トーマス・セドラチェク

経済が好調で成長しているときは、経済学という学問の能力を疑う理由はなさそうに見える。だが子供が成長するのは医者のおかげだろうか。医者は、役に立つかどうかはともかく、いろいろと助言することはできるだろう。しかし子供が健康なときには、名医と数医者のちがいはさほどはっきりしない。病気のとき、あるいは危機のときになって初めて、よい医者、よい経済学者は見分けがつくようになる。
ときに経済学は、社会科学の女王と言われることがある(そう言うのは経済学者が多い)。経済学者は近年のグローバル経済の成長に浮かれるあまり、危機の際に経済学がどれほど役立たずだったかを完全に忘れている。危機になると、モデルは機能しなくなる。うまくいくときはうまくいくし、うまくいかないときはいかない……では、いまはどちらなのか。
危機のときは、変化が激しく、かつひんぱんに起きるため、標準的な数学モデルは使い物にならない。モデルの解釈にあたっては、十分に長期的なスパンで見ると同時に、過去の実績や直観にも頼る必要がある。アナリストが「モデルはこういう結果を示しているが、しかし私の考えでは……」と言うのをたびたび耳にしたことがあるだろう。モデルは直観で補う必要があるのだし、そのことを認めなければならない。

1 thought on “トーマス・セドラチェク

  1. shinichi Post author

    善と悪の経済学: ギルガメシュ叙事詩、アニマルスピリット、ウォール街占拠

    by トーマス・セドラチェク

    すばらしき経済学

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