歴史

イザナギは黄泉国にまで行き
大国主は根の国という異界に行き
山幸は海神宮に行き
浦島太郎は海中の龍宮に行き
舌切り雀のお爺さんは雀たちのお宿まで行った

神話や物語のなかでは
時間にも場所にも限りがない
登場人物は何年でも生きることができ
どこにでも行くことができる
主人公は人であって 人でない

伝承を歴史と言いかえて
作りごとを事実にすり替えて
国の歴史が出来上がり
みんながそれを信じ込む

歴史を作りごとと思えればいいのだけれど
記録があって遺跡があったりするから
歴史はまるで本当のことのような顔をする

記録と称するものが後から書かれ
遺跡と称するものが後から作られ
それが真実の歴史になる

事実は真実とは違う
記録は事実を伝えるものではない
遺跡も事実を伝えない

伝承が伝わっていた頃は
伝承を信じる者たちは
それが伝承だと知って信じていた

それが今では
伝承は歴史と名前を変えて
まるで事実のように伝えられる
恐ろしい時代が来たものだ

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