普通の日

素敵な一日があれば
それでいい
その日のことをずっと思うことができたら
もうそれで十分

完璧な一日? パーフェクト・デイ?
いや違う
完璧な一日である必要はない
特別なものではない
平凡な
普通の日
たとえば並んで歩くとか
一緒に海を眺めるとか
そんなことができたら
それでいい

公園でサングリアを飲むとか
暗くなったら家に帰ってとか
そんなのもいいけれど
その日に何をするかは
あまり問題じゃない

どこに行くか
何を見るかなんて
どうでもいい
素敵な一日って感じられればいい
心で感じれば
それでいい

今日をその素敵な一日にすればいい
向日葵が咲いていて
陽の光が暖かく感じられて
それだけでいい

向日葵は綺麗だ
戸惑いも躊躇もなく一斉に太陽のほうを向く
まるで神を見上げる人の群れのように
ただひたすら太陽を見る

なにかを見るときも同じ
ただひたすら見る
目をそらさずに
じっと見つめる
まるで向日葵みたいに

目の中を見つめられても
視線を合わせられずに
遠くを見るしかなくなる
空を見るしかなくなる

空も眩しい
きれいで
ずっとは見ていられない

近くを見る
ほら
草が
波を打ってる
まるで海の波みたいだ
風に揺れて
ほら
波の音がする

あっ
目が合った
目をそらさないで
笑って

ふっ
ちゃんと笑う
いい顔で笑う

草の波でなくて
本当の波を見よう
海の波を

海は近い
その路地を抜けていけば
すぐだ
ほら
海の感じがする

海が見えてきた
海だ
わあ
海だ

ずいぶん歩いたから
方向感覚も失くしてしまったけれど
そうか
海に向かってたのか

あっ と言って
影を見る
こっちが南
方向感覚は失くしようがない

海岸線だ
どこまでも続いてる
すごい すごい
気持ちいい

海は何度も見たけれど
なんだか新鮮な感じだ
すべてが違って見える
白い雲のかたちも
空の青さも
前に見たのとは違う
ぜんぶ違う
僕も違う

隣にきみがいて
海が広がっていて
ここに僕がいて

なにもかもが変わり続けている世界では
なにもかもが時と共に変わる
同じものなどなにもなく
同じことなど二度と起きない

誰もが生まれてから死ぬまでずっと変わり続け
なにもが永遠に新しい
太陽が暖かい。
そう
太陽は誰にも優しい
空は青い

君といて
僕には素敵な一日
十分な一日

そんな日がたくさんあって
たくさんが あたりまえになって
何年も 何十年ものあいだ
あたりまえがたくさんあったら いい
陽のひかりを感じられたら
暖かさを感じ合えたら いい
普通の一日が集まって
素敵な年月になる

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