鈴木晶子

性産業というのが、実際、職と共に、住宅であるとか、夜間や病児の保育も含めた保育にまで、しっかりとしたセーフティーネットになってしまっていて、じゃあ実際それが公的なところで、こんなに包括的なサービスが受けられるかといわれると、そうではないというのがかなり、現実なんじゃないかなというふうに思っていて、これ、社会保障の敗北といいますか、性産業のほうが、しっかりと彼女たちを支えられているという現実だと思いますね。

One thought on “鈴木晶子

  1. shinichi Post author

    あしたが見えない ~深刻化する“若年女性”の貧困~ –

    NHK クローズアップ現代+

    http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3458/1.html

    “あしたが見えない” 10代20代に広がる貧困

    さいたま市に暮らす美穂さん、19歳です。
    朝5時半に向かったのは、アルバイト先のコンビニエンスストア。
    通信制高校で学ぶ美穂さんは、学費を稼ぐために、時給の高い早朝と夜、週平均15時間働いています。
    月収は5万円程度だといいます。
    母子家庭で、4人兄弟の美穂さん。
    パートで働く母親は、持病を抱えているため、収入が不安定な生活を送ってきました。

    美穂さん
    「この後、バイトあるし夜。」

    美穂さん
    「余ったら貯金して。」

    生活費を親に頼れないため、高校生になってからは、食費は自分で負担。
    1日分を数百円に抑えています。
    さらに、アルバイト代から1万円を、家計に入れています。

    美穂さん
    「ご飯はカップラーメンだったり、あとはパンとか、そういうの買って、どうにかしています。」

    安定した職を得て、今の生活から抜け出したい。
    美穂さんは、保育士になるため、春から夜間の専門学校に通うことにしました。
    専門学校の入学金は、5万円で済むコースを選びました。
    しかし、月々の授業料は、毎月8万円かかります。
    そのうち5万円は、奨学金で支払う予定ですが、卒業後に返済しなければなりません。

    「どう暮らしたい?」

    美穂さん
    「理想はないですね、基本。
    今の生活から脱出して、朝9時くらいからお昼までとか、お昼から夕方までバイトして、夕方普通に家に帰ってという感じが、今1番理想ですかね。」

    今、10代、20代の働く女性は、全国で503万人。
    しかしこの20年、正規の職に就ける若い女性は、急速に減っています。
    高校卒業の女性の場合、正規の仕事に就ける人は、48%にとどまっています。
    青森県から職を求めて上京した、19歳の女性です。
    地元では、職種を問わず正規の仕事を求めましたが、かなわず、時給650円前後のアルバイトを掛け持ちして、しのいできました。

    青森県出身の女性
    「ファミレスに朝10時出勤の4時半までやって、5時からピザ屋さんで9時までやって、9時半にスナック行って、閉店まで2時3時まで働いて、本当に時給安くて、すごく働いた気がしても、やっと10万いったりとか。」

    25歳のこの女性は、2つの仕事を掛け持ちして、月の収入は13万円程度。
    ガス代を節約するために、煮物を作るときには、必ず余熱で別の料理を作るといいます。
    周囲の男性も非正規で働く人が多く、結婚して出産することは考えられないといいます。

    「子どもを生みたい願望は?」

    25歳の女性
    「それ1番ないです。
    自分1人でこの状態で、いっぱいいっぱいなのに、子どもいたらアウトだなって思って。
    最悪自殺まで考えちゃうんじゃないか。」

    8割が貧困状態 20代のシングルマザー

    若い女性に広がる貧困。
    さらに年々深刻な状況に陥っているのが、10代、20代のシングルマザーです。
    今、20代のシングルマザーのうち、およそ80%が、年収114万円未満の貧困状態に置かれています。

    広島市に住む、28歳のあさみさんです。
    4歳と2歳の息子を育てています。
    保育所で、時給800円で働いているあさみさん。
    フルタイムで働いて、収入は月10万円ほどです。
    母子家庭に支給される、およそ4万円の手当などを加えて、なんとか家計を維持しています。

    あさみさん
    「食費をできるだけ、かけずにかけずに、うどん1玉を3人で食べたり、汁を多めに作って、汁で腹いっぱいにさせるっていうのはあります。」

    6人兄弟で育ったあさみさんは、家庭の経済事情を気遣い、中学を出るとすぐに働き始めました。
    今、高校卒業の認定資格を取る勉強を始めている、あさみさん。
    なんとか、安定した仕事に就きたいと考えています。

    あさみさん
    「すごいね、わからん。」

    あさみさん
    「下の子はよく起きるんです。
    いつもこんな感じです。
    精神的にも金銭的にも1人なので、自分にもしものことがあったらと、ふと思いますね。
    自分が倒れたら、2人とも餓死するんじゃないかとか考えますね。」

