人は言葉で自分を表現する
でも木が言葉で自分を表現するなんていうことは
ありえない
声を発したり食べて味わったり動いたり
動物がすることを
植物はしない
人は外見で自分を表現する
木が外見で自分を表現するなんていうことは
ありそうもないけれどでもあるかもしれない
木は服を着たり眼鏡をかけたりしないけれど
自分をすっと見せたり高くみせたりできる
輝く緑や深い緑を見せることもできるのだ
人は匂いで自分を表現する
木が匂いで自分を表現することも
きっとある
匂いだけでない
木は葉で枝で樹皮で自分を表現して
他の木になにかを伝える
木は静かで
枝の軋みにも葉のざわめきにも主張がない
でも
木がなにかを伝えようとするときに
ほのかな香りがする
そう思うのは
気のせいなんだろうか
(sk)
第50作
Faint Scent
Peter Wohlleben
https://kushima38.kagoyacloud.com/?p=54644
にインスパイアされて。
世の人々は「匂う兵部卿(匂宮)、薫る中将(薫の君)」と噂をしていた。
源氏の君と女三の宮の子(実は柏木との不倫の子)である薫の君は、
その身体から発する「芳香」に恵まれていた。
今上帝と明石中宮の皇子兵部卿(匂宮)は、
薫の君の身体から出るほのかな香りをうらやんでいた。
そこで、ありとあらゆる香りのする木々や草花を集め、
自分の身体や衣に染みつけようとする。