。日本の「国民皆保険制度」は世界で最も充実しているといわれ、事実、2000年にはWHO(世界保健機関)から「世界一」と評価されている。おかげで、われわれは空気を吸うように医療を享受しているが、この制度が破綻の危機に瀕している。それどころかもっと大きな破綻が、そこまで迫っているという。…

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