「幽玄」に関して言えば、大西は「幽玄」という概念を次の七つの特徴を持つものとして規定した。それは、
(一) 何らかの形で隠され、蔽われていること、
(二) 仄暗く、朦朧で、薄明であること、
(三) 静寂であること、
(四) 深遠であること、
(五) 充実していること、
(六) 神秘性、または超自然的であること、
(七) 非合理的、不可逆的、微妙であること、
の七つであった。大西氏の「幽玄」理解がかなり象徴的であり、かつ神秘的であることは疑いを入れないところであろう。
わび・さび・幽玄 「日本的なるもの」への道程
鈴木貞美・岩井茂樹 編
第五章 能はいつから「幽玄」になったのか?
by 岩井茂樹
二 「幽玄」への道程――能との結合における五つの要因
3 能楽研究の発展――啓蒙的役割
④ 大西克礼
。。。それと別に、美学の領域から能の「幽玄」というものを解明しようとした人物がいた。それは大西克礼という美学者であった。