東郷和彦

韓国人にとってさらに耐え難いのは、皇民化政策成功の結果、韓国の優秀な青年たちが、日本人と同じようにアメリカを相手に戦ったことだ。祖国韓国のため、同時に日本帝国のためを思って戦った。戦後の韓国人はこれによって、韓国人としてのアイデンティティーの喪失に加え、日本人としてのアイデンティティーを積極的に持った不条理に深い悔恨の思いも抱いた。韓国人の恨の感情は複雑かつ根深く、慰安婦問題はこうした歴史の流れの中にある。
安倍首相の周辺や一部の識者は「狭義の強制性」に固執する。狭義の強制連行がなければ、日本国に責任はない、という印象を国際社会に与えてきた。たしかに、国家の直接行為と女衒が女性をだましたことは同じではない。だが、国際社会はいま、「あなたの娘が慰安婦にされたら、どう思うか」と考える。社会の末端の若い女性たちが、戦場の末端で事実上拒否できずに性を強要されたのだ。慰安婦だった韓国人はいま、50人ほど生存している。彼女たちが存命中に韓国との慰安婦問題が和解することを切に願っている。

2 thoughts on “東郷和彦

  1. shinichi Post author

    安倍首相(衆議院予算委員会、2006年10月6日)
    いわゆる狭義の強制性と広義の強制性があるであろう。つまり、家に乗り込んでいって強引に連れていったのか、また、そうではなくて、これは自分としては行きたくないけれどもそういう環境の中にあった、結果としてそういうことになったことについての関連があったということがいわば広義の強制性ではないか。

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