蜃気楼

蜃気楼は
見に行って見られるものでない

 何月頃に
 どこで
 どんなものが見えるのか

なんていう情報がインターネット上にたくさんあるけれど
行ったからといって 見られるとは限らない

虹も
オーロラも
見に行って 見られるとは 限らない

蝶を探して山の奥深く踏み入っても
虫を探して森の奥深く分け入っても
痕跡すら見つからないことが多いという

景色だって
天気ひとつで大きく変わる
見たいものが見られるとは限らない

ある日
どこまでも伸びる道をドライブしていたら
森が見えてきて

あの森は本当の森なのか
それとも蜃気楼の森なのかと考えていたら
あっというまに森が湖に変わった

森は蜃気楼だったのだろうか
湖は蜃気楼なのだろうか
そんなことを考えていたら
湖は砂漠に変わった

砂漠が蜃気楼なわけはないと考えていたら
水をたっぷり湛えた湖に着いた

なにが実際に見えたのか
なにが蜃気楼だったのか
わからなくなった僕は
自分のいるところが
実際にあるのかどうかさえわからなくなって
あたりを見回した

君がこっちを向いている
あっ やっぱりここは夢の中だ
そう思った瞬間に 君は消えた

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