    広がる“若年女性“の貧困

    ゲスト鈴木晶子さん (臨床心理士)

    ●美穂さん、何とか保育士という目標を達成してほしい

    そうですね、実際ですね、通信制高校や定時制高校、あと全日制高校でも、かなり学力下位の学校では、こうした自分で自分の食費を賄って、さらに家計にお金を入れるというような、アルバイトをしながら、なんとか学校を続けている子どもたちが、たくさんいます。
    実際に、この彼女もしっかりと、なんとか卒業して、高卒資格を手に入れられそうということなので、まずは1つクリア、あと次に保育士が取れるということですね。
    ただ次に出てくるのが、保育士も手堅い仕事ではあるんですが、賃金水準としてそれほど高くない仕事ですので、借りた奨学金っていうのが、かなり返済が重くのしかかってくる可能性があると思いますので、本来であれば、こうした困窮世帯の子どもたちの進学にあたって、もっと給付型の奨学金が増えていけば、もう少し楽に社会に出ていけるのかなというふうに思っています。

    ●25歳の女性の、出産は考えられないという印象的な言葉

    そうですね。
    なんとか働いているものの、実際見ていただきましたように、高卒の女性の5割も、正社員で働いてる人は、いかないわけですよね。
    実際、非正規で働いてらっしゃる方たちは、最低賃金ぎりぎりで働いてる方もたくさんいらっしゃって、日本の最低賃金低いですので、そこでフルタイムで働いたとしても、かなりぎりぎりの生活であると。
    同様に、非正規雇用の男性たちも、最低賃金ぎりぎりで働いていたり、そういう状況ですので、なかなか社会が階層化されていて、先ほど言いましたように、非正規の女性は、非正規の男性としかなかなか出会えないというような、生活空間が隔絶されてしまっているので、じゃあ、こうした同じ給与どうしで働いて、実際非正規なので、産休、育休取れない中で、子どもを産んで育児ができるかと言われると、無理だな、冷静に考えるととても無理だというふうにお感じになるのは、実際、社会の状況を反映したものなので、しかたないのかなという感じがしています。

    ●若年女性の貧困 なぜここまで来てしまったのか?

    実際は女性というのは、多くが結婚をすれば、男性が1人稼ぎ手になって養うので、なんとかなると考えられてきました。
    ところが今、若い人全体の賃金が下がっている。
    また男性でも、非正規雇用の方々が増えている。
    実際、非正規雇用の男性の、結婚をしていない率、未婚率が高くてですね、家庭を養うだけの収入を得られない、そのまま未婚のままであるという男性が増えてきているということで、加えて女性の貧困というのも、はっきりとしてきたというところがあると思います。

    ●女性たちが、収入源を自分で稼がないといけない時代に?

    そうですね。
    (だんだんなりつつあるということ?)
    なので女性たちというのは、もともと働き続ける女性というのは、正規でバリバリ働いていくタイプの人たちばかりだったと思うんですけども、実は今、もっと貧しい人ほど、働き続けなくてはならないという時代が来ているんだと思います。

    “ここにしか頼れない” 行き場のない女性たち

    風俗店の求人広告です。
    寮あり、食事あり。
    託児所完備。
    シングルマザー歓迎。
    今、貧困状態に置かれた女性のサポートをうたい文句にする、風俗店が増えています。

    一体、何が起きているのか。
    交渉の末、東京近郊のある風俗店が、取材に応じました。

    この店には、200人余りの女性が在籍しています。

    「ご指名がなければですね、90分で1万9,000円ですね。」

    客が支払った料金のうち、4割が店に入る仕組みです。
    ここ数年、生活の苦しい10代、20代の女性や、シングルマザーが、特に目立ってきているといいます。
    店では、子どもを預ける託児所と提携し、その費用を負担。
    風俗店の中には、託児所を自前で運営しているところもあるといいます。

    事務所の近くにある寮。
    自分で家を借りることができない女性たちのために、去年(2013年)、新たに設けたといいます。

    風俗店経営者
    「多い時は、満室で空き待ちの時もあります。」

    「身寄りがない人?」

    風俗店経営者
    「いても頼れないって人が多いです。
    家庭が崩壊しているってケースも多いんで。」

    この店で、半年前から働いている、21歳のはなさん(仮名)。
    1歳8か月の娘を育てる、シングルマザーです。
    はなさんがここに来たのは、出産直後から働かざるをえなかったためでした。
    一般的に、生後すぐの乳児を預かってくれる保育所は、ほとんどありません。
    はなさんには、自前で託児所を利用する余裕も、ありませんでした。

    はなさん(仮名)
    「保育園とかも、ちゃんとした仕事をしてからじゃないと入れないってなって。
    (ここは)私が頑張ったら、託児所代、全部出るなって思って。
    それで、保育園に通わせるよりいいのかもって思って。」

