紀貫之

やまとうたは 人のこころをたねとして よろづのことのはとぞなれりける よの中にあるひとことわざしげきものなれば 心におもふ事を みるものきくものにつけていひいだせるなり はなになくうぐひす みづにすむかはづのこゑをきけば いきとしいけるものいづれかうたをよまざりける ちからをもいれずしてあめつちをうごかし めに見えぬおにかみをもあはれとおもはせ をとこをむなのなかをもやはらげ たけきもののふのこころをもなぐさむるはうたなり このうた あめつちのひらけはじまりけるよりいできにけり しかあれども よにつたはれることは ひさかたのあめにしては したてるひめにはじまり あらがねのつちにしては すさのをのみことよりぞおこりける ちはやぶるかみよには うたのもじもさだまらず すなほにして ことのこころわきがたかりけらし 人のよとなりて すさのをのみことよりぞ みそもじあまりひともじはよみける かくてぞはなをめで とりをうらやみ かすみをあはれび つゆをかなしぶこころことばおほく さまざまになりにける とほきところもいでたつあしもとよりはじまりて年月をわたり たかき山もふもとのちりひぢよりなりて あまぐもたなびくまでおひのぼれるごとくに このうたもかくのごとくなるべし 

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