菅原伸昭

新しい商品においては、ある程度までは品質向上が売上・利益に直結しますが、一定ラインを超えると伸びが少なくなります。例えばテレビの画質が良くなると、ある程度まではもっと良いものが欲しいと思いますが、それを越えると視聴者の視力の影響の方が大きくなります。他では、例えばスマホの電池の寿命は3時間が10時間になると大きなニーズを生みますが、30時間が50時間になることはあまり求められていません。しかし、品質を高める努力を長年してきた開発部署に、「品質は上げなくていい、コストを下げる設計を考えよう」と経営陣や営業が提案しても、簡単にマインドが切り変わるわけではありません
シェアに関していえば、市場が拡大していくときはシェアを取ることは非常に重要です。新たに市場参入をする潜在顧客にも認知・信頼されますし、既存顧客が市場拡大とともに成長すれば、その分自社の売上も大きく上がることになるからです。しかし市場の成長が停滞すると、シェアを取ることは価格競争を生み出します。価格の下落は利益を大幅に下げる原因です。例えば原価が70%、売上総利益が30%の場合、10%の値下げで総利益の3分の1がなくなります。しかし、シェアを伸ばすことが当たり前になっている営業組織から、「値段を下げずにシェアを下げる」という意見は出てきません
このように、組織が部分最適化すると、製品は高い品質を求めてコストが高くなり、営業は価格を下げてでもシェア拡大を目指すことになります。かなり極端な例ではありますが、これが利益を下げる構図の根本的な原因になっています。

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