肉食

私たちは肉を食べることに
どこかうしろめたさを感じ
肉食の喜びを素直に表現することを
ためらってきた

肉食が不道徳と思う聖職者たちは
菜食を掲げ
殺生を悪として戒めた僧侶たちは
肉食を禁じた

天武天皇の「肉食禁止令の詔」に
 牛は田畑を耕すから
 馬は人を乗せて働くから
 犬は番犬となるから
 鶏は時を知らせるから
 猿は人間に似ているから
 農耕期には食べてはいけない
と書いてある

今 世界を見渡すと
肉の大量消費に抗議するという
政治的な菜食主義者がいる
穀物や野菜や果物のほうがいいという
積極的ベジタリアンもいる

肉を食べるという行為が
殺人や苦しみや利己主義につながる気がして
というか もっと単純に
肉を食べるのは
道徳的に間違っていると感じて
それで
悪としたのか

肉食は悪 菜食は善
肉食の擁護者は醜い
菜食の擁護者は美しい
そんな考えが正しいのか

食べるために生き物を殺すのは
仕方がないのだといって
死ぬ苦しみが小さいように殺すとか
死にゆくものに感謝の祈りを捧げるとか
そんな気休めで ごまかしてゆくのか

工業畜産という現実から
目をそらせていて いいのか
肉食はやっぱり
悪ではないのか

そう言いながらも
君が肉をおいしそうに食べるのを見て
僕も肉が好きだと言った
小さな声で言った

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