古田拓也


1995年から2015年までの20年間で、経営者数がピークとなる年齢が、47歳から66歳にまで高齢化した。95年にはわずか7.3%程度だった70代の経営者が、20年には19.3%と、3倍近い水準にまで上昇している。その一方で、50代未満の経営者は、95年の67.1%から足元では48.2%まで低下しており、経営者の世代交代に難がある現状がうかがえる。

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  1. shinichi Post author

    急増するコロナ倒産、本当に怖いのは「早期リタイア企業」の増加? (1/2)

    古田拓也,ITmedia

    https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2005/01/news027.html#l_ksfu1.png&_ga=2.29473275.535307517.1588308504-1645724132.1586165381

     「新型コロナ倒産」が深刻化している。東京商工リサーチの調べによれば、「新型コロナ」関連の経営破綻は、2月は2件の確認だったが、4月には累計100件に拡大した。緊急事態宣言に基づく外出自粛のあおりをうけた宿泊業や飲食業が、深刻なダメージを受けているのが現状だ。

     5月に緊急事態宣言の延長が宣言されれば、キャッシュフローが潤沢ではない企業からドミノ倒し的に倒産件数が増えていくリスクがある。ここまでは新型コロナに直接的な因果関係があるという点で、一定程度、救済措置が及ぶ可能性が高い。

     しかし筆者は、経営の危機に直面していない企業であっても、今回の新型コロナを機に廃業を決定する「早期リタイア」企業が増加するのではないか、という点を危惧しており、この点の支援も不可欠であると考えている。

     そこで今回は、日本の中小企業が従前から抱えている「後継者不足による廃業」という問題から、この動きが新型コロナでなぜ深刻化するかを考えたうえで、いかなる支援が求められるのかを検討したい。

    廃業企業の6割が黒字、背景は経営者の高齢化

     日本の中小企業が以前から抱えている構造的な問題点といえば、「後継者不足による廃業」の増加だ。帝国データバンクや中小企業庁の調べによれば、1995年から2015年までの20年間で、経営者数がピークとなる年齢が、47歳から66歳にまで高齢化した。ピークとなる年齢層が20年間で19歳高齢化したということは、95年当時の経営者が、おおよそそのまま経営者であり続けているような構造ということになる。

     図表は1995年から2020年における経営者年齢の分布を図表にしたものだ。


     これを見ると、95年にはわずか7.3%程度だった70代の経営者が、20年には19.3%と、3倍近い水準にまで上昇している。その一方で、50代未満の経営者は、95年の67.1%から足元では48.2%まで低下しており、経営者の世代交代に難がある現状がうかがえる。

     東京商工リサーチが今年1月に発表した、「2019年 休廃業・解散企業 動向調査」によれば、休廃業企業の代表者のうち、約4割が70代以上であった。これを踏まえると70代以上の経営者が舵(かじ)取りを行う2割超の中小企業が、後継者不足に伴う廃業の予備群ということになる。

     経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションレポート(平成30年9月7日)」(以下、DXレポート)で報告されたところによれば、19年に休廃業・解散した企業の61.4%は、直前期の当期純利益が黒字であった。

     つまり、高齢化による経営者の負担増加や、後継者不足による技術・ノウハウの伝承が行われないことで、業績に関係なく廃業を余儀なくされるという点が問題なのだ。

    新型コロナで「経営者の2025年問題」が早期到来?

     新型コロナで景気後退が本格化してしまえば、大多数の企業における業績の低下見通しは避けられないだろう。ここで、仮に私たちが後継者のいない、70代の経営者であった場合を考えてみたい。この場合、向こう数年に渡って内部留保などを切り崩しつつ、景気回復の機会を待つよりも、今のうちに廃業して経営の成果を清算しておく「早期リタイア」を検討することも、合理的な経営判断といえるのではないだろうか。

     平時、業績に関係なく高齢化に伴う廃業がなされていると考えれば、ここに新型コロナによる経済後退懸念が加わることで、中小企業の廃業スピードが一層加速してしまう可能性がある。

     経営者の高齢化と、それに伴う廃業という問題は、いわゆる「2025年問題」や「2025年の崖」というテーマで検討されている論点の一つであった。25年には「団塊の世代」全員が75歳以上の後期高齢者となり、日本の超高齢社会がピークを迎える。

     主に社会保障費や医療費の負担増加、働き手不足について語られることも多いが、後継者不足の企業が廃業する影響も決して小さくない。上記で取り上げた「DXレポート」では、後継者不足の企業が廃業することで、25年までに、累計で650万人の雇用機会と、22兆円のGDPが失われるという試算が公表されている。これを20年間、30年間といった、さらなる長期スパンでみた場合の経済的な影響は計りしれないだろう。

     ある程度、対象の年齢が決まっている社会保障費等と比較して、経営者の判断次第でいかようにもなる中小企業の廃業は、「2025年」特有の事象ではない。このように考えると、ここまで検討した後継者不足による廃業の動きは、2025年を待たずに顕在化してくる可能性も否定できないといえる。

    事業承継・M&Aのサポートが必要?

     新型コロナで直接的に影響を被っている企業の救済が、第一優先であることに異論はない。しかし表面化しづらいものではあるが、日本の経済を支える中小企業群が、「早期リタイア」するインパクトを、先手で抑える施策も必要だろう。政府は、これまで以上に早いスピードで事業承継を促すサポート政策を実施するほか、スポットでの政策が求められてくる。

     例えば、事業承継のために会社を売り渡すことに心理的抵抗感がある経営者に対して、経営資源の死蔵を防ぐという趣旨を明確にした、補助金を支給することも有効であろう。また、政府機関の事業承継ファンドに対する出資を拡大し、官民連携での事業承継円滑化の動きを一段と積極化させるのもいかがだろうか。

     後継者の保証減免の拡充も、有効であると考えられる。後継者不足の大きな心理的・経済的障壁の一つが、「経営者保証」である。中小機構によれば、後継者未定の経営者127万人のうち、13.6%は後継者の候補が存在する。しかし、後継者候補は、個人に債務の保証が及ぶことを嫌った結果、事業承継が拒否されているのだ。政府系金融機関を中心に、キャッシュフローや業績推移の基準を満たした企業について経営者保証の減免を行い、「早期リタイア企業」の急増を抑えていくべきであると考える。

     経営者保証の減免はリスクとなり得るが、業績としては順調な企業があえなく廃業してしまうことによる中長期的影響と比較考量すれば、後者が勝る事例も決して少なくないだろう。

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