富山和子

東北新幹線の車窓から、あるいは上空から関東平野を見おろすたび、私は思わずにはいられない。行けども行けども平らかなこの大地こそ、紛れもなく米が作ってきた大地であり、三〇〇年の間日夜たゆみなく水路の見回り、水路の手入れ、水のかけひき、田作り、土作りにいたる何十何百と知れぬ米作りの労働がつづけられ、重ねられて来たたまものであることを。そしてまた思う。ほんの少し以前まで、この平野には水路網が整然と張りめぐらされ、おびただしい数の船が江戸と農村とを、江戸と利根川とを往き来しており、関東平野は水の平野であったことを。

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