    仕事の前には、店が提携する託児所に娘を預けます。
    週5日、昼から夕方6時まで働いて、月の収入は30万円。
    稼いだお金の大半は、子どもの将来のために貯金しています。

    はなさん(仮名)
    「25才になったら潮時かなみたいな。
    親にもあんまり言えないじゃないですか。
    ちゃんと言える仕事がいいな。」

    困窮して、行き場を失っていた女性たち。
    給料の一部を、店に積み立ててもらっている女性も、多くいました。

    女性
    「家族のような、友達のような。
    たぶん人間が1人きりで、どんなにお金を持ってても、生きていけないと思うんで。」

    女性
    「最初、ここに入った時は、ずっと泣いてて。
    でもなんか、スタッフの人たちが相談に乗ってくれたりとかで。」

    この日も店には、小学生の子どもを育てる、30代のシングルマザーが、面接に訪れていました。
    この女性は20代のころ、生活のために、一度風俗店で働いた経験がありますが、その後は別の仕事に就いていました。
    去年、体調を崩して働けなくなり、生活保護を申請しましたが、生活状況を細かく調べるのに時間がかかると言われ、断念しました。
    女性は、再び風俗の仕事に頼るしかなかったといいます。

    シングルマザーの女性
    「市役所にいくら通っても、申請するまで2か月かかるよ、3か月かかるよって。
    待ってるわけにはいかないじゃないですか。
    だったらもう自分で働こうって決めて、気持ちだけですね。」

    私たちがこの店を取材したのは、7日間。
    この間に、新たに働き始めた若い女性は、15人に上りました。

    “風俗店しか頼れない” 困窮する女性たち

    ゲスト村石多佳子記者 (報道局)

    ●子どもを生み育てる若年女性が、風俗産業しか頼る場所がない現実

    村石記者:本当に、非常に皮肉な現実を見たと私も思いました。
    風俗店は、密室で客の男性と向き合う仕事であり、危険を伴う仕事でもあります。
    中には、違法なサービスで働かせているという店もあります。
    精神的にバランスを崩していくという女性もいて、将来的に長く続けていくには、難しい仕事です。
    しかし、それにもかかわらず、最初はちゅうちょがあったんだけれども、ほかに行く場所がなくて、結果的に、店が用意した生活環境に居心地のよさを感じたり、精神的にも依存するというような女性が、数多く見られました。
    社会のセーフティーネットからこぼれ落ちた人たちが、ここに集まっているんではないかというふうに、強く感じました。
    今回私たちは、仕事をいくつ掛け持ちしても貧困にあえいでいる女性たちに、何十人も話を聞いてきました。
    立場はまあ皆さん、それぞれなんですけれども、共通して感じたのは、やはり育った家庭の経済環境が、非常に厳しいという背景があるということでした。
    親の世代も貧困で、第2世代、第3世代の彼女たちが、そこからなかなか抜け出せないと、社会の階層化が非常に進んでいるんではないかというふうに、実感しました。

    ●シングルマザーの抱える住まいや保育の問題 行政が解決すべき問題では?

    鈴木さん:現状で言いますと、まず生活の保障がなされるものというと、生活保護しかないのが現状です。
    それすらこのVTRのように、申請を受け付けてもらえないというようなケースもあります。
    また現在、生活全般にわたって、支援が縦割りになっているわけなんですけれども、この性産業というのが、実際、職と共に、住宅であるとか、夜間や病児の保育も含めた保育にまで、しっかりとしたセーフティーネットになってしまっていて、じゃあ実際それが公的なところで、こんなに包括的なサービスが受けられるかといわれると、そうではないというのがかなり、現実なんじゃないかなというふうに思っていて、これ、社会保障の敗北といいますか、性産業のほうが、しっかりと彼女たちを支えられているという現実だと思いますね。

    ●貧困家庭の中から、新たな貧困が生まれる 連鎖をどう断ち切るか?

    鈴木さん:まずやはり、教育ですね。
    教育段階から支援の手を入れて、生活や就職、自立の支援をしていくことが大切だと思います。
    また、低所得者向けの住宅が貧困であるということも、重要なポイントで、住宅政策を充実させる、これは実際公営住宅を増やすであるとか、民間住宅を借りるときの保証や、初期費用を給付するなど、そうした保障も含めてやっていかないと、なかなか皆さん、困窮世帯ではない家と、同じ土俵に立つことができないという状況があると思います。

    ●高卒までに就職支援の在り方も、もっときめ細かく必要?

    鈴木さん:地元の企業の雇用開拓からですね、きめ細やかなマッチングまで、就労について、具体的な支援をしていけるような仕組みも必要だと思います。

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