団鬼六

とにかく小池は強い。新宿の将棋道場を拠点に勝ちまくり、奉られた二つ名が「新宿の殺し屋」。「通天閣の死闘」と呼ばれる激戦を制したり、泥酔して暴行事件を起こし、一晩とめおかれた留置場から駆け付けて大山康晴十五世名人との対局(角落ち)に圧勝したり、と、格好良すぎるくらい強いのに、いよいよプロへの道が開けようかという時にホステスに入れ込み、将棋道場の金を使い込んで逐電。重要な節目節目で必ず女に溺れて失敗する小池のジェットコースター人生から目が離せなくなる。
本書の魅力は、小池に何度煮え湯を飲まされようと彼の将棋を見たい、勝負に“乗りたい”と思ってしまう人間の不思議さを描いていることだ(著者の団もそのおかしな一人)。天才の一手に「夢」を託し、「夢」の先を見届けたいと願う人の姿が、また読む者の胸を打つ。

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